入学編「新入生歓迎大会4」
二回戦も難なく突破し、三回戦へ駒を進めた二人。
三回戦は各クラスへ中継され、いろんな人が見る。
ある意味で、一回戦よりも簡単には負けられない戦いだった。
いつもの調子でやれば、勝てるだろうと二人も思っていた。
闘技場の戸を開けて対戦相手を待つ。
「いつも通り頼むぜ、相棒」
練がそう声をかけるも、美柑は「ふん」と知らんぷりだ。
そう言っていると、対戦相手が入ってきた。
が、二人の様子に練は違和感を覚えた。
(なんだ、二人に妙な迫力があるな……)
二人を取り巻く空気が少し違う気がした。
「噓でしょ……。二人とも気をつけて。二人ともリンク状態になってるよ」
佐城先輩がらしくなく、マジレストーンで警告してくる。
「リンク状態? 」
美柑がそう聞き返した。
「魔法師同士で強い絆と接触があると、能力を爆発的に強化できるんだよ。
けど、相性の問題があるから、仮組みの新入生がこれができるとは……」
「強い繋がりと接触?」
練は聞き返してしまう。
「端的に言ってしまえばキスだよキス」
「「な!? 」」
「二人とも気をつけなよ。相手は下手したら私たちでさえ手を焼くほど強いかもしれないよ」
二人で顔を見合わせる。
これはマズイと。
その様子を見てか、相手の二人はニヤリと笑っていた。
そして、ブザー音が鳴った。
相手の装備は二人とも片手剣。
つまりダブル前衛。
(先手必勝!)
ブザー音が鳴りやむと同時に、基本魔法をありったけ生成しそれを相手に向けて射出した。
が、それらはいともたやすく躱されてしまう。
横にいた美柑も素早く動き散開した二人のうちの一人へ突撃していった。
が、一度切り結んだだけで、美柑が撃ち返されてこちらへ飛んできた。
「マジかよ……!!」
思わず受け止める姿勢をとるが、風魔法を使って空中で姿勢を反転させ着地する美柑。
着地するとすぐにさっきの相手へ向かって再び突撃していった。
その瞬間インカムから声が聞こえた。
「少年、前! 」
意識をそちらへ向けると、今まさに刃を振り下ろさんと剣を振りかぶってこちらへ叩きつけようとしているところだった。
反射的に持っていた大杖を盾にしようと両手で握り前へ突き出した。
直後、衝撃音と鈍い感触が手を伝わってきた。
大杖は離さなかったものの大きく姿勢を崩され仰け反るような形になる。
対して、相手は二の太刀を入れようと次の姿勢へ向かっていた。
(やばい! )
そう判断し、魔法を展開する。
が、相手の方が早く次の姿勢に入った。
刃が袈裟一文字に切り裂こうと近づいてくる。
だが、練は避けようとはしなかった。
むしろ、仰け反った勢いそのまま後ろに倒れようとしている。
そうして、刃が練に届いた。 練は後方へ大きく吹き飛ばされた。
「くそ! あいつやられてるんじゃないよ! 」
思わず毒を吐く美柑。
だが、練の腕輪は緑に光ったままであった。
***
(あぶねぇ……)
練は確かに斬られた。
が、斬られる直前に自分を後方へ吹き飛ばす風魔法を展開しきっており、なんとか後方へ逃れたのであった。
接触判定はもらいこそしたが、致命傷とまでは行かず、かろうじて首の皮一枚つながった状態だ。
「ったく、力も速度も半端じゃないな」
片膝をつきしゃがみこんで様子を伺う。
その様子を見て、余裕そうに剣を構える相手。
その横では、美柑も苦戦を強いられていた。
風魔法で高速で移動しながら切り結んでいるものの防戦一方といった形だ。
(一旦盤面をリセットして、一呼吸置かないと鳴海が持たないな)
そう思っていると、ひときわ甲高い音が鳴った。
音が鳴ると同時に、美柑がこちらへ吹き飛んできた。
だが、さっきとは違い錐揉み回転をしながらこちらへ飛んできた。
魔法で着地を補助しようとするが間に合わず、激しく地面にたたきつけられる美柑。
慌てて駆け寄る。
見ると、右手首を押さえながら苦悶の表情を浮かべていた。
剣もその辺に転がっていて、明らかに持てる状態ではなかった。
その様子を見て、こちらに突進してくる相手二人。
とっさに魔法を展開する。辺りに煙が立ちこめた。
突進してきた二人を寸でのところで躱し、美柑をお姫様抱っこで抱きかかえ煙の中を走った。
やがて、壁に突き当たり、そこで美柑を下す。
美柑は相変わらずしゃがみこんで右手を押さえ、苦しそうにしている。
ここで練にある考えが浮かんだ。
(いまならやれる。だが……いいのか……)
思わず躊躇ってしまう。
だが、躊躇っている間にも煙は薄まってきている。
(やるしかない、か)
「鳴海、すまない」
「何言ってるの……試合はまだ……」
「そう言うことじゃない」
そう言うと、美柑の横で片膝をついてしゃがみこんだ。
そして、こちらを見ている美柑のあごを取り唇を奪った。
「ん……っんん!?」
目の前では、目を白黒させている美柑が映っていたが、煙はどんどん晴れてくる。
初めてのキスはとても柔らかく、唇を通して何か熱いものが伝わってくるようにも感じた。
何秒、唇をくっつけていたかわからないが自然と離れた。
辺りを見ると、煙はすっかり晴れていた。
そして、顔を真っ赤にした対戦相手二人がそこにはいた。
(あー、とっさとはいえ、やっちゃったな……)
そう思いながらも、立ち上がり、美柑へ話しかける。
「腕の調子はどうだ」
「う、腕っ……あれ。痛くない」
手を何度かグーパーグーパ―させて立ち上がる美柑。
「行けるな。剣を拾う隙は俺が作る。拾ってからもう一回勝負だ」
「わ、わかった」
美柑は素直にそう言う。
そう言うと、魔法を展開する。
その様子を見て、我に返ったのか、二人ともこちらへ向かって突撃してきた。
だが、今度打ち出したのは石つぶてを生成しそれを射出する魔法だった。
威力は低いが当たると十分痛い上、サイズが小ぶりな分射出速度も速い。二人の動きをけん制しながら二人で壁伝いに走る。
だが、目的を察したのか、一人が石つぶてに臆せず美柑の剣の前に移動しようとする。
そのタイミングで今度はより大きい石つぶて射出し、動きをけん制した。
「今だ! 」
合図とともに、駆ける美柑。
それを阻止しようと、相手の一人も強引に石つぶての雨に突っ込み、剣を取ろうとする美柑へ剣を振り下ろす。
が、先に手が届いたのは美柑で、寸でのところで拾った剣で一撃を防ぐ。
美柑が一撃を防いだのと同時に、練ももう一人の相手から一撃をもらおうとしていた。
だが、それも寸でのところで大杖で防ぎ切った。
今度は、吹き飛ばされない。
「少年! ぶちかませ! 」
そうインカムから声が聞こえると同時に、魔法を展開する。
展開しきる前に一撃を叩きこもうと、渾身の一撃を上段から振るってくる相手。
だが、今度の魔法は射出するものでも、移動させるものでもないのですぐに展開しきる。
展開しきるのに合わせて、大杖を振るう練。
その大杖の先には、土を固めたハンマー上の突起が付いていた。
相手の一撃に対して、ハンマーを思いっ切り打ち付けた。
激しい衝撃音と共に、相手の剣ははるか後方へ吹き飛ばされていた。
そして、そのままの勢いで相手の胴にハンマーで一撃を入れた。
相手は反対側の壁まで吹き飛び、地面に倒れた。
腕輪は赤く光っている。
それを確認し、美柑の方を確認する。
すると、不思議なことに、さっきまで押されていた美柑が今度は逆に相手を押していた。
一撃一撃で、相手の剣が弾き飛ばされており、先ほどとは打って変わって優勢である。
「このっ、破廉恥なことをしたかと思えば! 」
相手がそう叫ぶも
「されたんだからしょうがないでしょ! 」
と、言い返し、剣を大きく吹き飛ばした。
相手の剣は、後方へカランカランと転がり、相手の喉元に剣先を突き付けていた。
「そこまで!」
審判の先生がそう宣言し、試合は終了した。




