前通りの次の日
次の日の彗は本当にいつも通りだった。いつも通りといっても、俺と付き合う前のいつも通りだ。何も変わらないはずなのにずっと心にとげが刺さったような違和感がある。
俺は教室で自分の椅子にもたれかかる。
「きたわ!」
昼休み昨日と同じ調子で先輩がやってきた。
「またですか」
「なによその顔、もっと嬉しそうにしなさい」
「言われてするものでもないでしょう」
「じゃあ言われなくてもしなさい」
そんな理不尽な。
「お昼ご飯ですか?」
そしてそこに月が入ってきた。
「そうだけど……」
「じゃあ私もご一緒してよろしいでしょうか」
「えー」
「いいじゃないですか」
「まあいいわよ」
「はい。よろしくお願いします。じゃあ行きましょうか」
「俺まだ何も言ってないんだけど」
月はさて問題でもあるか? と言わんばかりに首を傾げてくる。俺に拒否権はないようだった。俺はなら昨日のメンバーでと、彗の方を見た。もしかしたら何か話せるかもしれない。目は合った。しかし、すぐに逸らされた。隣にいた鈴がなにか言っているが、彗は首を振っている。
昨日の彗の様子。見たことがなかった。あんな感情を露わにした姿。俺は彗のこと何も知らないんだと思い知らされる。そもそも知ろうともしなかった俺にそんなことを思う権利なんてあるのか? 今更どうにかしたいと思うのは虫が良すぎる。人間はどうにも得られなかったものより失ったものの方に執着するという傾向があるらしい。今の俺はただそんな人間の本能的なものでそう思っているだけじゃないのだろうか。
「何してるのよ早く来なさい」
「はい」
結局俺の行動も考えも曖昧なまま、二人に連れられて学食へ行った。
「それで何があったの」
お互いに注文した飯を持って席に着いた時、突然先輩がそう言った。月は自分の弁当を広げている。
「なにがですか」
「彗ちゃんと何かあったんでしょ。みたらすぐに分かるわ」
この人案外鋭いな。
「あによその顔は」
「いたって普通の顔ですよ」
「そういうことじゃないわよ」
「そうですよ朝日さん。何かあったのなら言ってください。私との仲じゃないですか」
「え!? ふたりともそんな仲になってたの!」
いまいちしまらないな。
「ふふ。どうでしょう」
「ほんとにそうなの!?」
「月、先輩をからかうのは止めよう」
「はーい」
「君たち私をなんだとおもってるのさ!」
「尊敬する先輩ですよ」
「本当に?」
「はい」
「ならいいのよ。ってそうじゃないわ! あんた、全部洗いざらい吐きなさい」
その言葉は昼飯中に言うことじゃないだろ。




