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美柑編「青春の一コマ?」

 特訓は見回りのシフトが行われる日以外、毎日行われた。


 幸いにも見回りの日には何も起きることはなく、散歩して終わりという内容だった。

 二週間目に入るころには数秒であれば、浮遊することができるようになってきていた。


 あとは、どれだけ慣れるかと効率よく魔法を使えるかで、安定性と持続できる時間が決まると恋葉先輩は言った。


 以後は自主練が主で、必要があればサポートに入る。


 そんな流れになった。


 (さてと、始めますか)


 体操着に着替えた練は、屋内闘技場を借りて練習を始めた。

 屋内闘技場なのは単に校庭のコンクリートよりはマシだからである。

 浮遊の感覚としては、空中に立つというより空飛ぶ椅子に座るような姿勢で飛んでいる。


 少なくとも、風のスカートを履くよりは確実に飛べた。


 ただ、下から無理やり押し上げてるやり方なので消耗はしやすい。

 それでも、物を振り回したり細かい姿勢制御ができるので、近距離ファイターがフライ魔法を習得する際にこの方法をとるそうだ。


 今の練の役職は後衛なので、ミスマッチではあるが習得を優先した結果こうなった。


 目下の課題は、浮遊しながら魔法を放つことだ。


 恋葉先輩は、銃を主武装とするため参考にはならず、ここからは自力で練度を上げるしかない。

 敵を上から撃ち下ろせる、それだけでも効果はあるのだが、真に効果を出すなら敵の周りを飛び回りながら撃ち下ろすことだろう。


 練は闘技場をくるくる周りながら中心点に向かって魔法を撃ち下ろす練習を繰り返した。

 時々急降下して大杖をフルスイングしたり、フルスイング後に急上昇し真下へ向かっての爆撃など、自分の中で連続技を見つけようとする。


 そうして、練習していると視界に人影が見えた。

 ふとそちらを見下ろすと、美柑がそこにいた。


「なんだ、来てたのか」


 練は、美柑の方へとゆっくりと降下しながら近づき着地した。


「さっきまで、佐城先輩もいたわよ。短期間でよくモノにできてるって」


「気が付かなかった。いたなら声をかけてくれればいいのに」


「集中してたでしょ。下手に集中を乱したらケガの元だし、はいこれ」


 そう言って、スポーツドリンクを差し出す美柑。


「いいのか?サンキュー」


 練はありがたくそれを貰う。


「ふいー、染みるねぇ……」


 練は癒されていると、美柑は不思議そうに聞いてきた。


「ねえ」


「どうした? 」


「私って、そんなに価値があるの? 」


 その言葉に、思わず口をへの字に曲げる練。


「なんだそのナルシストみたいな質問は」


 そう聞き返すと、美柑は衝撃的なことを言った。


「だって……、協力してもらう見返りに私のこと好きにしていいって話じゃない? 」


 その言葉に思わず吹き出す練。


「びっくりした! 汚いわよ!」


「びっくりしたのはこっちだ! まだその話するのか! 」


 練は思わずそう叫んだ。


「だって、そういうことで協力してくれてるんでしょ? 」


「俺、言ったはずだけどなぁ。体は大事にしろって」


「それって……、私の体を好き勝手する前に死なれたら困るからでしょ? 」


 若干モジモジしながらそう答える美柑。


「そうじゃない! 体を取引材料とかそういうことをしないでくれってことだ! 」


 練は必死に弁明する。

 木霊する声。そして一瞬の静寂の後、美柑は不思議そうに話した。


「なら、どうして春場君は協力してくれてるの? 」


「なんでって……」


「報酬はいらないって言ったわよね。ならなんでこんな私情に苦労してまで付き合ってくれるの? 」


 不思議そうとも、不安ともとれる態度を見た練は慌ててどうにか言葉を紡ぐ。


「なんでかと言われると……、そうだな。後悔すると思ったから、かな」


「後悔? 」


 と、不思議そうに聞いてくる。


「これを断った後、もし死んだとかになったら、多分、後悔すると思ったから、かな。

 少なくとも俺さえいれば、治癒魔法で助けられることもあるだろうし、何かできるって思ったんだよ」


 練は照れながらもそう答えた。


「そ、そう……」


 美柑も何とも言えない空気に思わず黙り込む。


「と、とにかく。俺は、俺の意思で協力するって決めたんだよ。

 だから、気にするな」


 練は、スポーツドリンクを一気に呷る。


「ご馳走様。今日はこれで終わりにするから、寮まで帰ろうぜ」


 そう言いながら、荷物を取りに歩き出す練。


「春場君」


 ふと、美柑に呼び止められる。



 振り返ると、若干恥ずかしそうにしながらもはにかみながら

「ありがとう」

 美柑はそう言った。



 復讐なんて無ければ、年相応の女の子なんだと。



 思わずドキッとした練だった。


「どういたしまして」

 

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