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そこで、同じ顔の若い男たちが廊下側の扉から出てきた。
二人はドカドカとやってきて、ノルンの両脇を掴む。
「え、ちょっと」
そのまま、丁寧に部屋まで運び込まれる。
襲われるかもしれないなという気持ちと半分に、何故か安心感のある無表情な双子の凍り付いたような表情にノルンはただ従うしかなかった。
片方に寝台に寝かされ、
片方に毛布をかけられ、
片方に頭を撫でられ、
片方が明かりを消した。
そうして、二人は無言のまま部屋を出て行ったのである。
な、なんだ、この鮮やかな手つきは――。
「こ、こんなことはじめてぇ……」
――思わず、処女みたいな声が出た。
(8)
「グラウスさん。この子はノルンだ。今日から、あんたの娘だよ」
勝手にそう宣言した中年女も、もはや気が狂れている。
中年女は大げさに涙ぐみなら、同じ顔の若い男たち、つまり息子らと一緒に自宅の方へ駆け戻っていった。
ノルンは、刺繍のこらされたシャツと可愛らしく膨らんだスカート、さらにはウサギみたいに頭上で結ばれたカチューシャを装着している。
どこかの裕福な村娘といった格好をさせられて放置である。ノルンは心の中で「くそくらえ」と悪態をついた。
クマのようなおじさんを睨みつけていると、向こうからも同じような厳しい視線が返ってきた。
「意味が分からん」
「でしょうね。私も同じ気持ち、です」
「お前はノーラではない」
「当然のことを言わないでください」
「消えろ」
「そういう訳にも行きません」
実のところ。ノルンはこの町で客をとってお金を稼ぐつもりだった。
しかし、この町は予想以上にも治安が良すぎたのだ。
夜には警邏兵が徘徊し、酔っぱらいのおっさんですら、優しげに自宅へ戻るよう促される。
何度か見て、うんざりした。
この町は、平和ボケしている。つまり、今まで通りの方法では金が稼げない。
ということは、次の町へ旅立つ資金がない。このままではジ・エンドだ。
「わたしは、きょうからあなたのむすめです。よろしくおねがいいたします」
無感情でそう言ったら、相手から「すぐにどこかへ消えろ」と言う怒りの声が返ってきた。
「よろしくお願いしますっ、グラウスおじさまっ、うふっ」
「……分かった。俺が消し去ってやる」
ぶりっこしてみたが、さらに相手を切れさせただけのようだった。
拳を握りしめているおじさんを目の当たりにして、ノルンは内心でチッと舌打ちをした。




