表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

+(18)+


 そこで、同じ顔の若い男たちが廊下側の扉から出てきた。


 二人はドカドカとやってきて、ノルンの両脇を掴む。


「え、ちょっと」


 そのまま、丁寧に部屋まで運び込まれる。


 襲われるかもしれないなという気持ちと半分に、何故か安心感のある無表情な双子の凍り付いたような表情にノルンはただ従うしかなかった。


 片方に寝台に寝かされ、

 片方に毛布をかけられ、

 片方に頭を撫でられ、

 片方が明かりを消した。


 そうして、二人は無言のまま部屋を出て行ったのである。



 な、なんだ、この鮮やかな手つきは――。


「こ、こんなことはじめてぇ……」


 ――思わず、処女みたいな声が出た。




(8)


「グラウスさん。この子はノルンだ。今日から、あんたの娘だよ」


 勝手にそう宣言した中年女も、もはや気が()れている。


 中年女は大げさに涙ぐみなら、同じ顔の若い男たち、つまり息子らと一緒に自宅の方へ駆け戻っていった。


 ノルンは、刺繍のこらされたシャツと可愛らしく膨らんだスカート、さらにはウサギみたいに頭上で結ばれたカチューシャを装着している。


 どこかの裕福な村娘といった格好をさせられて放置である。ノルンは心の中で「くそくらえ」と悪態をついた。


 クマのようなおじさんを睨みつけていると、向こうからも同じような厳しい視線が返ってきた。


「意味が分からん」


「でしょうね。私も同じ気持ち、です」


「お前はノーラではない」


「当然のことを言わないでください」


「消えろ」


「そういう訳にも行きません」


 実のところ。ノルンはこの町で客をとってお金を稼ぐつもりだった。


 しかし、この町は予想以上にも治安が良すぎたのだ。


 夜には警邏兵が徘徊し、酔っぱらいのおっさんですら、優しげに自宅へ戻るよう促される。


 何度か見て、うんざりした。


 この町は、平和ボケしている。つまり、今まで通りの方法では金が稼げない。


 ということは、次の町へ旅立つ資金がない。このままではジ・エンドだ。


「わたしは、きょうからあなたのむすめです。よろしくおねがいいたします」


 無感情でそう言ったら、相手から「すぐにどこかへ消えろ」と言う怒りの声が返ってきた。


「よろしくお願いしますっ、グラウスおじさまっ、うふっ」


「……分かった。俺が消し去ってやる」


 ぶりっこしてみたが、さらに相手を切れさせただけのようだった。

 拳を握りしめているおじさんを目の当たりにして、ノルンは内心でチッと舌打ちをした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ