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同時に、この世界や国の勉強をした。
幸いなことに時間は有り余るほどにある。
「ありがとう、ノルン。君のおかげですばらしい人生を送れたよ」
やせ細った神父がそんな嗄れ声を残して天へ旅立つと、ノルンは久々に太陽を拝むことになった。
シスターたちの顔ぶれはすっかり代わり、自分がミルクを与えていた乳飲み子が、赤子の面倒をみるほどには成長していた。
しかし、世界は相変わらずの残酷を見せた。
いくら見た目とはいえ、齢十五の少女が暮らしていくには奴隷の身分でなくとも代償が大きい。「ここに私の居場所はない」と悟った少女は、早々と教会を後にした。
ノルンは隣接した下町で、娼婦となった。
男を魅了する術は、嫌というほど体に染み着いている。
一番、簡単で、安全で、お金にも困らない方法だ。
そのうち、娼館で一番人気の娘という地位まで手に入れた。
館主のみならず、客からも自在に金銭を巻き上げられるような娼婦へ成長した頃。
ノルンは窓から夜空の月を眺めていた。
「娼婦の生活にも飽きたわ」
口から出たのは小さな不満だった。
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ノルンは、娼婦から野菜売りの娘へ、たまに聖職者としてパンを焼いて配ったり、鍛冶屋の助手や商家の売り子など、様々な職業を転々とした。
同じ町で何十年か過ごすと、場所を移動せねばならないので、仕事を辞めざるを得ないのである。
ずっと同じ容姿では、いつか『悪魔の子』と弾劾されてもおかしくはない。ノルンの体はどうにも我が儘で、融通が利かないようだ。
新しい町へ降り立つと、かならず町の隅々、特に路地裏などを視察した。
治安や、裏で界隈を牛耳る者たちの確認をするのである。
暇つぶしに性交事の相手をふらふら探していたら、「ちょいと」と誰かに呼び止められた。
声の主は怪しい老婆だった。
藤色のローブを着込み、顔の下半分は布で隠されている。
テーブル上には、水晶玉と髑髏が乗っていた。
「お嬢ちゃん、占いはどうだい?」
かなり怪しい。ノルンはため息を残して、その場を去ろうとした。
「お嬢ちゃんは、何か悩んでいるんだね。分かる、分かるよ。そう、お金が欲しいんだね!」
「残念だけど、お金は腐るほどあるの」
「なっ!? じゃあ、そうだ。父さんか母さんと喧嘩してきたんだね?」
「ふぅ、父と母は異世界に取り残されているようだけど」
「いせかい? なんだい、それは?」




