校外学習の始まり
「校外学習だー!」
「うえーい!」
「うぇいうぇい」
「うえーい」
うえーい。って結局何なのだろう。自分で言いながらそう思った。まぁ楽しければいいか。横目に月夜野さんがのるべきなのか、おろおろとしているのが映った。すかさず鈴と彗が両脇に行って月夜野さんの手をあげさせた。
「う、うぇぃ」
ちょっと可愛いと思ってしまった。悔しい。
「よし、じゃあ行くか!」
俺は誤魔化すようにバスに向かって歩き出した。
校外学習の場である森林公園には歴史資料館から、バーベキュー場や展望台などの施設がある。今回は一泊二日で、まず歴史資料館へ行って施設の人から話を聞くらしい。ということで俺たちは今、キレイで大きな部屋で施設の人の話を聞いている。昔、ここは何で栄えていてどのような変遷があった、というような話だ。正直退屈だ。もうクラスの数人かは船をこいでいる。かくいう俺もかなり眠くなってきた。
「あさひ」
意識が落ちそうになっていると、不意に隣にいた彗に小声で話しかけられた。
「どうした?」
「あのひと、新婚さんだね」
彗の言うあの人とはおそらく今話している男性だろう。
「たしかに若いけど、何でそう思うの?」
「結婚指輪つけてるし、時々気にするように触ってる。だから慣れてない」
「よく見てるな」
「ふふ。将来はたんていかな」
「その時には助手にでもしてくれ」
「まかせろ」
「ねね。そういえばすずっていつ告るの?」
俺はその言葉で眠気で染まっていた脳が覚めた。
「誰に?」
「けんごに」
どうして彗が鈴が健吾のこと好きなのを知っているんだ? 普段の鈴には全然そんな素振りなかったのに。
「あれ、しらなかった? きいてなかった? 鈴ならあさひに協力もとめると思ったんだけど」
「いや、あってるよ」
「だよねだよね。びっくりしたー」
「なんで分かったんだよ」
「んー、ちょっかん」
「勘かよ」
「あさひ、かんを馬鹿にしちゃだめだよ。ちしきの集合体なんだから。しすてむわんってやつ」
「それはすごいな」
「でしょ。ぶいぶい」
彗は無表情のままこちらを覗き込むように見て、ピースサインを送ってくる。
「それで、いつ告るの?」
「今回の校外学習じゃ告白しないらしいよ」
「そうなんだ。ふんふん。へー」
俺の言葉を咀嚼するようにそう言葉を漏らした。この様子だと彗も健吾が好きということはなさそうだ。でも、なんだか彗の新しい一面を見られただけで、少し得した気分になった。
「以上です。ありがとうございました」
彗と話したおかげで眠気も飛び、あっという間に話が終わった。
「ふわぁー、この後実際に資料見に行くんでしょ? みんなでいっしょ行こー」
その場で片付けをしていると鈴と健吾がやってきた。二人とも寝ていたのか、まだ眠そうにしている。その後ろにひっそりと月夜野さんが来た。
「うん。いこいこ」
「あと一息、これが終わったらバーベキューだ」
「だな! よっしゃ、行こうぜー!」
「おー!」
「おー」
俺たちはドアを開けて部屋をでる。ドアは入る時よりも軽かった。




