肝試しと企みの顛末
「さー! 肝試しだー!」
校外学習の際に聞いたような調子で鈴はそう言った。俺たちはバーベキューの後片付けを済まし、展望台まで続く道の途中にいた。ここから展望台までは徒歩で十五分ぐらいらしい。まぁ丁度いい距離感だろう。
「二組に分かれてやるんだっけ?」
「そう。大人数だときょーふが減っちゃう」
「じゃあ、グッパーしようか!」
「グッとーパーっで……」
みんな、大きく手を振りかぶって、
「わっかれましょ!」
俺たちは最初の意図の通り、鈴と健吾、俺と彗と月夜野さんの二組になることができた。
「じゃあ、時間差でスタートしようか」
「どっち先行く?」
「んー、じゃんけんで決める?」
「いや、彗と俺は後で行くよ。二人が迷ったときに助けられるようにね。一応地図は覚えたし。な、彗?」
「まかせてよ」
彗は二人に向けてピースサインを送った。
「おっけー、じゃあ鈴いくか!」
「うん!」
二人はスマホのライトをつけながら暗い道を歩いて行った。
「よし。今のところはいい感じだな」
「だなだな」
「俺たちは五分後に出るでいいか?」
「だめ」
「だめ?」
彗はこちらを向いて胸の前に指でばってんマークを作った。
「今からいく」
「いまからですか……? それじゃあバレちゃう気が……」
「だいじょーぶ。二人のライトを頼りにしていけば見えるし、着いたらちょっと戻ってライトをつけて行けばいい」
「まあ確かに」
「でも盗み見なんて、悪い気が……」
「だいじょーぶ」
「な、なぜでしょう」
「だいじょーぶ」
「……はい」
彗は月夜野さんを勢いで押し切った。
「なら見失わないように、もう行こうか」
「ごーごー」
「はい……」
俺たちは急いで二人の後について行った。
「いやー、雰囲気あるね!」
「そうだな。ほんとに何か出そうだ。例えばあの影とか」
「ひっ! もうやめてよー」
「わりぃわりぃ」
少し距離があっても二人の声は通りやすく、会話はよく聞こえた。
「そういえばさ、健吾はさ……」
鈴が足を止めて切り出した。なんだか見ているこっちがドキドキしてくる。別に告白が始まるわけでもないのに。彗は相変わらずの無表情で、月夜野さんはあわあわと、顔を赤くしている。両手で見ないように目を覆っているが指の隙間からちらちらと見ているのが分かった。なんて古典的な。
「……健吾は今付き合ってる人はいるの?」
「ん? いないよ。というかまだ俺たち入学して二カ月だぞ? 付き合ってるほうが珍しいだろ」
「確かにそうだよね。あはは……」
「そういう鈴はどうなんだ?」
「私?」
「そう」
「私も付き合ってる人はいないかな」
「まあ難しいよね」
「そうだね」
「でも鈴はモテるだろ。もう何人かに告白されたって聞いたぞ」
「そんなことないよ。それを言ったら健吾もモテるでしょ?」
「俺なんてモテないよ」
「えーうっそだー! だって健吾はさ、か、かっこいいじゃん?」
「ありがとな。お世辞でもうれしいよ」
「お世辞なんかじゃっ……」
「でもさ、今は誰かと付き合う気はないんだ」
「……え?」
「俺、不器用でさ、部活と両立できる気がしないんだ。きっと部活で休日も少ないし、結構我慢させちゃうと思うんだ」
「そっか! まあ仕方ないよね。あはは、ごめんね突然変なこと言っちゃって。行こ! 彗たちが来ちゃうよ!」
鈴は健吾の声を遮るようにそういうと、少し速足で歩き始めてしまった。健吾は少しぽかんとした後、小走りで鈴に追いついた。何か言っているが、聞き取れない。
「ここまでかな。少し時間おいてから俺たちも行こうか」
「だね」
「ですね……」
それから俺たちの間には会話は少なく、普段おしゃべりな彗も何やら考え込んでいる様子であまり口を開かなかった。




