美柑編「特訓の成果」
美柑と練は、見回りに出ていた。
以前と比べて変わったことは、美柑は剣が太く重くなった。
だが、特訓のおかげで以前より振り回す力も速度も上がっている。
一方の練は、大杖に加えて超大型の拳銃を装備することとなった。
その名はP50。
練は初めてこの銃を見たとき、拳銃なのか?と疑問符が浮かんだ。
拳銃の銃身とその下部だけを伸ばしたかのような独特な形状。
装弾数50発という暴力的な弾数。
フライ魔法を使えるなら今はバックアップで持っておくといいと言われ、言われるがまま装備した。
猛者は片手剣を振り回しながらこれを使うと聞いて、すごいなぁと感心した練。
二人とも、装備を新たに町へと出ていた。
***
「こっちが準備完了しても、そうそう出てくるわけないわよね……」
美柑はそうボヤいた。
「何もないことの方がいい、平和なんだから」
練はボヤキにそう応じた。
時刻は午後九時半。
条例で午後十時以降勤務はできないので、間もなく交代となる。
「そうは言っても、特訓の成果を試す機会は欲しいわね」
「もうじき試験があるんだろ?それまで我慢しろよ」
学校の定期考査は、通常の学力テストと魔法と戦闘の実技テストが存在する。
さすがに同じタイミングで試験するわけではないが、ある程度近い。
「実技試験は、前回と同じ二対二の模擬戦闘らしいわね」
練は、新入生歓迎大会のことを言っているのだろうと思った。
「どんなペアと当たるかにもよるだろうけど、そう簡単に負けやしないだろ。俺たち」
ニヤリと笑いながら、練はそう答えた。
「そうね。負けてるようじゃ目標は達成できないわ」
美柑のその目は、学生が試験を考える目線ではなく、実戦を想定した生き死にをかけた目線だった。
「なんて言うか……、ブレないな、鳴海は」
「悪い? 」
美柑は、不満そうに返す。
「いや、目標があるのはいいことだよ。多分」
練は若干悩みながらもそんなことを口にした。
「多分って何よ」
「復讐心が目的なのは、間違えれば命が危ないからなぁ……」
「お気遣いどうも。けど、これは変わらないわ」
頑として譲らない覚悟を持っている美柑に対し練は言葉をかけようとした。
だが、それはインカムから入ってきた情報によって遮られることとなった。
「こちら、本部、本部。魔人がいるとの通報がありました。場所は……」
と、通報のあった場所の住所が送られてくる。
すぐにスマホの地図アプリで、場所を確認した。
近くだったので二人は駆け出した。
***
場所に着いたら二人は異常な雰囲気を感じ取った。
夜の住宅街。
普通は静かなもので、今も静かなのは変わりない。
だが、人も車も一台も通らないのは静かすぎる。
そう感じていた。
練はインカムを通して現場についたことと現場の様子を報告した。
誰かが争った形跡もなく、ただただ見た目は普通であると報告した。
そうしていると、美柑がふと動きを止めた。
そして、一点をジーっと見ていた。
ただ、手は少しずつ腰に下げている剣へと伸びていった。
そんな様子に、気が付いた練。
「おい、どうし」
練が話しきる前に、美柑は抜剣した。
そして、電柱へ向かって風魔法で突進する。
「やああああああああああああああああああああああああ!!! 」
そう叫びながら気合のこもった一撃を電柱に加えた。
電柱の一部が砕け、破片が飛散した。
そして、そのタイミングで練も違和感に気が付いた。
(影が……影だけがそこにいる)
目の前には道路があり人はいない。いないはずなのに、道路の真ん中に人一人の人影だけが映っているのだ。
この違和感に気が付いた練はすぐさま氷塊を生成し、その人影一体に氷塊を射出しばら撒いた。
氷塊が、着弾すると不思議なことに何発かは地面に着弾せず、何かに当たった。
そして、影だけの何かが姿を現した。
「くうぅぅぅううううううう……」
唸り声をあげ、苦悶の表情を浮かべる人がいた。
頭を切ったのか、血が滴っている。
だが、その目は明らかにこちらに正体を見破られた焦りを感じさせる目だった。
「こちら見回り六班。目標発見」
練がそうインカムで報告した。
それと同時に、美柑が魔人へ向かって飛び掛かった。
「やあああああ!!」
風魔法で勢いをつけ一気に距離を詰める。
そして、上段から一気に振り下ろす。
だが、この一撃は寸でのところで、躱されてしまう。
そして、魔人は身をひるがえし、後方へ走り去ろうと駆け出した。
風魔法を使えるのか、初速はかなり出ていた。
だが、その行く手に氷塊の雨が着弾した。
慌てて止まる魔人。
氷塊が降ってきた空を見上げると、練が空に浮いており、上から大杖を構え撃ち下ろしていた。
咄嗟に、別な行動を取ろうとする素振りだけ見せたところで、後ろから美柑が風魔法で一気に距離を詰め、袈裟切りで魔人を切り捨てた。
先輩たちが言っていた、空からの立体的な援護によって魔人を討取った。
***
魔人を討伐し、現場に警察が到着し、後を警察に任せ二人はその場を後にした。
時間は午後十時過ぎ。
帰る時間である。
「んー! 一仕事した! 」
練は呑気に伸びながらそんなことを言う。
「良かったじゃない。特訓の成果、出てたわよ」
労いの言葉を美柑に言われる。
「鳴海こそ、よく気が付いたよな。なぜわかったんだ? 」
周囲の風景と同化する能力を持った魔人だったわけで、ぱっと見では気が付かないであろう
「間違い探しは得意な方よ。本体は消えても電柱の真下だから不自然な影だけはあったってわけ」
そう得意げに語る美柑。
なるほどねぇ、と感嘆の声を発した練だったが、唐突にインカムから声がした。
「見回り六班。応答願います」
「こちら見回り六班」
練が返した。
「先ほど、近くの地域で魔人が発見され、対処に当たっていたペアとの連絡が取れません」
その言葉に二人は顔を見合わせる。
「あなた達の事情は理解していますが、様子を見てきてほしいです。
可能でしょうか」
インカムから聞こえる声は若干緊張感というか切迫感を感じた。
練が練より先に美柑が答えた。
「了解です。見てきます。場所を教えてください」
こうして、場所が持っているスマホに転送されてきた。
距離にして、走って5分程度の場所だ。
「言っちゃったけど、いいわよね」
と、事後承諾を求める美柑。
「まあ、仕方ないか」
練はそう言うと、小走りで駆け出しだ。
美柑もその後に続いた。




