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亀裂  作者: きじの美猫


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11/11

最終話 亀裂

人民は首相府の門を越えた。

門を壊した者はいない。

内側から警備員が開けたからだ。


玄関ホールには、キーツの巨大な肖像画が掛かっていた。

誰かが引き倒そうとした。

老人が止めた。

「壊すな。証拠だ」

人々は静かに肖像画の脇を通り過ぎた。


階段を上がる。

一段ずつ。

首相府の中には、まだ職員が残っていた。

文書を守っていた者。

負傷者を手当てしていた者。

最後までキーツに従う者もいた。

だが銃撃は起きなかった。


ゴエイカンは警護隊を退かせていた。

「職務は果たしましたので、これで。」

そう言って、彼は正面玄関から外へ出た。

誰も追わなかった。


最上階で、キーツは机を蹴り倒した。

右脚の警告音が鳴り続けていた。

「あたしは首相や」

返事をする者はいない。

「あたしが国や」


壁の画面には、幹線道路を埋め尽くす人民が映っていた。

映像は最初の夜から、途切れずずっと続いていた。

市民たちは首相府へ入りながら、放火も略奪もしなかった。

文書保管室には見張りが置かれ、医務室へ負傷者が運ばれた。

食料を配る者がいた。

混乱の中で、人々は国家の機能を自分たちの手へとり戻そうとしていた。


キーツには、それが理解できなかった。

支配する者がいなければ、誰も動かないはずだった。

命令されなければ、人は奪い合うはずだった。

自分がそうだったからだ。

「コクド!」

青年は扉のそばに立っていた。

「おかあさんはどこや」

答えはない。

「連れてこい」

コクドは動かない。


廊下の向こうから足音が近づいていた。

キーツは机の引き出しから拳銃を取り出した。

「全員撃ったる」

腕を上げようとしたとき、右脚が崩れた。

床に膝をつく。

人工皮膚の下で、硬いものが割れる音がした。

「イシを呼べ」

誰も動かなかった。

「命令や!」


扉が開いた。

入ってきたのはキョウソだった。

護衛は一人もいなかった。

衣服には埃が付き、片手には小さな鞄を持っていた。

国外へ逃げるための荷物だった。


キーツの顔に安堵が浮かんだ。

「おかあさん」

キョウソは倒れた机と、床に膝をつくキーツを見た。

「遅かったやないか。早う、あいつらを止めて。組織を動かして、軍を」

キョウソは通信機を取り出した。

何度か操作した。

どこにもつながらないようだ。


「おかあさん?」

「黙れ」

「まだ終わってへん。オウに頼めばええ。金もある。シジを立てて、あたしは裏から」

「もう組織は動かない」

「なんで」

「口座が凍結された。国外の拠点も押さえられた」

「ほな、逃げるんや。あたしも行く」

キョウソはキーツの脚を見た。

警告音が止まった。

代わりに、接続部から細い煙が上がっている。


「立てるのか」

「立てる」

キーツは床へ手をついた。

「こんなん、すぐ直る。イシにやらせる」

身体を持ち上げようとした。

右脚は動かなかった。

「コクド、手ぇ貸せ」

青年は動かない。

「聞こえへんのか!」

キーツは這うようにキョウソへ近づいた。


「おかあさん、あたしはまだ使える。

国民かて、すぐ黙らせたる。あたしがいなかったら、誰がこの国をまとめるんや」

廊下の足音が近づく。

キョウソは鞄を持ち直した。

キーツはその裾をつかんだ。

「置いていかんといて」

子どもの頃にも、同じ言葉を言ったことがあった。

熱を出し、暗い部屋で一人にされた夜。

キョウソは振り返らなかった。

あのときは翌朝戻ってきた。

役に立つ子どもが死んでいないか確認するために。

キーツは、それを迎えに来てくれたのだと思うことにしていた。


「おかあさん」

キョウソの声

「これはもう役に立たない」

足に亀裂が入った。

意識が遠のく。

視界にコクドが走り込む。

キョウソが刺される。

おかしい。

何が起きている。

いやだ。

このままでは終われない。

かえせ。

あたしの時間を。

おかあさんにとってかわるはずだった。

こんなのは違う。

チガウ。

チ、ガウ……



遠くで警告音に似た音が鳴っている。

だんだん遠くなる。

数は増えていくのに、音は小さくなっていく。


そして闇が訪れた。


AIを執筆補助として利用し、構成・テーマ・最終調整は作者が行っています。

登場人物と代表的なセリフは作者から提示し、場面の描写や会話のツナギはAIに任せました。

AIが基本的な情報をどこまで整合性をもって書けるかのテストです。


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