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姿見に映る自分の全身を確認する。
スカートは花びらのように重なった柔らかなチュール、そこにちりばめられた細かいビジュー。胸元は立体的なフリルが飾られ、歩く度にふわふわと揺れ、絶妙なニュアンスを見せていた。華やかさがある一方で、オフショルダーで背中は大きく開いている。完璧なデコルテ見せで、そこは実にグラマラス!
「お嬢様、ネックレスとイヤリングはどちらになさいます?」
「そうね。王妃殿下がプレゼントしてくれたもの、殿下が贈ってくれたもの、どちらにするか迷うのだけど……。ドレスがピンク色だから殿下のサファイアより、王妃殿下のダイヤモンドがやっぱり合うわよね……。決めたわ。こちらをつけましょう」
「かしこまりました!」
フェンブルク帝国の使節団の訪問に合わせて行われる夕食会と舞踏会に参加するため、私は念入りに準備を行っていた。
(どうしてここまで気合いが入るのか。それはジョシュの正式な婚約者として、二人揃って初めて参加する公の場が今回の夕食会と舞踏会だから!)
それに加えてあのあざといネル皇女もいるのだ。ここはしっかり美を極め、ネル皇女に私の存在感を示さないとならない。
謁見の間でネル皇女率いる使節団を迎えた時、私は広間にいたが、王族のみんなとは別の場所にいた。今の私は未来の王太子妃ではあるが、現状は侯爵令嬢に過ぎない。まだ王族の一員ではないため、公的行事として伝統を重んじる儀式では、彼らと並んでネル皇女を迎えることはできなかったが……。
カジュアルな夕食会や、公的ではあるが華やかさ重視の舞踏会では、私も王族の一員という扱いになる。
(つまりジョシュの婚約者としてネル皇女に紹介されることになる。ここはしっかり私の存在をアピールしないと!)
ネル皇女は幼さをアピールしつつ、あざとい一面がある。ちゃんとしておかないと何をしでかすかわからない。
そんなことを考えている間に準備は終了。
ドレッサーチェアに腰掛け、一息つくと……。
「王太子殿下がいらっしゃいます!」
メイドが笑顔で教えてくれた。
◇
この世界ではテールコートに様々な色がある。今日のジョシュのテールコートはミッドナイトブルーで、光沢のあるシルクが使われていた。濃紺に近いが、パール感があり、タイにつけた銀細工の宝飾品とも相まって大変洗練され、上品に見える。
しかも七三分けの前髪の片側を後ろに流し、いつもと違いおでことくっきりした眉が見えているのだけど……。
(かっこいい……! 白の隊服も最高なのだけど、こういう色も、とってもよく似合う。シックで大人な感じで素敵過ぎる……!)
私はジョシュを見て目がハートなのだけど、よく見るとジョシュはジョシュでその紺碧の瞳をうるうるさせている。
「殿下、どうされました!?」
「ポメリー嬢があまりにも美しく、感動していました……」
「殿下……!」
馬鹿ップルにはなりたくないが、相思相愛な二人、どうしたって世界には私達しかいないモードで甘々になってしまう。
「こんな美しいポメリー嬢を見られるのは僕だけがいいです……。他の男性には見せたくない」
「それを言うなら殿下です。昼間に続き、このテールコートは……」
「ではこのまま二人きりで部屋で過ごしましょうか?」
ジョシュが私を抱き寄せ、前屈みになる。さらに私のおでこに自身のおでこをつけるので、今にもキスが出来そうな距離感になってしまう。
(だ、ダメ。ここで瞼を閉じたら、キスをしてしまう。せっかくのお化粧が乱れてしまうし、もう夕食会にも舞踏会にも行けなくなる……!)
必死の思いで理性を取り戻し、キスはお預け。まずは夕食会が行われるダイニングルームへ向かう。
この夕食会は国内の有力者とネル皇女の交流がメインなので、彼女の周りに座るのは公爵、最高裁判所長官、枢機卿と大司教などそうそうたる顔ぶれ。そして昼餐会と違い、ジョシュと私は皇女と距離ができたので、安心して夕食会を楽しめた。
でもその後、舞踏会の会場へ移動すると――。
「まあ、国王陛下はドールとダンスしているみたいですわね」
「まるで親子のように見えますわ」
「なんだか可愛らしいお二人ね」
舞踏会での最初のダンスは慣習通り、ネル皇女と国王陛下により行われた。そして多くの貴族がささやき合う通り、この二人は親子のように見える。
(ネル皇女は自身がドールのように見えることが分かっているのね。だからこそビスクドールの定番、ロココ風のフリルたっぷりを再現したようなドレスを着ている。胸・袖・ベル型のスカートには大量のフリル、レースやリボンも沢山あしらわれ、まさにドールに見えるわ!)
でもその後、ジョシュとネル皇女のダンスが始まると――。
「美男美女のお二人ね」
「兄妹にも見えますが、それ以上に……」
「皇女殿下が王太子殿下を見る眼差しが熱いですわ」
私としては兄妹だと思う。兄妹だと……思い……たい。
(兄妹だと思いたいのに、ネル皇女がとにかく熱い視線をジョシュに送るから、兄妹には見えない! 美少女と年上美青年の禁じられた恋……みたいに見える)
「ラウンズベリー侯爵令嬢、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!」
二人の様子が気になり、公爵家の令息とのダンスは心ここにあらずになってしまう。
(というか私もジョシュとダンスをしたい……)
そう思うが彼は王太子。社交のために彼は様々な令嬢・マダムとダンスする必要がある。そして私も王太子の婚約者として、ネル皇女率いる外交使節団の外交官とのダンスも求められ……。
気づけば舞踏会が開始して一時間経つが、私はジョシュとダンスできていない。代わりに王太子の婚約者として、様々な令息や外交官とのダンスをしていた私は――。
(疲れた。休憩!)
隣室に用意されている休憩スペースに向かうと……。
「まあ、キューズ子爵令息、ジルコン男爵令息、とてもユーモラスですわね!」
ネル皇女が休憩室にいて、そこに沢山の令息が群がっていた。しかもそこにはプレイボーイで知られるキューズ子爵令息、ジルコン男爵令息の二人もいて、婚約者のいないネル皇女に熱い視線を送っている。
(幼いアピールをしているけれど、うまいことあれだけの令息をあしらっているということは、ネル皇女は慣れている。つまりモテることに慣れているし、あしらい方も心得ているわ)
するとそのネル皇女は私が休憩室に現れたことに気づき、こちらを見て微笑を浮かべる。
まさにドールのようで可愛らしい。
そして次の瞬間「わたくし、じっくりお話したい方がいるの。皆様はダンスをなさったら?」とネル皇女が告げると、彼女のそばにいる侍女が令息たちに目で「解散!」とアピールする。
ネル皇女は外交上、重要な人物。ゆえに鶴の一声ではないが、皇女の声には従うしかない。つまり令息たちは彼女のそばからはけていく。するとネル皇女が私を見る。
(な、何かしら!?)
本能で何かを察知した私の方へネル皇女が歩み寄る。
(えっ、何!?)
たじろぐ私の手をネル皇女が自身の両手で包み込む。
「ラウンズベリー侯爵令嬢、少しお話しませんこと?」
ネル皇女がにっこり微笑んだ。
お読みいただき、ありがとうございます!
ネル皇女はまさに年下系あざとい女子……!
ポメリー、どうする!?
続きは明日、書きあがり次第公開です~
この後、頑張って続きを書きます!
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