go to the next 「新しいペア」
時期は夏を控えた季節。
学校では、期末テストと学期末考査の準備で忙しくなっていた。
学期末考査は、実技で行われる魔法テストで、個人採点される科目とペアで模擬戦闘を行って判断される。
本来は中間テストの際にも同様のテストがあるのだが、一年生の一学期中間テストの際だけは行われない。
技能が未習熟で判定できないのと新入生歓迎大会と被るからだ。
二学期の中間テスト辺りまでが、先輩からサポートを公式に受けれる期間ではある。
練と美柑も勉強も頑張りつつ、魔法訓練も欠かさず行っていた。
特に練は、魔法の訓練も行いつつ、先輩の助言から近接戦闘の訓練も積極的に行いだした。
飛行魔法で気を散らしながら戦い、いざとなれば急降下し一撃を加える。
そんなオプションを用意できるなら用意できるに越したことがない。
特に練の飛行魔法は、後衛向きである直立型での飛行ではなく、ホバータイプで無理やり空を飛んでいる前衛向きの飛行魔法だ。
そう言った戦術を取りやすいというのも後押ししている。
こうして、期末試験の準備に追われていた練と美柑だったが、ある日、訓練前に先生から呼び出しを受けた。
内容は詳しくは聞いていなかったが、場所が校長室だということで二人は困惑した。
だが、行く以外の選択肢がなかったので二人はまず職員室で先生を探しに行った。
練が職員室のドアを開け、美柑もそれに続いた。
「「失礼します」」
空調が入っているためか、快適な気温だ。
漆原先生の席へと向かい、話しかける。
「漆原先生、来ました」
「待ってたわ。校長室へ行きましょう」
漆原先生はそう言うと、立ち上がり、二人を連れて校長室へと向かった。
「漆原です。入ります」
ドアをノックした後、声をかけてドアを開けた。
「失礼します」
練は一礼しながら校長に入る。
美柑も同様だ。
すると、意外な人物がそこにいた。
「たえ!? なんで、いるんだ?」
幼馴染であるたえが校長室にいた。
おそらく、呼ばれたのであろう。
けど、たえだけ呼ばれたのが気になる練。
「揃いましたね、では説明を始めますね」
そう言いだしたのは、部屋の奥の偉そうな椅子に座っていた初老の女性。
この学校の校長、その人である。
「まずは、春場君と鳴海さん。先日の魔人討伐の件は見事でした。
入学したての一年生がこの快挙を成したのは開校以来なかったことでしょう」
と、世辞を述べてくる。
「ありがとうございます。先輩からの指導あって初めて成せたことではありますが」
練も冷静に返した。
もっと砕けた態度でもよかったのかもしれないが、この学校の特殊性と目の前の人から放たれる緊張感が練をそうさせた。
「その心構えはいいですね。驕りもないいい返事です」
校長は穏やかにそう答えた。
「さて、早速ですが本題を。
春場君、君は鳴海さんとリンク状態になれると聞いております」
「そう、らしいですね。試したことが一度しかないので」
練は自信はないよ、と言いたげに答えた。
「春場君の言う一回は、魔人討伐の時でしょう。
あなた達の持つ素養は期待しています」
またも世辞を述べられる。
「ですが、我々の目から見て、少なくともあと一回。リンク状態になっていることは確認しています」
練は思わず聞き返した。
「え、いつですか?」
「新入生歓迎大会の際、春場君は鳴海さんに濃厚接触、キスをされていますね」
その言葉に、練はそう言えばそんなこともあったなと思い出す。
「あの際、映像から見るだけでの判断ですが、二人は高次元のもではありませんでしたが、リンク状態にあったと思われます」
その言葉に、いろいろなことが頭を駆け巡る。
だが、それらがまとまり切る前に校長先生はこう答えた。
「本来、仮組みのペアは身体測定から得られた情報を元にリンクに至りやすい人間同士を優先的に組ませています。
それは、あなた達も例外ではありません」
練と美柑は顔を見合わせた。
二人して若干赤くなる。
「ですが、春場君に関してはある報告が上がってきています」
「どんな内容ですか?」
「その前に、一つ実験をしたいと思います。
山吹さん。お願いしてもいいかしら」
たえはそう言われると、「はい」と答え立ち上がった。
気のせいか若干顔が赤い。
こちらに向かって歩いてきて練の前で止まった。
「動かないでね」
そう言うと、たえは練の顔に手を添え背伸びして練の唇に自身の唇を重ねた。
「ふぇ!?」
美柑が驚きの声を上げていたがそれが聞こえないくらい衝撃的だった。
数秒経って、たえは唇を離した。
数秒至近で見つめあっていたが、背伸びを止め二、三歩下がる。
「どう?」
「どうって……」
練の頭の中は混乱していた。
幼馴染が積極的にキスしてくるなんて考えもしなかったことだ。
第一、この世界ではキスでも妊娠すると言われている中でキスしてくるんだ。
何がどうなってこうなったのかわけがわからなかった。
「春場君、気が付いたことはないかしら」
校長先生にそう言われ、辺りを見渡す。
無論何も変わってない。
「気が付いたことって、あ、あれ?」
そこで一つ気が付いたことがあった。
キスをした際、たえから魔力が流れてくる感覚をはっきりと感じた。
そして、今練はリンク状態になっている。
「お、俺、リンク状態になってる?」
そう言うと、校長先生も目の色が変わった。
「やはりね」
「どういうことですか。これ……」
美柑が説明を求めた。
「まずは、三人とも。座りなさい。何が起きたか話すわ」
「まず、鳴海さんと春場君は新入生歓迎大会時点でリンク状態になることが可能だった。
そして、今、実験した通り、山吹さんともリンク状態になれている」
校長先生は今の現状を話し出した。
三人は黙ってそれを聞く。
「そして、先日の魔人事件の際、春場君は治癒魔法を使用していましたよね?」
そう言われる。
「はい、一人は腹部からの出血。
もう一人も同様に打撲や血を吸われていましたので、一次救命として措置を行いました」
練は状況を軽く説明する。
セクハラとでも言いだすのではないかと若干不安になったためである。
「それ自体は、問題ないのです。
問題はその二人がリンク状態になっていた。と言うことが報告されているのです。
そのペアはリンク状態になれないのに」
「えっ」
「つまり、本来リンク状態になれない人でもリンク状態にさせる何かが君にはある。
そう言うということです」
練は開いた口が塞がらないといった状態だった。
「春場君は、世界初の男性で魔法が扱える人間です。
この状態で、リンク状態に関する特異性を見つけては放ってはおけません」
そして、校長先生はとんでもないことを口にした。
「春場君には今後、いろいろな子とペアを組んでいただきます。
そして、リンク状態に関するデータを集めていただきます」
「それってつまり」
「他の女の子とキスしまくりなさい」
そう言われる。
まるで頭を金槌でぶっ叩かれたような衝撃に襲われる。
それくらい、衝撃的な一言だった。
***
「なんか、大変なことになったわね」
美柑が同情の言葉をかけてくれる。
「ペアは解散しなくてもいいけど、他の子とペアを組め。そしてリンクしまくれって……やり捨てみたいなもんじゃん……。
恨み買いたくねぇ……」
練は頭を抱えていた。
「まあ、でも最初のペアは山吹さんなのは救いじゃないかしら。
元から顔見知りなわけだし」
「幼馴染なんだよ。いきなりキスされてびっくりしてるけど」
そう言っているとキスの感触を思い出し赤くなる。
「私だって、初めてされた時はそんなものだったわよ」
「そうなのか?」
「あ・ん・た・に・さ・れ・た・の・よ・!」
そう言いながらポカポカと殴ってくる。
「痛い! ごめん! 悪かった!」
「本当にそう思ってるのかしらったく……」
美柑はそう言いながらも顔は、へにゃっているあたり、満更でもないらしい。
「まあ、期末まではこの話は動かないらしいし、今は目の前のことを考えましょう」
「そう……だな……」
そう言うと美柑は練の前へ駆け出してこう言った。
「さ、早く訓練に行きましょう」
そう言われ、手を出される。
それを素通りしそうになったところで、強引に手をつながれる。
「今のは手を掴むながれでしょ!」
「いや、そうだけどさ……」
「なんで掴んでくれないの?」
と、うるうるした瞳で聞いてくる。
わざとあざといしぐさをしてきていると感じた練だった。
「恥ずかしいだろ。誰かに見られでもしたら……」
「私は見られてもいいわよ」
そう、堂々と言われてしまう。
「練は私のものなんだから。誰がペアを組もうと絶対に放さない」
そう、真剣な表情で言われる。
「は、恥ずかしいこと言うな……」
「それだけ本気だから。いつか振り向かせるんだからね」
そう言いながら、二人は手をつなぎながら訓練場へと歩き出した。
第一部はこれで終わりです。
ここまで見てくれてありがとうございます!
感想とか頂けると嬉しいです!
第二部に関しては、書けるなら書くかもって感じです。
第一作目の『異世界召喚で逆賊に召喚された私の未来は、処刑か、救国の英雄か』も合わせてよろしくお願いします!!
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