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+(7)+ ★ ☆



 気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。


「――かはっ」


 解放された時には、腹の内部が熱で満たされていた。理解できていないのに、絶望感のようなもので満たされる。


 男の分厚い指が、薄い胸を掴んだ。


「よしよし、ハルカ。今日から毎晩かわいがってあげようねぇ」




(5)


 奴隷の娘たちには、たまに薬が配られていた。


 遥香も何度かそれを飲まされたことがある。暗い顔をした先輩の娘が、教えてくれた。


 子供をつくらないために飲みなさい、と。屋敷で一年あまりを過ごした遥香にはその意味が理解できた。



「……こども。おかあさん、おとうさん」


 遥香は窓から様子を覗いている満月を、檻の中で泣きながら見つめることしか出来なかった。



 旦那様が遊び飽きた玩具には、労いを込めて豪勢な宴が開かれるという。


 使用人の裁量ですべてが決まる。そこに、生はなく、死があるのみだ。


 ある娘は縛られて馬引きに、ある娘は逆さ吊りで水攻めに、ある娘は生きたまま火で炙られた。


「はぁーあ、おまえの黒毛にも飽きたな」


 旦那様にそう言われた瞬間。相変わらず傷だらけになっていた遥香は、天井へ飛び上がる勢いで寝台から身を起こした。


「だんなさま! わたしは、まだっ。まだご満足させてみせます。かならず、だんなさまを――」


「はぁ、女は何度か身ごもると腹のあたりが病むらしい。そんなものを突き立てていれば病気(やまい)が移るやも知れん」


「わたし、わたしはまだ」


「おお? 気付かなんだか、いくらか薬をやったろう」


「……はっ」


 遥香は震える手で腹部を押さえた。「いくらか」という言葉に目の前が暗くなっていくようだった。




 数えて夜が三つ越えると晩餐会。遥香が死を迎える予定日だ。


「わたし、死ぬんだ」


 素っ裸なことにもすっかり慣れた。遥香は檻の中でぼんやりと鎖の数を数えていた。


 やる気がない。疲れた。死んだ方が楽だと思えるほど、それほど憔悴しきっていたのだ。



「いやだああああああああ」


 髪を掴まれた遥香の前には、鋭利な槍先の山が用意されていた。


 生きたまま、そこへ放り投げられるらしかった。何度か。そう。何度も、死ぬまでそうだ。


「やだあああああああ」


 やんややんやと手拍子が打たれる。必死にあらがっても逃げられないことを全身が悟る。


「ごわいい、たすげてえええ、おねがいいいい、やめでえええええ」


 これほどまでの恐怖は感じたことがない。確実に殺される。ただ死ぬだけではない、痛みに苦み、もがきながら死ぬのだ。


 遥香の小さな体は、いとも簡単に大人たちの手でに持ち上げられた。よいしょっというかけ声が聞こえるようように、軽やかに放り投げられる。



「うぎゃあああああああ」


 血しぶきと、獣のような咆哮が響いた。


 一度目。


 救出された。虚ろな顔のまま、持ち上げられて遥香は泣き喚いた。


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