放課後、先輩の突撃
「待たせたわね!」
次の授業が終わり帰る準備をしていたところ、教室のドアがバンッと開かれた。そこには予想通り、先輩がいた。しかも仁王立ちで。うちの教室の人たちは突然現れた先輩に驚いているのか、みんな先輩の方を見ている。一部のものは昼休みぶりだったのですぐに視線を戻していた。けれど、一定の人はずっと見ているのでとても名乗り出にくい雰囲気だ。
本当に行きたくないかも。
「あれ、どこー?」
「あ! せんぱい!」
そこに鈴が近寄った。何をする気だ。
「きみは?」
「朝日と健吾の友達で、板倉 鈴っていいます! よろしくお願いします!」
「う、うん。西島 海です」
「海先輩!」
「うみせんぱい……」
なんか先輩はその響きに感動しているように繰り返して目を輝かせている。あんまり呼ばれ慣れていないのか? でも部活入ってるし、そんなことはないとは思うんだけど。
「どうしました? 海先輩」
「いやー、こんなに可愛い子に海先輩って言われるなんて思わなかったから」
「かわいいってそんなことないですよ。海先輩の方がずっとかわいいです!」
「えへへ、そんなに?」
「はい。とてもかわいいです!」
「ほんとに? ほんとに?」
「はい!」
あの人やっぱりちょろいな。両手で頬を抑えながらにやにやしている。
「先輩何してるんですか」
流石に見ていられなくなって俺は二人の間に入るように立った。
「あ」
先輩は自分のふにゃふにゃになっている顔に気づいたのか頬を抑える手を動かして顔を隠した。
「んでどこ行くんすか?」
「んんっ! それはお楽しみよ!」
首を振っていつもの感じを取り戻すと胸を張ってそう言った。
「いや、西島先輩、部活はどうするんすか?」
健吾が少し離れたところから声をかけた。先輩はその声にびくっとして俺の背中に自分の身を隠した。
「それは……」
俺は先輩の顔を見ると、その瞳はひどく動揺している人のそれだった。
「朝、信夫先輩ともめてたし行きずらいんじゃないか?」
「今日は特別なことはないし、それで西島先輩が行きやすくなるならいいっすけど」
「……ほんとに?」
先輩はひょこっと顔を出して訊く。
「でも休んだ方が行きずらくないですか?」
「……んぐ」
なんか余計なことを言ってしまったか。
「ま、まあ時には休んだ方が頑張れますよね」
「だよね!」
「は、はい」
「じゃあ行こ!」
先輩はグイッと俺の服を引っ張ってくる。
「分かりましたからちょっと待ってください。荷物取って来るんで」
「仕方ないわね。すぐに取ってきなさい」
俺はため息をつくと荷物を取るために足を出した。その時だった。
「ねえ」
彗が俺のすぐ目の前に現れた。




