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魔力ゼロの車椅子少女、魔法学園へ行く〜天才魔道具技師は世界の常識を破壊する〜  作者: 稲屋戸兎毛


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第30話 第八実習場

 ベンに教えてもらった第八実習場は、岩場のエリアと森のエリアに分かれていた。


「で、アタイ達はここで何を探せばいいんだい?」


 ボニーが太陽に反射してきらめく髪を風になびかせる。


「えっと、具体的にこれって物はないんですけど、例えば地下への穴だったり、階段だったり、なんでも良いので地下に続く何かを探して欲しいんです」


 ボニーは、ほうっと腕組みをすると、首を傾げた。


「さっき地下には何もないって分かっただろ? それなのにどうしてまだ地下を探すんだい?」


 ボニーの斜め後ろから、アドルフが大げさに両手を広げて赤い髪を逆立てる。


「それにこの辺りは何の施設もねぇからよぉ、水路はほとんど通っちゃいねぇぜ」


 ボニーに両の頬を、むにむにとオモチャにされたままのリリアが答える。


「確かに“地下水路”には何もありませんでした。なので、“別の地下施設”を探すことにしたんです」


「別の地下施設というと?」


 後ろ手に結ばれたボニーの金髪が、ゆらりと揺れる。


「収容所です」


「「「収容所?」」」


 ボニー、アドルフ、ベンの三人が同時に声を上げた。


「はい、ファンダリア魔法学園の歴史っていう本に書いてあったんですけど、過去に学園は収容所として使われていたことがあったらしいんです」


「てことはなにかい? ここにその地下収容所があったって言うのかい?」


 ボニーの言葉に、リリアは小さく首を横に振る。


「水路と違って、そこまで詳細な図面は無かったんですけど、もしもあるならそこは、地盤の関係で土系統の魔法や建築が制限されている場所じゃないかと思ったんです」


「で、でも制限しているって事は、学園側も何か知っていて制限しているってことじゃ・・・・・・うわ!」


 ベンの頭をガッチリとホールドし、グリグリと頭を拳で捻るボニー。


「野暮な事言うもんじゃないよ。友達を助けたい思い、良いじゃないか! それに学園のルールなんてその殆どがどうしてそうなっているのか、今の学園も把握できていないものばかりなんだ。可能性はゼロじゃないさ!」


 ペンをホールドしたまま、逆の腕で今度はリリアの頭をホールドする。


「そして、可能性がゼロじゃない限り、アタイ達が諦めることはないんだよ!」


「ありがとう、ボニー」


 リリアは埋もれた顔で感謝の言葉を口にする。



♢♢♢♢♢♢



 ボニー達の協力を得て第八実習場を調べること一週間。


 暗く湿った森の奥でベンの声が響く。


「ベン! どこだい!?」


 すかさず駆けつけたボニーが、ベンの指差す場所を遠巻きに視認する。


 地面から突出したそれは、所々剥き出しの岩肌が風雨に削られ浅黒く風化し、表面のほとんどを青々とした苔に覆われていた。


 その一見するとただの岩のようにも見えるものに向けて、ベンがゆっくりと指で空をなぞる。


「あ、あそこと、あそこ。苔の切れ目になってて、ちょうど扉みたいになってる・・・・・・」


 ベンの指差した場所をジッと凝視するボニーは、確信を持った声音で呟く。


「ビンゴだ! しかも周りの苔の様子からして最近動かした形跡もある!」


 ガサゴソと一足遅れに、草を掻き分けてやってきたアドルフに向かってボニーが指示を出す。


「リリアに伝えな。冒険の始まりだよ!」


♢♢♢♢♢♢


 ボニー達に合流したリリアは、慎重に岩へと近づき苔の切れ目を調べる。


「押しても引いてもビクともしないですね・・・」


「ああ、アタイ達もアンタが来るまでに少し弄ってみたけど、うんともすんともいいやしない」


 岩肌を手で撫でるリリアは、僅かな窪みを見つけて指を止める。


「多分ですけど、ここが鍵穴になっているんじゃないですかね?」


 ボニーが覗き込むと、たしかにそこには穴のようなものがあった。


「たしかに、鍵穴っぽくも見えるね。じゃあこの扉は鍵がないと開けられないってわけだ」


 ぺちぺちと岩を叩くボニーは、不敵に口角を上げる。


「ちなみに、鍵以外で開ける方法はあるのかい?」


 どこか瞳を輝かせるボニーの背後で、ベンがあたふたと慌てている。


「ないことはないと思うけど、それには色々と準備がいるから一度寮に戻って準備しないと・・・」


 オロオロするベンの肩を、ポンとアドルフが叩き、諦めたような表情で首を横に振る。


「そうかいそうかい、それじゃあ仕方ないね」


 顔に満面の笑みを浮かべたボニーが、手慣れた手つきで腰からガントレット型の魔道具を取り出した。


「ボ、ボニー?」


 ガチャガチャと、ガントレットを右手に嵌めるボニー。


 そそくさと逃げていく、ベンとアドルフ。


「“ブチ破って進むとしよう”」


 ボニーは腰を落とし右腕を引くと、照準器のように左手を前に突き出す。


「ちょっ––––––。」


「ブチ抜け青春!!」


 ドンッ! と大気と地面を震わす振動が、身体の芯を揺らす。


 扉どころか突き出していた大岩諸共吹き飛び、平になった地面がそこにはあった。


「ありゃ、ちょっとやり過ぎたまったかい?」


 パッパと土埃を払うボニーが豪快に笑う。


「ボニー、やりすぎだよ。犯人に気付かれたらどうするの?」


 頭から土埃を被って、茶色くなったリリアがため息混じりに注意を促す。


「その時はその時さ! 冒険はいつだってノンストップだよ!」


 両手を腰に当てて笑うボニーは、ひとしきり笑い終わると、アドルフに向かって人差し指を突き出した。


「それはそうとアドルフ! 今からひとっ走りして人を集めときな!」


 名指しで指名されたアドルフが、肩をすぼめて首を傾げる。


「人を集めるったってリーダー。どこで、誰を、集めればいいんだよぉ」


「ん? あー、それはあれだよ、あれ。あれ? 誰かいるかい?」


 同じく首を傾げるボニー。


 すかさずリリアが土埃を払いながら口を開く。


「それなら、ブルーアクアって喫茶店に行ってもらえますか?」

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