美柑編「告白」
翌日の練は散々だった。
煩悩で寝れず、気が付けば明け方。
そのまま学校へ行き、学校では居眠りで先生から注意されるなどひどい一日だった。
だが、昼休みにまとまって寝れたおかげで、午後はなんとか乗り切ることができた。
訓練も無事乗り切り、放課後を迎えた。
『屋上へきて』
短いメッセージだけがスマホに来ており、それを見た練は屋上へと向かった。
屋上へ上がり戸を開けると、日が傾いていた。
時間は午後五時。
居残りで訓練する生徒はいるものの、帰宅についている生徒が多い時間だ。
屋上の片隅のベンチに一人の人影を見た。
その人影に向かって練は歩いて行った。
向こうも気が付いたのか立ってこちらに向かってきた。
「練」
「待たせたな、美柑」
美柑は「全然、私も今来たところ」と嬉しそうに言う。
「来てくれてありがとう」
「呼ばれてこないのもどうかと思うぞ。で、用件ってなんだ?」
練は要件を促した。
「練とペアを組むことになって、しばらく経ってからだっと思うの。
私、練に支えられてるなって」
「まあ、ペアだからな。そういうものだろ」
練は当たり前だろといった表情で答える。
「もちろん、ペアとして支えあうのはあると思う。
けど、練には支えられっぱなしだった。
あなたには命を救ってもらったこともあるし」
練はどのこと言っているのかはわからなかったが、黙って話を聞いた。
「そのうちにね。私、練のことを考えるとなんだかおかしくなるの」
「そうか?俺と話しているときはいつも通りじゃないか」
「そう振舞えていたならよかったわ」
美柑は、ほほ笑んだ。
「入学してからこれまでの期間、短かったけれど色んな事があったよね」
「おいおい、振り返りをするには早くないか?卒業するのじゃあるまいし」
「確かに、振り返るにしては短いよね。けど、私にとっては意味のある期間だったの」
夕日が屋上を照らす。熱い季節になりつつあったが夕方は涼しく心地い風が吹き抜ける。
「復讐を果たせたというのはもちろんあるのだけれど、それと同じくらい私の中にできたものがあるの」
この心地よさ、そして雰囲気。練はある予感をしていた。
「それは、練がいなければ始まらなかったことなの。私ね」
その予感に練はドキドキが止まらなかった。
「練のことが、好き」
美柑は一言、そう言った。
顔が赤いのは、夕日なのか、恥ずかしさなのか。
「最初はなんともなかったのに、けど、段々とこの気持ちが大きくなっていったの。
正直に言って、この学校でこんな気持ちになるなんて思わなかった」
「まあ、女子高なわけだからな」
練は冷静を装いながらもツッコミを入れた。
「ねえ、練。私の事どう思ってる? 私は練とお付き合いしたい」
美柑は自身の胸に手を当てながらそう聞いてきた。
練は返答に少し悩んだ。
だが、何かを答えなければと言葉をひねり出した。
「正直に言えば、仮組みで始まった関係だけど、今の関係はすごくいい感じに落ち着いたな、と思ってる。
美柑の事も危なっかしくて放っておけないと思ったけど、今はそれだけじゃないことも正直感じてる」
その言葉に美柑の顔は明るくなる。
「だけど、これは俺の勝手な言い分なんだけど、本当にその気持ちに答えていいのか?という部分が引っかかってるんだ」
「どういうこと?」
「悪く言えば、俺の行動に下心がなかったか。そう言い切れないのが引っかかてるんだ。
この状況を利用したんじゃないか。そんなことを考えてしまうんだ」
その言葉に美柑は、あっけらかんとこう答える。
「私は下心があっても問題ないよ? と言うか、下心に漬け込むような取引を持ち掛けたわけだし」
「と言うと?」
「『私の体、好きにしていいよ』って言ったのは下心に漬け込む前提の取引だったと思ってるよ?」
その発言に「あー」と納得する練。
言われてみれば確かにそういう取引になるなと思ったのだ。
「練にとっては、引っかかるところがあるんだね」
「昨日、あんなことがあった後だからね。『お礼』にどうしても結びついてしまってるのが正直なところなんだ」
「そっか」
そう言うと美柑は少し残念そうな顔をした。
けど、すぐに元気を取り戻しこんなことを言いだした。
「わかった。だったら、『お礼』って思われなければいいわけだね」
練はその言葉にピンと来なかったかが、次の言葉で意味を理解した。
「練が思ってるわだかまり、無くなっちゃえば付き合ってくれるんだよね?」
「それは……」
「だったら、覚悟しててね」
そう言うと、美柑はニコっと笑い、屋上のドアの方へ駆けて行った。
それを、見送るしかない練。
「ったく、なんだよそれ……」
嬉し恥ずかしような気持ちにさせられこれからどうなるのか期待と不安が入り混じりながら夕焼けを眺めていた。




