二人の昔話
「中学の時さ、俺、父さんが交通事故で死んじゃったんだ。しかもその時は妹が生まれた時だったんだ」
「それは……」
「うん。とても大変だったよ。でも俺が一番嫌だったのはそれでみんなから距離を取られたことでさ。みんな、勝手に大変そうだからって何も誘ってくれなくなった。だから高校では今みたいな浅く広くみたいな友好関係にしようって決めたんだ。そうしたらそんなことは二度と起こらないって。だから放課後もバイトを増やして出来るだけ母さんの助けになれたらって思ったんだ」
「そう、なんですね」
どう思っているだろう。何を思っているだろう。また勝手に気を使われて距離を取られるのだろうか。
「朝日さん、妹さんが居たんですね」
「へ?」
月から発せられた言葉は俺が予想したどの言葉とも異なっていた。
「そしたら私たち、兄姉仲間ですね」
「まあ確かにそうだ、ね?」
「ふふ、どうしたんですか?」
「いや、そんな言葉が出てくるとは思ってもなくて」
「今度、私の妹と朝日さんの妹さんを合わせてみます?」
「それは、いいかもしれないな」
「はい! ぜひお願いしますね。妹も喜びます!」
グイッと俺の方に体を寄せて言う。俺は肩を持って元の場所に押して戻す。月はなされるがままにもとの位置に戻った。なんだかいい意味で肩すかしだった。こんなあっさりと話せるものだったのか。
「朝日さん、やっぱり朝日さんはすごいですね」
少しの静寂の後、ぽつりとそう言った。
「なにが?」
「朝日さんは嫌になっても人と関わることを止めなかったじゃないですか」
「え?」
「すごいですよ。本当に。私が中学で嫌がらせされた時はそんなこと思いもしませんでしたよ」
「いやがらせ?」
「はい。元々私と仲がいい子が嫌がらせを受けてたんです。とってもいい子だったんですよ。ちーちゃんっていうんですけど。それをどうにかしたくて色々やったんです。でも結局どじっちゃって私が代わりに嫌がらせを受けることになっちゃったんです」
月は懐かしむように空を見ている。授業中よりも辺りは静かで、僅かに校庭から声がする程度だ。
「別にいいと思いました。それでちーちゃんの嫌がらせがなくなるならって。けど、思ったよりしんどくて。何より辛かったのがちーちゃんが私を無視し始めたことでした。だからもう高校では誰とも関わらないようにしようって。どうせみんなすぐにいなくなっちゃうからって。でも、入学式の時に朝日さんに助けられてもう少し信じてみようと思ったんです」
「そうだったのか。だから……」
「はい。ここの人たちは良い人で、あの人たちが本当に存在していたのか分からなくなるほどです」
「彗も鈴も健吾もいい人だと思うよ」
「ですね。本当に」
「月はすごいな」
「わたしが? 朝日さんの方がすごいですよ」
「いや、月の方がすごいよ。人間、折れない人よりも折れてもすぐに立ち上がる人の方が強いんだ。父さんが言ってた」
「そう、なんですか。そうだと嬉しいです」
月はそう言ってふっとこちらを微笑んだ。




