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入学編「好奇の視線」

 「それでは、新入生の皆さん。ホームルームを始めます! 」


 魔人事件から数カ月が経った。

 あれから友達は、それぞれの進路に向かって行った。

 かく言う練も同じように自分の進路を選ばされた。

 選んだ進路は



「皆さん、改めて。魔法師高校大阪分校への入学、おめでとうございます」



 ***


 ホームルームは学校全体の諸注意や中長期的な今後の予定についてのガイダンスがメインだった。

 そして、ガイダンスが一通り終わると、今度は自己紹介に入った。

 自己紹介なんて今更、どうということはないはずだった。

 周りが女子しかいない状況でなければ。


「えー、初めまして。春場練と言います」


 教壇に立たされ、そう自己紹介する錬はさながら、珍獣を見るような好奇の視線を向けられていた。


「ニュースで見たことがある人が多いと思いますが、私は体質の関係で魔法が使えるみたいで、この学校に来ることになりました」


(うぅ……視線が痛い……)


 魔人襲来事件の後、錬の存在は公にされることとなった。

 無論、個人情報は秘匿され、研究に協力する。ということを公表するのみとなっている。


「皆さん、どうかよろしくお願いします」


 一礼し挨拶を終わる。

 すると、女子の一人が声を上げた。


「それで終わりー? 」


 その言葉を合図に、ヤジのようなものが飛び始める。

 もっと自己紹介しろーや魔法って何が使えるの? だったり。

 その反応に「えっと……」と戸惑う練。

 当たり障りのない自己紹介が却って燃料を投下してしまったようだ。


「はいはい、本人が委縮しちゃうから余計な詮索はしないしない!!」


 そう言う担任の先生は、以前中学校にも来ていた漆原瞳。

 この学校には、教師にも制服があり、先生は制服を着ている。


「けど、もう少ししゃべったら? 」


 と、暗に自己紹介の続行を促される練。

 しぶしぶ、それに応じる練。

 結果、質疑応答まで含め、他の人の三倍以上の時間をかける羽目になってしまった。


 ***


 初日ということもあり、ホームルームだけで学校は終わった。

 早速、仲間意識ができた子たちは島外のお店へ遊びに出かけたりしている。

 学校がある、花州は洋上を埋め立てた人工島で、近くには舞洲や夢洲などの人工島があり、そっちの方は遊べる施設が揃っている。

 花州は商業の島というよりは、魔法研究の島といった様相が強く、魔法研究ラボや企業、そして魔法師を育てる国立学校まであるといった具合だ。

 そんな研究職が強いこの島だが、寮などで住んでいる人口も多く、寮の近くにはコンビニやスーパーなどがある。

 もっとも、それらは門限の時間を過ぎるといけなくなってしまうが。


 錬は、ホームルームが終わると早々と寮の自室へ逃げ帰ろうとするも女子たちに捕まり、寮内での女子会に引きずり込まれた。

 早速、この学校の洗礼を浴びることになるとは……と、思わざるを得ない錬であった。


 ***


 女子会では、各々の改めての自己紹介。

 そして、今後何をどうするのかといった予想を語り合っていた。

 が、ふと、話が錬に振られることとなる。


「ねえ春場君ってさ。どうして魔法が使えることに気が付いたの? 」


「え?」


 その言葉に、思わず当時のことを振り返る。

 魚眼の化け物、吹き飛ぶ人間、血を吸われる教師。

 そんな光景を思わず思い出してしまい固い顔のまま固まってしまう。

 その様子を察してか、おどけた様子だったものの聞いてきた子がこう返してきた。


「あれ、聞いちゃいけないことだった? 」


 その返事に一瞬迷ってしまう。

 だが、すぐに「いや、そういうわけじゃないよ」と返した。


 あんな化け物たちとこれから戦っていく。

 下手すれば命を失う子だっているはずだ。

 その現実にいち早く気が付いてしまった気持ちがあって反応できなかった。


「俺が魔法を使えるのに気が付いたのは、今でも実感はないんだ」


 そう語りだした。


「何それ? 使えるのじゃないの? 」


 と、呆れるように聞かれる。

 どう答えていいかわからず、起こったことをありのまま伝えることにした。


「きっかけは、魔人事件だったんだ」


 その言葉に、笑っていた全員が真剣な顔になる。


「春場君、魔人を見たことがあるの? 」


 そう聞かれる。


「見たことがある、というより相対したことがあるって言った方がいいかな……」


「相対する……? 」


「具体的には、首を掴まれて吸血される一歩手前まで行った」


 その言葉で、その場にいた全員が息をのむ。


「学校にさ、魔人が襲撃してきて、先生が血を飲まれてたんだ。

 で、幼馴染と逃げようとした時に見つかって、首を絞められた。って感じ」


「魔人ってどんな感じだった?」


 そう聞かれる練。

 ぼかすかはっきり伝えるか悩むが、ここははっきり伝えた。


「目は魚眼でくちはあんこうみたいなすごい口。

 手には恐ろしい爪が付いててあんなので引っかかれたら死ぬなって思ったね」


 その言葉で、自分が相対そうとしているモノの輪郭を思い描いたのか、顔が青くなっている者もいた。


「そこで、幼馴染と俺が、魔法を偶然発現させたみたいで、魔人を倒しちゃった……ってのが最初だったね」


 皆が、「ふーん」となる中で一人が挙手しながら質問してくる。


「倒したってどんな風に?」


「死んでたかは分からないんだけど、壁に吹き飛んで動かない……みたいな?」


 と、茶化すように答えてしまう練。


「春場君がやったの? 」


「俺がやった……らしいんだけど、その時首を絞められて無我夢中だったからわからないんだよねぇ」


 そう言うと、「だからが実感がないってわけか」と質問してきた子は納得してくれたようだ。


「いずれ、魔人を見る機会はあるだろうけど覚悟はしておいた方がいいよ。ちびるくらい怖い」


 そう冗談っぽく言って場を場を和ませようとする。

 話の方向性と場の空気を換えるために、今度は錬が話を振る。


「みんなはなんで魔法師高校へ? 俺は半強制だったけど」


 と話し、各々が思う魔法師像を語ってもらうことにした。

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