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 人々の叫びに混じって、お姉さんの笑い声がする。


「この世界は、おかしいの」


 だって。



 ――わたしが認められない世界なんて、

 ほっんとうに、おかしいじゃないっ!!




(6)


 難民たちへ紛れた遥香は、孤児として教会に拾われることとなった。


 『ハルカ』という名を呼ばれると、過去の傷が抉られる。思わず「名がない」という嘘をついた。



 神父様に、新たな名を与えられることになり遥香は女神と同じ名である、ノルンとして生きることになった。


 体に魔術の焼き印を刻まれた者は、どこへいっても侮蔑を受ける身分だ。

 教会の子供たちは、同じように親がいなくても奴隷印はない。


 遥香改め、ノルンは表向き、孤児という扱いだったが、中身を開ければ以前と大差のない生活を送っていた。



 昼間は、シスターにいたぶられながら子供たちの世話をして、夜になると神父様の激しい欲望を請け負った。


 それでも、ノルンとしての再出発は華々しいといえた。


 薄くとも貴族の血統を持つ教会の神父様は、町の中では顔の利く男であり、友人の中には、領主の息子や、騎士団のメンバーといった錚々たる面子が揃っていた。


 彼らと顔を合わせることができたのは幸運なことだった。過去、貴族屋敷の旦那様によってしっかりと躾られた少女を気に入らない男はいなかった。



 ノルンは徐々に宝飾品や金銭を与えて貰えるようになり、神父様の後ろ盾もあって、だんだんと教会内を牛耳るようになる。

 表向きは変わらぬまま、忙しなく働いたが、シスターたちに虐められ、蔑まれるようなことはなくなっていた。


 そして、ノルンの運命を決定づけていた負の要素がついに消える時がきた。



 騎士団の男から紹介された神官の力によって体の奴隷印が消され、最低な身分から解放されたのだ。


 ノルンはようやく、一般的な子供としての尊厳を手に入れた。


 しかし。


 すでに普通の子供としてのあり方を忘れていたのも、また事実である。





「……これは、さすがに変だわ」


 ノルンが十八歳を過ぎた頃、体の異変にようやく気がついた。


 十五の頃からいつまで経っても成長しない。爪や髪は伸びるが身長と体重は変わらず。


 胸とお尻が相変わらず小さいまま、子供のような肉体なのである。


「ノルンはいつまでも綺麗な子供のまま、変わらないでいて欲しいな」


 はじめは冗談のように言っていた男たちも徐々に不振な目を向けるようになっていた。


 だが、幸運なことに神父様はいつまでもノルンの味方だった。


「嫌なら表へ出なければいいよ」


 こうしてノルンは聖堂の地下室に閉じこもった。

 書物を読みあさり、ああでもないこうでもないと自分の体の研究を始めたのだ。


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