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+(15)+


 少年はそれ以降、動かなくなった。


 体はまだ硬直していない、死んではいないようだ。


 しかし、瀕死なことに変わりはない。



 ――『ヒール』――。


 ノルンは回復の呪文を唱えた。

 しかし、普通の回復魔術では謎の病で苦しむ瀕死の相手を救えないだろうと思えた。


 それを証明するかのように相手の状態は一切、変わっていない。


 だが、ノルンは上級魔術を扱う神官にも劣らないほどの魔力を体に秘めていた。


「ヒール、ヒール、ヒール、ヒール」



 これはもはや意地の所行だ。名付けてヒール重ねがけの術……。


 体の力が抜け切るほどに、回復呪文を唱え続けた。


 やがて、相手の小さな体から紫色の煙が上がって消えた。どうやら長年、彼を蝕んでいた毒素が抜けたらしい。


 少年の青白い顔が肌色に変化し、口からはーっと息を吸う。小さなの胸元が緩やかに上下し始める。


「さてと」


 無償で誰かを救ってやる気はない。何かを得るためには相応の対価が必要だ。

 これは世界の常識である。


 ノルンは懐から通貨の詰まった袋を取り出して、少年の懐へ忍ばせた。


 それから、彼の耳元へそっと唇を寄せる。


「わたしはかみだ。おまえにこうふくなじんせいをやろう。このかねであんさつしゃからあしをあらい、てきとうにおんなでもみつけてけっこんして、こどもをうんで、あいじょうぶかくそだてろ。せかいにこうけんするのだ。いいな?」


 うーん、うーんと唸っている相手の耳元で、いかに『幸福』で『平凡』か分からない『のろい』の言葉を繰り返す。


 これで、この少年の未来は、謎の神によって定められた。


 先の決まった運命というのはなんと皮肉なものか。ノルンはやれやれと首を振った。


 占いグッズをその場に残し、少女は荷をまとめて町を後にしたのである。



(7)


 ノルンは占い師から、再び娼婦へと戻った。


 町から町へ移動するのは簡単だが、回っていくうちに国内では足りなくなる。

 この際だから少しだけ足を伸ばして、国境沿いまで行こうと決めた。


 そのためには旅の資金が必要だった。


 ノルンが誰かと寝床を共にすることは、もはや苦行ではなく、どちらかといえば好ましいものとなっていた。


 人間は、さまざまな感情を持っている。


 だが、他者が感じている現実を、こちら側が窺い知ることはできない。

 その一部を感じられる行為が、夜床を共にすることだと思う。


 生きものには大差がない。

 ノルンは、同姓だから、種族が違うからだとかと、相手を差別しないのである。


 ノルンがそういう少女だからなのだろうか、予定よりも多くの資金を得ることができた。


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