表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が太陽を絆すまで  作者: ウパ戌


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/82

水面下での修羅場

「えー! この子もかわいいー!」


 突然現れた彗に先輩は俺の後ろから駆け寄って、背中に張り付きながら言う。


「む」


 彗はいつもの無表情な顔から少し眉を寄せた表情になる。


「あなたはなんて名前?」

「すい」

「すいちゃんね! 私は海っていうの」

「うみせんぱい。これからどこに行く、んですか?」

「えーっと……」


 先輩は俺の方をチラッと見る。本当にサプライズをしたいみたいだ。


「じゃあ私もついて行っていい、ですか? わたしでよければ、ですけど、相談とかものる、ますし」


 目を伏せながら先輩に訊いている。いつも通りにも見えるけれどよく見ると唇が震えてる。緊張してるのか?


「えー! いいの?」

「ぐっ」


 彗の状態とは裏腹に先輩は目を輝かせて、さらに乗り出す。同時に背中に柔らかい感触が伝わってくる。この人何を考えてるんだ! いや、何も考えていないからこうなってるのか。この慣れない感触と、鼻孔をくすぐる甘い匂いにどうしていいかも分からず、押された衝撃で中腰になったまま固まる。

 その俺の様子に気づいたのか、彗が鋭い視線を俺に向けた。


「先輩、重いっす」

「へ? あ、ごめん」


 おずおずと先輩が下がっていき、それに合わせて俺の背中にかかる負担が軽くなる。良かった。俺はとりあえず背筋を伸ばした。ただ、彗の視線は変わっていない。


「じゃあ彗もくる?」

「はい」

「えー、私も行きたい! 私も力になれます!」


 いつの間にか横にいた鈴もそれに乗ってくる。


「いいの?」

「はい!」

「じゃあ行こう!」

「先輩、もうこれ俺いります?」


 逆にこのメンバーになったことで女三男一でどこか行くなんて、少し肩身が狭いと思って俺は訊いた。


「そりゃあいるわよ!」


 先輩はそう威張ったと思うとすぐに俺の耳に顔を近づけてきた。


「むしろあんたがいないと困るのよ。どうやってこんな可愛い子と話せばいいのよ」

「先輩そんな思春期の男子みたいなこと言わないでくださいよ」

「うるさいわね」


 先輩はそう言って俺を肘でつつく。


「いいじゃない。私が奢ってあげるんだから。大人しくついてくればいいのよ」

「……うっす」

「よろしい」

「うみせんぱい」

「っ! はい!」


 俺と先輩の間に彗が入ってくる。必然的に三人の距離が近くなる。先輩はその彗の登場にびっくりしたのか後ずさりした。


「すぐ行く、ますか?」

「う、うん」

「じゃあ荷物とってく、ますね」

「自分も取ってきます」


 俺は少し不機嫌な彗の後をついていく。


「彗、別に先輩と何があるわけじゃないんだ」


 俺は自分であまりにも言い訳っぽいなと思いながらもそう言う。


「わかってる」

「……うん」

「あさひ、どんなかたちでも付き合ってるのはわたし」

「はい。分かってます」

「ん。わかればいい」


 そう残して彗は自分の席に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ