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 適当に流して終わろうとノルンは水晶に手をやった。



「それで、お客様。なにを占いましょうか?」


「俺は……いつ頃、死にそうだ」


 ノルンは相手の方を見た。口と鼻はマスクのような布で覆われていて見えない。


 だが、明らかに頬が痩けていた。


 唯一確認できる目元、眼球は沈み、濃い隈が広がっている。


 体つきだって細そうだ。手なんて皮ばかりで骨ばっている。


 しかし、それよりも、なによりも、ノルンは気になることがあった。



「あなたねぇ」


「なんだ」


「まだ子供でしょう?」


「なっ!?」



「いくつよ。親はいないのかしら」


「知らん。答えろ、俺はいつまで生きられる」



「そうね、あなたが正直に答えたら教えるわ」


「……」


「『星占い』は、ある程度、相手にも話をして貰わないといけないの」


 そんなことはでたらめの嘘っぱちだが、相手はどうやら信用したらしい。

 自らの指を折って「いち、に、さん」と数えている。


「十、あと二だ」


 十二歳といえば、遥香のやってきた年齢と同じ頃だ。


 つまり相手は、まだ子供。そう、ほんの子供。



 心がかすかに揺れた。

 ノルンはその動揺を隠すように厳粛な空気を纏う。



「そう、分かりました。では、次に名前と職業をいいなさい」


「そんなことまで必要なのか?」


「そうです。はやくっ、天の声が消える前に、言いなさい」


 天の声だと聖職者っぽいので、占い師や星ともの関係はあまりないだろう。

 だが、相手はこの矛盾にも気付かないようだった。



「俺はハイシェル、アサシンをやってる。それで、俺はいつ頃、死にそうだ?」


 ――アサシン。


 あまり聞き慣れない職業だ。


 しかしながら、詳細を聞かされなくとも、なんとなく想像できるのが『アサシン』の良いところだろう。


 日本語で言えば、暗殺者、または殺し屋。どうやら、この子供は人殺しを生業としてるらしい。


「分かりました。では、次に今まで何人殺したかいいなさい」


「えっ、んなこと覚えてねぇよ」


「ううん、では、何人殺したか分からないのですね?」


 少年は真剣な面もちで一度だけ頷いた。


 ノルンは心の中で深呼吸をした。


 相手は、人殺し。

 何人殺したかも覚えていないような、まごうことなき、殺し屋だ。


 まぁ、確認しなくても、人に剣先を向ける時点で普通じゃないと、ノルンは思っていた。


「暗殺者ということは、雇い主がいるのですね?」


「えっ、まぁ……そうだけど?」


「ふむ、なるほど。では、次に君の身の上を話しなさい」


「身の上ってなんだよ?」


「生まれ、両親のことなどですね」


「んで、そんなこと話すんだよ!」


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