8.目黒 京とGW。
宿泊研修が終わると、あたしにとってはつまらないGWがやってきた。家のソファでスマホ片手にゴロゴロするあたし。
「ちょっと桜兎、家にいても邪魔だからどっか外行ってきなさい」
と掃除機をかけるお母さんにシッシッとされる。
「娘にそれは酷くない?!」
「彼氏の1人でもできてくれればいいのに…はぁ」
とお母さんは、頬に手を当てため息をつく。
「彼氏じゃないけどあたしには空くんがいるから」
「彼氏を作ってそろそろ空くん離れしなさいってことよ~。本当にこの子のストーカー体質は誰に似たのかしら~。我が娘ながら恥ずかしいわ~。空くん大丈夫かしら~」
と娘のあたしより空くんを心配するお母さん。
「もう!外行ってくる!」
あたしは財布とスマホだけ持って外に出た。ウロウロしてると小腹が空いてきて、ワンチャン空くんいないかなっとお洒落なカフェに入る。
店内に入ってグルっと見渡すけど、そんな簡単に現実は上手くいかない。適当に席に着くと大好きなアイスのキャラメルラテとガトーショコラのケーキを頼んだ。
キャラメルラテを飲みながらスマホを開く。
『空くんなにしてる?』
と返ってこないであろう空くんにメッセージを送る。
「あれ?桜兎じゃん」
スマホから顔をあげると京がいた。
「えぇ~なんで京なの?ここは空くんじゃないの〜」
とテーブルに項垂れるあたしに
「休みの日まで柏木かよ~。たまには俺のことも気にしてみろよ」
とあたしの前の席に座ってくる京。
「お前何してたのこんな所で」
と注文を済ませると頬杖ついてあたしに質問してくる。
「お母さんに外行って来いって追い出されたからカフェに来ただけ」
「ふぅ〜ん、暇なら付き合えよ」
と京が頬杖つきながら言う。
「まぁ…暇だしいいよ」
と言うあたしに
「おぉ~柏木いないと付き合いいんだな~」
と少し驚く京。
二人で食事を済ませるとカフェを出る。
「で、どこ行くの?」
と身長の高い京を見上げて聞くあたしにニコッと笑うと
「いや、本当は買い物に来てたんだけど、お前が付き合ってくれんなら遊園地行こう」
と楽しそうに笑う京。
「遊園地…?まぁいいけど…なんかデートっぽくない?」
「なんでもいいだろ行くぞー」
と機嫌よく歩く京について行くあたし。
遊園地に着くと案外楽しくて大はしゃぎするあたし。
「ちょっと!京!あれも乗ろうよ〜!!」
と目をキラキラさせて、京の腕を引っ張ってどんどん乗り物を制覇していく。
「ちょ…おま…流石にもう酔う…ギブ…」
と言う京に
「えぇ?!まだまだ閉園までにあれとあれとあれも乗らないと行けないんだよ?!」
とまだ乗ってない乗り物を次々と指さすあたしに京は更にゲンナリした顔をする。
「なんでこんな女を俺は…くそ…」
と訳わかんないことを言ってあたしをジトーと見てくる京。流石に可哀想なので
「も~う、しょうがないなぁ、ちょっとまってて」
と言うとあたしは飲み物を買いに行った。
飲み物を買うと京にゆっくり近づき
「えいっ」
と飲み物をほっぺたに当てる。
「つめたっ!!ふざけんなよ桜兎」
と言う京にケラケラ笑いながら
「はい、どーぞっ」
と笑顔で飲み物を渡すと、あたしの顔をジッと見た後、目を逸らした京が
「…ありがと」
と微妙な顔をしながらお礼を言う。
休んでる京の横で、そう言えば空くんから返事来てないかな。そんなミラクル起きるわけないか~と思いつつスマホをチェックすると
『──町の図書館にいますよ』
と1時間前に返事がきていた…!!!!
あたしはガバッと立ち上がると
「きょ、京!!!あたしちょっと用事できたから!!」
と立ち上がるあたし。
「は?」
と言う京を無視して
「今日はありがとう!すごく楽しかった!」
とニッコリと京に笑いかける。
「…あぁ…」
少し目を見開いた後視線を逸らしてしまったけど、ちゃんと返事をする京を見届けて
「じゃあまた学校でね〜!」
とあたしは元気よく京に手を振って立ち去った。
桜兎が立ち去った後のベンチで
「はぁ…まぢであいつ自分勝手で行動もとんでも女だけど笑った顔は可愛いんだよなー…これが惚れた弱みってやつかよ最悪…なんであんな奴に…くそ…うぅ…酔って気持ち悪い…」
と頭を抱える京だった。
そんな事を知る由もないあたしは図書館に猛ダッシュした。1時間前に来てた…まだいるかな?もういないかな?とりあえず向かわなきゃ!
猛ダッシュする若い女の子を道行く人が見る視線なんて気にせずがむしゃらに走った。
ハァハァ…つ、ついた…。
図書館に入りだいたい空くんがいつも使う席を把握してるあたしはそこに真っ直ぐに進む。
すると綺麗な横顔で本を見ながら、シャーペンを握る空くんを見つけた。
あたしはいつも通り空くんの対面に座る。
いつ気づくかな?なんて思いながらニコニコと空くんを見つめる。
すると…すぐに気づいてくれた。
「…吉岡さん」
顔を上げた空くんと久しぶりに目が合う。久しぶりで目が合うだけで嬉しくてドキドキとする。
「空くん!ひさしぶり!」
とあたしはニコニコと笑う。
「久しぶりです。案外遅かったですね」
と言う空くんに
「来るのわかってて場所教えてくれたの?」
と目を見開くあたしに
「まぁ、そうっすね」
と言う空くん。
「そ、それって…会いたかったってこと?!」
と喜ぶあたしに口元に指を当てて
「ここ図書館っすよ。静かに」
と言う空くんにコクコクと頭を振る。
「俺終わったんで出ましょう」
そう言うとあたしの手を引いて一緒に図書館を出た。図書館の外にあるベンチに座る。
「あ、あの…勘違いだったらごめんね?勘違いだったらきもいって思ってくれていいから…」
と言うあたしに
「ふっ…吉岡さんのこときもいなんて思ったことないっすよ。で、なんすか?」
と少し笑った空くんが聞いてくる。
「あ、あの…あたしが来るのわかってて…返事くれたの?しかも…あたしが来るの…待っててくれた?」
とそんな訳ないのにそんな気がして勇気をだして聞いてみた。
そんなあたしに
「そうっすね」
と空くんはいつも通りの顔をしてて何を考えてるかわかんないけど…その答えを聞いてあたしは手を頬に当てて顔を赤くする。
「う、嬉しい…!!!」
と素直に言葉にするあたしに少しだけ笑う空くん。
「ただ、吉岡さんのことだからすぐ来ると思ってたんですけど、案外遅かったですね」
と言う空くんに
「それがね、京と遊園地行ってたの。それでさっき空くんの返事に気づいて即効駆けつけたんだけどね〜」
と笑うあたしに
「目黒くんと遊ぶ約束してたんすか?」
とチラリとあたしを見る空くん。
「え?ないない!長期休暇中て空くんと会えないから空くんいないとあたしって、本当に何もすることない女だから…えへへ。
それで暇してたらお母さんに外行って来い!って家追い出されちゃって…
外で暇つぶしてたら京に誘われちゃって遊園地行ってみたけど案外楽しかったよ」
と笑うあたしに
「…なるほど」
と微妙な顔をしている空くん。
「どうかした?」
と言うあたしに
「暇な時は俺に連絡してください」
とあたしを見る空くん。
「えっ…でも空くんにあたしいつも連絡しまくってるけど…」
どういう事?と考え込むあたしに
「あぁ…これからはちゃんと返事します」
と言う空くん。
「えぇええぇえ?!?!ど、どうしたの…だって、今日返事来たのも…1年ぶりぐらいだったような…」
とかなりビックリするあたし。
まってよ…な、なんで急に?…よくわかんないけど嬉しいは嬉しい…!!!
「俺そんな返事してなかったですか」
と言う空くんに、それにもビックリだよ。
「うん、でも別に無理に返事しなくていいんだよ。あたしは好きでしてることだけど空くんはそういうの好きじゃないでしょ?」
とニコリと笑うあたし。
「無理してるとかそんなんじゃないっす。返事をしたいと思ったから返事することにします」
と言ってくれる空くん。
でもさ…絶対得意ではないよね…。嬉しいけどね??
「じゃあ、あたしはいつも通り連絡しちゃうけど、空くんは返せる時に返してくれたら嬉しいな」
と笑うあたしに
「任せてください」
と言う空くん。
全然任せられないけど、空くんが返事をすると言うんだから少しだけ期待することにしよう。




