企みとバーベキュー
資料館は案外すぐに見終えた。なんだかんだ見るのが初めてなものも多く、しかも解説がついていたので思いのほか楽しめた。
資料館の外は赤らんできていて、そろそろ日が落ちることを表していた。俺たちは班で、貸出品のチェックする人と、食料と食器を運ぶ組、火をつける組に分かれるように言われた。
「えっと……私は、貸出品のチェックリストを先生に提出してきます」
「ありがとう、月夜野さん。じゃあ、俺と彗で食べ物とか持ってくるわ。健吾と鈴のほうが火つけるの上手そうだし」
「おっけー」
「おう!」
彗も俺の意図を察したのか横にぴょこぴょこと付いてくる。
「まさかわたしと二人っきりになりたかったの?」
前言撤回だ。何も分かっていなかった。
「ちげーよ」
「うん。しってた」
飄々と彗が答える。解せない。
「てか、バーベキューの後何する?」
「んー。まあ王道は展望台に行くとかー?」
「ま、そんなんか」
不意に彗が立ち止まる。
「どうした?」
彗の見つめる先にはこの公園の全体マップがあった。何か面白い場所でも見つけたのだろうか。
「ふへ」
何かをなぞるようにして、そのマップに触れている。しかも信じられないことにほんのわずかだが、彗の口角が上がっていた。
「ねね。この展望台さ……」
こんな顔するのか。いつもこんな顔をしてたらきっととてもモテるんだろうな。でもなんか雰囲気はかわいいよりもカッコいいが適切な気がする。カッコかわいいみたいな。
「ねー、きいてる?」
彗が俺の袖をクイクイと軽く引っ張ってくる。彼女の顔はいつもの無表情に戻っていた。
「あーごめん。どうした?」
「いやさー、この展望台までの道さー、使えると思わない?」
「何に」
「それはきまってるでしょー。肝試しだよ」
マップを見ると、展望台は山のような木々に囲まれているところに位置しており、そこまでの道は一本道なもののとても暗そうだ。たしかに肝試しにはピッタリのロケーションだろう。
「確かに、それだと健吾たちを二人っきりにもしやすい」
「でしょー?」
彗の無表情も少し得意げに見える。
「それで行こう。分かれるのは普通にグッパーで同じやつ出せばいいか」
「うむうむ。それでいこう」
俺たちは二人をお膳立てする計画を立てながら、食器と食材を取りに事務所のようなところへ行った。
「うえーい」
荷物をもって火起こし組と合流した。バーベキュー用コンロにはすでに火がついていて、いつでも肉を焼けそうだ。ほかの班の人たちも無事に火を起こせてそうだった。
「よっしゃ! 肉焼こうぜ、にく!」
「焼こうぜ!」
健吾がテンション高く音頭を取り、鈴もそれに同調する。それは、俺らのお膳立ては必要なのかと疑問に思ってしまうほど、仲が良く見えた。
「やこうぜ」
「野菜も一緒に焼こうな」
俺たちもそこに参加した。食材はすでに切られていて、こちらで何かする必要はなく、すぐに焼き始めることができた。俺は肉が焦げたりこびりつかないようにトングを使って肉を裏返す。
「もう食べていい?」
「まだ、火入ってないよ」
「えー、もうお腹ペコペコだよー」
「そうだぞ、朝日。俺らはお腹減ったんだ」
「お? じゃあこの火の通ってない鶏肉食べるか? 今夜は腹痛で寝られないぞ」
「朝日、玉ねぎをくれ」
「私もピーマンちょうだい」
「おう」
「えっと、わたしも野菜いただいてもいいでしょうか……?」
「おっけー、遠慮しないで食べたいときに言ってね」
「は、はい。ありがとうございます」
三人にいい感じに焼けてそうな野菜を取り分けた。
「あ、これいけそう」
俺がもう大丈夫かなと裏返したカルビを、彗はマイペースにひょいと取って、もちゃもちゃと口に運んだ。
「あ、ずるい! 私も!」
「俺もだ!」
「はいはい。順番ね」
俺は彗以外のみんなに、いい感じに焼けてそうな肉を取り分けた。
「あさひも食う」
もう一つのトングで彗がおれの紙皿に分けてくれた。
「ありがとう」
「ん。くるしゅうない」
久しぶりのバーベキューの肉はとてもジューシーで美味しかった。
「あ、そうだ。月夜野さん、ちょっとだけ時間もらってもいい?」
俺は隙をみて、鈴と健吾に悟られないように声をかけた。
「え、あ、はい……」
「この後、肝試しするんだけど、その時にしてもらいたいことがあって、できればでいいんだけど……」
俺は彗と話し合ったことをそのまま月夜野さんに話した。ある程度かいつまんだが、多少鈴のことを話してしまうのは協力して貰う以上仕方ない。




