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魔力ゼロの車椅子少女、魔法学園へ行く〜天才魔道具技師は世界の常識を破壊する〜  作者: 稲屋戸兎毛


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第29話 冒険クラブ

 金髪のリーダーの問いかけにリリアは声を絞り出す。


「私は、失踪した友達が地下水路のことを調べていたから、ひょっとしたら学園の警備を掻い潜る抜け道があるんじゃないかと思って探しに・・・」


 金髪のリーダーは豪快に笑うと、リリアの背中をバシバシと叩く。


「あっはっはっは! そりゃウチの連中が失礼したね! ただ、女の子がこんな所に来るもんじゃないよ。もし、アタイらが件の誘拐犯ならアンタ今頃ただじゃすまないからね!」


 叩かれる度にリリアの体が小さく跳ねる。


「あなたは大丈夫なんですか?」


 金髪のリーダーはリリアの言葉に、目を大きく見開くと、先ほどよりもさらに大きく口を開けて、はち切れんばかりの胸を張る。


「アタイは特別なのさ! アドルフもベンもいるし、何よりアタイは強いからね! 誘拐犯の十人や百人出てきたって捻り潰してやるさ!」


 金髪リーダーが大きな胸の前で、右拳を左の手のひらにバシバシと打ち付ける。


「リーダーさんって、その、なんていうかカッコいいですね。豪快というか、明るいというか」


 ボソッと漏らしたリリアの感想に、金髪のリーダーは驚いた表情をすると、口の端を僅かに緩ませる。


「なんだいなんだい。嬉しいこと言ってくれるじゃないかい!」


 リリアをまじまじと眺めた金髪のリーダーは、大きく両手を広げると勢いよくリリアを抱きしめた。


「こうして見ると、ますます小ちゃくて可愛いね! 誰だいこんな可愛い子を誘拐犯と間違えた阿呆は!」


「むぐぅ」


 強く押し付けられる二つの膨らみに、顔が埋もれて呼吸が奪われる。


「よし決めた! アンタ、アタイらのところに来な!」


 今度は両肩を持って勢いよく引き離される。


 前に後ろにとガクガク揺れる頭を必死に固定する。


「そういえば、リーダーさん達はどうしてここにいるんですか? リーダーさん達もお友達を探してとかですか?」


「リーダーさんだなんてよそよそしい呼び方はよしてくれよ。ボニーだ、ボニー・エアリーズ。気軽にボニーちゃんって呼んでくれ」


 親指をビシッと決めたボニーがニカリと笑う。


「それで、アタイ達が何でこんな所にいたのかだったっけか? それはな、アタイ達が冒険クラブ、アルゴノーツだからさ!」


「アルゴノーツ?」


「そ、あらゆる未知を冒険し、あらゆる謎をブチ破る。それがアタイらアルゴノーツさ!」


 後ろ向きにひっくり返りそうなほど大きく胸を反ったボニーが、声高らかに宣言する。


「もともとこの水路には目を付けてたんだけどね。最近できた新しいクラブに部室を奪われちゃったから、今は臨時でここを部室代わりに使ってるのさ」


 よく見ると広い空間には、テーブルや椅子、棚などが点在している。


「たしかなんて言ったか・・・・・・。あ、そうそうGMOTとか言うクラブだったかね」


 聞き覚えのある単語にリリアの鼓動が跳ねる。


「まあ、もともと三人しかいなくて、いつ追い出されるかも時間の問題だったんだけどね!」


 ボニーはリリアの頭を両手でガシガシと撫でる。


「そこでアンタが入れば、めでたく四人になるってわけだ!」


 笑うボニーの後ろで息を殺していたベンが、遠慮がちに呟く。


「ク、クラブとして認められる人数は五人からだから、まだ一人たりないんだけどね・・・」


 すかさずアドルフがベンの肩を持つ。


「そう言うなよぉベン。我らがリーダーは人数なんて細かいことは気にしない主義なのさぁ。おかげで俺たちゃ、こうしてポイント稼ぎに必死にならなきゃならねぇ」


「ポイント?」


 今日何度か耳にした単語に、リリアは首を傾げる。


「生徒会が配ってるポイントさぁ。ポイントを大量に稼げば色々優遇されるんだよぉ」


「ウ、ウチは毎月赤字だからね。ポイント稼がないと解体されちゃうんだ・・・」


 しょぼくれるベンを激励するかのように、ボニーが拳を高く突き上げる。


「そんなこと関係ないね! 誰が何と言おうと、アタイ達の冒険はここからだよ!」


「そうやって、部室を追い出されたんだよなぁ」


 アドルフがケタケタと笑う。


「まあ、それはそれとして、アタイ達が調べた限り、この水路に失踪した生徒はいなかったよ」


 ボニーの顔から笑みが消える。


「なんせ俺達、もう半年はこの水路に出入りしてるからなぁ」


「ぶ、部室追い出される前からだもんね・・・」


 アドルフとベンがお互いに顔を見合わせて頷いている。


「と言うわけさ、アンタの読みは悪くなかったけど、ここはハズレだよ」


 ボニーの言葉に、リリアは肩を落とした。


 せっかく見つけたと思っていた手掛かりが、スルリと手のひらから溢れ落ちていく。


「とはいえ、アンタの読み自体は悪くなかったよ。この学園にはアタイ達や教師達ですら知らないような秘密がまだ山ほどあるんだ。その一つを犯人達が利用していたとしても、なんら不思議はないさ」


 リリアを励ますように、肩を叩くボニーの笑顔が眩しく輝く。


「学園も知らない秘密なんて、そんなのどうやって見つければ・・・・・・」


 肩を落とすリリアに、ボニーが顎に手を当てて考えを巡らせている。


「アタイ達が冒険の舞台を探す時わね。誰も知らない場所じゃなくて、誰も気にしない場所を探すもんさ。意外とそういうところに、冒険は転がってるもんだよ!」


 「ま、参考になるかどうかは、わからないけどね!」と付け加えたボニーがニヤリと口角を上げる。


 ボニーの言葉に、リリアはもう一度キャシーの残していた本の内容を思い返す。


「––––––もしかして」


 不意に顔を上げたリリアは、ふんぞり返っているボニーへと声をかける。


「あの、学園の敷地内で建物が建っていなくて、土系統の魔法の使用が禁止されている場所はどこかありませんか?」


「土系統の魔法ねぇ・・・」


 リリアの問いかけにボニーが頭を捻っていると、ベンがか細い声で控えめに声を発した。


「あ、あの、それならたしか、第八実習場が実習場で唯一、土系統とか大規模魔法の使用が禁止されてたはず・・・」


「第八実習場ですね、ありがとうございます!」


 ベンの言葉を聞いたリリアは、今すぐにでも飛び出しそうな勢いでお礼を口にする。


「へえ、何か思い付きましたって顔だね。アタイ達で良かったら手伝おうか?」


 ボニーの提案に一瞬だけ考え込んだリリアだったが、先日のウィスパーテイルでの出来事を思い出し


「すみません。お願いしてもいいですか?」


 ボニーの協力を受け入れた。


「可愛い部員のためだ、お安いご用意さね!」


 グッと拳を突き出すボニーのすぐ後ろで、アドルフとベンがコソコソと耳打ちをする。


「俺達には、あんな態度とってくれたことないよなぁ」


「そ、そうだね。一度もないね・・・」

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