入学編「新入生歓迎大会2」
ペアの子が直々にあいさつに来た。
昼休みの時間があるときに、向かおうと思っていたが先を越された形となった。
「そうか、君がペアになるのか。よろしく」
そう言い握手を求めた。
しかし、美柑は握手し返さず踵を返しながらこう言った。
「私はあなたを認めない。男が魔法を使えるなんて。どんな手品を使ったか知らないけど、すぐに嫌になるわよ」
そう言い残し、教室を後にした。
(え、そういうキャラなのか……? 感じ悪っ!? )
錬は思わずそう思い立ち尽くしていた。
すると、クラスメイトから「今の子がペアの子?」「いいなー! 」などと言った声が聞こえてきた。
(いいも何も、あの感じの悪さ、何だあれ)
そう思わずにはい居られない錬だった。
***
「え、美柑さんとペアになったの!? 」
昼休み、教室を抜け出して屋上に来ていた錬だったが、クラス番号を見て同じクラスにいるたえを呼び出して様子を聞くことにした。
「その、美柑って女子、クラスではどんな人なの? 」
「えー、気になるの? 」
わざとらしく聞いてくるたえ。
「気になるって言うか、ちょっとあってな」
「え、錬君なにしたの?」
眉を寄せて聞いてくるたえ。
「何もしてない。何もしてないのに私はあなたを認めないって宣言された……」
ふむ、と考え込むたえ。
そしてすぐに思い当たったのかこう返してきた。
「多分美柑ちゃんは女性優位思想側……なのかな? 」
錬は聞いたことのない言葉だったので、思わず聞き返してしまう。
「なんだそれ」
「練君ってば……」
呆れるようにそう答えるたえ。
「女性優位思想って言うのは、ハッキリ言ってしまえば、魔法が使えて子供も産める女性こそが優生だって考え方だよ。
私は、それはないって思うけどね」
その言葉に錬は思わず黙り込んでしまう。
そんな言葉聞いたことがない。と。
しかし、錬が思う常識は魔人の出現と共に変わってしまった。
人類史も調べた限り微妙にではあるが変化していた。
なら、そういう思想もあるのかと納得せざるを得なかった。
「けど、美柑さんがそう考えるのはなんでだろう……。
学級委員長を名乗り出たり少なくとも頭もよさそうな子なんだけどなぁ……」
と、たえは不思議そうにしていた。
「まあ、なんにせよ。思想がなんであれ、しばらくはよろしくやらないとだけど……なんだかなぁ」
自分を見下してくる相手と、ペアを組む難しさを錬は感じていた。
***
「それじゃあ、皆さん。ペア同士で各自訓練を開始してください」
その日の午後、講堂に集められた生徒たち。
最初のペアトレーニングが始まった。
ペアトレーニングはペア二人で作戦行動を前提とした訓練が行われる。
が、最初の間は、各ペアに三年生が一人指導役として就いてくれてる。
学内連絡網を通じて待ち合わせ場所は指定されており、ペアの美柑と合流した錬は、指導役の待つ屋上へと向かった。
屋上へ向かう間は、ずっと無言で会話もなかった。
というより、向こうから会話しませんよオーラがにじみ出ており会話できなかった。
(これで、初戦はやれるのだろうか……)
不安を胸に屋上の扉を開けた。
屋上には数人の上級生がいた。
一つの待ち合わせ場所に複数のペアが割り振られており名前を呼んで連れて行く。
というのが慣習らしい。
その名前を呼ぼうとしたが、向こうから小走りでこっちに来る人がいた。
(やっぱ見た目でわかるからこういうのは楽だな……)
そう思っていたが、その人がけには見覚えがあった。
「やあ少年。また会ったね」
え、何?という空気を出している美柑をよそに錬は挨拶をした。
「お久しぶりです。佐城先輩。お世話になります」
「偶然か意図的かは分からないけど、君たちの指導役だ。よろしくね」
そう、錬と美柑に言うと、
「初めまして、鳴海美柑です。御指南、どうかよろしくお願いします! 」
と、深々と頭を下げていた。
「頭を上げてくれ、堅苦しくやるつもりはないよ。こちらこそよろしくね」
そう言い握手を求める先輩。
それに、ぱあっと笑顔になり握手に応じる美柑。
自分の時とは露骨に態度違いすぎだろと若干引いている練をよそにニコニコの美柑。
「それじゃあ二人とも。作戦会議と行こうか。教室に降りよう」
そう言い先に歩き出した佐城先輩。
それに二人は続いた。
***
「なるほど、炎、風を得意とし、身体強化率も中々のものだね」
入学時に受けた身体、魔力検査の結果を端末で見ながらそう言う佐城先輩。
「これなら、純粋な格闘戦特化で戦えるようになると魔法の相性とも合致するしいいんじゃないかな」
「ありがとうございます! 剣を持って戦うなんて憧れてたんです!! 」
ウキウキ顔でそう言う美柑。
「じゃあ次は、練君。君だ」
「は、はい」
佐城先輩に促されて端末にデータを送る練。「はいはい、えーっと」と言いながらデータを読み込む佐城先輩。
画面をスクロールしていた先輩だったが、途中で手が止まった。
そして、ニヤリと笑いながら練に「やるな、少年」と言った。
「どういうことですか? 」
美柑は不思議そうにデータの中身を聞いてきた。
「身体強化率も平均値より高いけど、魔法の数値がなかなか飛びぬけてるね。
男の子だけど、これだけの数値なら魔法戦車になった方がいい、かな」
と、後衛になるように暗に示された。
「戦車なら最悪春場君を盾にしちゃおうかなー」
と、冗談のように嫌味を言ってくる美柑。
だが、佐城先輩は冷静にこう返した。
「練君を盾にするのは、やめた方がいいな」
と、真顔で返す佐城先輩。
「どうしてですか? 男の子なんだし、もっと頑張ってもらいたいなーって」
と、冗談なのか本気なのかわからないことをぬかしていると先輩がマジレストーンでこう返した。
「練君、治癒魔法が使えるみたいだよ。バリバリの前衛で出すのは私は反対かな」
そう言った。
すると、美柑は固まった。
ぎょっとした目でこちらを見てくる。
が、すぐに元に戻り、「治癒魔法なんて高等魔法の使い手……認めない! 」と敵意を向けてきた。
「おやおや、仲間割れはよくないよー」とゆるーく静止してくる佐城先輩。
「あくまで初期ペアの期間の間は仲良く、ね?」
と、仲を取り持ってくれる。
「けど、治癒の方法が、その、中々ユニークだね」
と、話をそらしてくれる佐城先輩。
「珍しいですか?」
そう聞いた練。
「いやー珍しいというか、魔法師にこれしちゃうと……なぁ……」
と、若干頬を染めながら答える佐城先輩。
二人は頭に? を浮かべながら作戦会議は進んでいく。




