入学編「新入生歓迎大会3」
こうして一カ月の間、授業と佐城先輩からの特訓を受ける日々が続いた。
授業では、基礎訓練として魔法、武術、射撃訓練を。
佐城先輩には、より実戦的な戦い方についての指導を受けた。
佐城先輩は、先輩たちの中でも実戦経験を積んでいて、特別にこれまた優秀な二年生とペアを組んでいるそうだ。
以前襲撃事件の際に派遣された時も、そうだったらしい。
こうしてひと月が過ぎ、新入生歓迎大会の期間を迎える。
***
「君たちは三日目の第二試合、相手は真中さんとこが教えてる子たちだねー」
大会期間の前日、先輩に教練についてもらうのは最後の日だ。
「わかってると思うけど、相手が女の子だからって手加減すると大怪我するからね、気を付けてね少年」
「それはもう嫌って程教えてもらったんで大丈夫です」
練は美柑の方を見ながらそう答えた。
「何よ、私が何かしたって? 」
売られた喧嘩を買うような態度をとる。
「そりゃ、この一カ月さんざんタコ殴りにしてくれたじゃないか! 」
「しょうがないでしょ! 本気でやらないと何だから! 」
そして、二人で睨みあう。
「はいはい、ケンカしない。二人ともしっかりと頼むよ」
そう諭す佐城先輩。
二人の関係性を見ながらも、的確にアドバイスを送り二人をペアとして成り立つ程度には育て上げていた。
「当日は先輩は試合を見てくださるんですか? 」
美柑は佐城先輩にそう聞く。
「あれ、言ってなかったっけ。私たち教育係はセコンドで入るからどのみち見ることにはなるよ」
「そうなんですね! 無様な醜態は晒せないですね……」
「私の成績にも響くから瞬殺だけはやめてねー」
佐城先輩は笑いながらもそう言った。
「先輩。相手の情報について、何か知らないですか? 」
「あーそれはねー、知らされないようになってるんだよ。
特に新入生同士の戦いとなると、情報戦で有利不利が出ちゃうから」
「当日になってからのお楽しみってわけですね」
「そうだねー。まあなんにせよ、当日は頼むよ」
***
新入生歓迎大会の期間が始まった。
大会は三回戦打ち切りのトーナメント方式、最終戦は各試合が各クラスへ中継される。
試合は、屋内闘技場で行われ、各魔法師には腕輪が支給される。
リングにいる間はその腕輪がダメージの軽減を行ってくれて、致命的な一撃を受けても死なないように防護してくれている。
ただし、一定量のダメージを受けると自動で戦闘不能判定をされるので、ゾンビアタックはできないようになっている。
「大した装備品だよ、これ」
腕輪を見ながらそうつぶやく練。
まもなく一回戦が始まろうとしているところだった。
美柑は片手剣、練は大杖を装備品として選んでいる。
「二人とも、通信テストだよ。感度はどうかな」
骨伝導インカムを通して佐城先輩の声が聞こえる。
「はい、問題ありません! 」
美柑も気合十分、と言った様子で答える。
「こちらも、問題ないです」
「それじゃあ、よろしく頼むよー」
先輩は完全にリラックスした様子で、通信を返してくる。
「相手、どれくらい強いと思う?」
練は美柑にそう聞いた。
「授業でも対人戦はやってるでしょ? 問題ないわよ。あんたこそ、足引っ張らないでよね」
「はいよ。よろくし、相棒」
「あんたによろしくされたくないわよ。ったく」
そう言いながら、闘技場の戸を開けた。
中は体育館のような施設だが、半円形のドーム状に魔法壁が設置されていて、流れ弾で建物に傷がいかないようになっている。
見ると、向こうもドームに入ってきた。
ドーム外では、審判の教官が一名。待機していた。
「それでは、第二試合を始めます」
その一声と共に、ブザー音が鳴り響いた。
ブザー音が鳴りやむと、相手二人は同時に魔法を発射してきた。
それに対抗して、練も防御魔法陣を展開し攻撃を防ぐ。
「ダブルで魔法使いか……、やっちゃいな! 少年! 」
そう言われ、防御魔法陣の上に巨大な氷柱を生成する練。
それを射出する。
対戦相手の二人は、左右に分かれてそれを回避しつつ、挟み込むように攻撃しようと移動する。
だが、それより早く美柑が動いた。
練に気がそれた一瞬を魔法で駆けて、魔法使いの一人に肉薄する。
「やあぁ!!」
そして、気合の一声と共に横一文字に剣を振るう美柑。
対する子も持っている大杖でそれを防ごうとしたが、美柑の一撃で杖を吹き飛ばされてしまう。
そして、喉元に剣を付けつける美柑。
すかさず、ブザーが鳴り剣を突き付けられた子の腕輪が赤く光る。
これは戦闘不能のサインだ。
対する、練は基本魔法を連射し飽和攻撃で一方的に押していた。
しばらく、耐えていた相手も最終的に防御魔法陣を破壊され一撃をくらい勝負は決まった。
「そこまで!」
審判の声が響いた。
練達の勝利だった。
***
「二人とも、お疲れ様ー。よくやったね」
先輩が待機室で出迎えてくれた。
「先輩のご指導のたまものです! 」
美柑は笑顔で佐城先輩へ話す。
「決めていた作戦が決まりましたね」
練も先輩に声をかける。
「あれは、少年の防御魔法陣が固いからこそできるカウンターパンチだったからね。
私の作戦が、というより君の手柄だよ。
鳴海さんもいいタイミングで、仕掛けたね」
と、二人をねぎらった。
「今日はこれで終わりだけど、三回戦まで気を抜かず行こうね」
佐城先輩の言葉に二人そろって「「はい! 」」と返事をした。




