先輩との密談
しかし、それから少し経っても手は離してくれないし、何かを話してくれる気配もない。
「どうしたんすか?」
「いやーなんだか自分の言動に恥ずかしくなってきちゃって……」
「いいから早く話してくださいよ。時間そんなないんで」
「あんた、少しは先輩に敬意を持ちなさいよ」
「示してますよ」
「どこがよ」
「敬語じゃないですか」
先輩は少し考えるように止まると、
「確かに」
と言って納得していた。この人ちょろいな。これ、健吾が言っていたのはただのこの子の暴走なのではないか。うん。きっとそうだ。
「それで話って何ですか」
「うん。さっきの人、えっと信夫っていうんだけど、私の彼氏、だったになるのかなあ……」
「ああ、先輩落ち着いてください」
「うん」
威張っている様子だったのが勝手に落ち込んでいった。なんかとてもかわいい人だ。
「そう、信夫が今回レギュラー外れちゃって、その腹いせに新しくレギュラーに入った赤堀くんにパス出さないようにしようって言ってて。それで、流石に駄目だと思ったから止めようって言ったんだけど、あんな感じになっちゃって……。わたし間違えてたのかなあ」
「いや、先輩は間違ってないと思いますよ」
「だ、だよね? 流石に良くないよね」
「逆になんでそんな人と先輩は付き合ってるんですか?」
「これでもね、普段は優しいの。だから今回は少し、ほんとに少し余裕がなくなっちゃてるだけだと思うの」
駄目だ。完全にDV彼氏に騙されている彼女じゃないか。
「先輩。その信夫先輩はどんな優しいことしてくれるんですか?」
「えっとね、プレゼントあげた時とかにお礼を言ってくれるの!」
胸を張って答える。それは普通なのでは。
「どんな感じでですか?」
「え? あー、サンキューって感じ」
もう確定じゃないか。
「先輩はプレゼントをもらってないんですか?」
「え、うん。私が付き合ってもらってるし。普通じゃないの?」
「先輩。今すぐ別れましょう」
「ええ⁉」
「さっきの話的にもう別れているも同然なので、あっちが復縁を迫ってきても断りましょう」
「えぇ……」
そう言って先輩は小首をかしげる。
「でも、悪い人じゃないと……」
「でもじゃないです。それでも好きっていうならあれですけど」
「んーでも確かに。改めて考えると、んー」
先輩がそう言いながら考え込んでいると、五分前を知らせるチャイムが鳴った。
「あ、もう時間ですね」
「そうね」
「まあもう会うことはないとは思いますけど、俺が言ったこと覚えておいてくださいね」
「うん。あ! また話を聞かせてあげるから連絡先を教えなさい!」
「え?」
「ほら時間ないから早く!」
そう言って先輩はスマホにQRコード表示させて見せてくる。仕方なく俺はそれを読み込んだ。メッセージアプリには「西島 海」というアカウントが表示された。
「一応よろしくお願いします。西島先輩」
「おう!」
なんか変なことになってきた。




