Another View「揺れる美柑」
「なんなのあいつ! もう! 」
美柑は揺れに揺れていた。
買い出しに付き合ってもらい、帰りに魔人と遭遇。
事情聴取を受けて、帰ってきたのは二十二時を過ぎてからだった。
これでは、せっかく買ってきた掃除機も回せない。
明日、登校前に片付けるしかないかと思いつつ、玄関で座り込んで両手で顔を覆っていた。
突然、手を掴まれて強引に引き寄せられた美柑。
魔法を発動していたし、直後にコンクリートの破片が飛んできたから守ってくれたのはわかる。
そして、その後魔人が頭を撃ち抜かれて倒れたのを見て安堵したまでは良かった。
そこで、ふと正面を向くと練の胸の中に顔があった。
見上げたら、練がこっちを見ていた。
真剣な目、高い鼻、そしてかつてキスした唇。
それらを思わず見てしまった。
そして密着して感じてしまった。
男子にあれだけ接近するのは初めてで、体格差やちょっとしたことで思わずドキッとしてしまう。
ここになんのために来たのか。
普通の女の子としての青春は捨てる。
そして、両親の仇を討つ。
そのために、ここに来た。
来た、はず、なのに……。
「何やってるのよ、私」
鏡を見なくても顔が真っ赤になっているのがわかる。
すべてはあいつのせい。
あいつのせいで、計画が狂った!
いや、何が狂った?
あいつは、ただの仮組のペアだ。
それだけなのに、何が狂ったのか。
と、自問自答に陥る。
その結論が出そうになる。
が、その寸でそれを否定する。
「いやいやいや、あいつに変なことされて変に意識してるだけだし」
そう、キスなんて浮ついたことされたせいで、舞い上がっちゃってるだけ。
しばらくすれば、落ち着くに決まってる。
そう自分に言い聞かせながら、靴を脱ぎ部屋へ上がる。
「私は、やらなきゃいけないことがあるの」
そう言いながら、部屋の鏡の前に立つが顔は相変わらず真っ赤なままであった。




