表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が太陽を絆すまで  作者: ウパ戌


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/82

部室棟奥での出来事

 そこから数日たったある日。

 俺が登校して校庭の横を通り過ぎようとした時のこと。部室棟の奥の方から騒々しい声が聞こえてきた。何やらもめているらしい。


「ねえ止めなって。大丈夫だよ。すぐに戻れるって」

「うるせぇな。お前に何が分かんだよ! ただ見てるだけのくせに」

「わたしはできるだけ信夫の力になろうって……」

「何が力になるだよ! どうせお前もレギュラーから落とされた俺を笑ってんだろ?」

「そんなことない! 信夫なら絶対また戻れるって」

「俺の事なんも知らないくせに知ったようなこというなよ! もういいわ、おまえ。マジでだるい」

「そんなこと……」

「今後俺に関わってくんな」


 男子(信夫と呼ばれていた)はそう言ってどっか行ってしまった。残された女子はその場でしゃがみ込んでしまった。俺が足を止めてみていたのは、男子がサッカーのスパイクらしきものを履いていたからだ。もしかしたら健吾が前に行っていたレギュラー落ちしてしまった先輩なのかもしれない。そうだったのなら、今しゃがみ込んでるのがマネージャーなのだろう。健吾の言いっぷりから少し厄介見たいな雰囲気を感じたが、見る限りはそうでもなさそう。


「その、大丈夫ですか?」


 俺はこのまま放っておくのもなんだか罪悪感があり、声をかけた。


「あなたは?」

「えっと、自分は一年の東 朝日って言います。なんかもめてる声聞いて」

「ああ、ごめんね。何でもないから放っておいて」


 顔を隠すように彼女は膝を抱える。


「大丈夫ですか? 話だけなら聞きますけど」

「いいって」


 体勢そのままに片方の手でシッシッと振ってくる。

 んー。まあそうだよな。できれば健吾とあの先輩の様子を聞きたかったんだけど。仕方ない。


「分かりました。じゃあ失礼します」

「え?」


 俺が振り向いて教室に行こうとしたところ、そんな声が聞こえた。


「どうしました?」

「いや、うん。別にいいんだけどさ。けどさ、普通はもうちょっと粘らない?」


 顔を上げて言う。そんなこと言われても。


「粘らないですね」

「えー……」


 なんだか呆れました、みたいな顔を向けられる。そっちが拒否したのに、なぜこっちが引いたら俺が悪いみたいにくるんだ。


「君は女の子が落ち込んでて、その傷心につけ込んで落とそうって魂胆じゃないの?」

「ないですね」

「じゃあなんで声をかけたのさ!」


 立ち上がって文句を言ってくる。めんどくさいな。


「ほっとくと罪悪感があると思ったんで。あとは一身上の都合です」

「何よ、一身上の都合って」

「一身上の都合は一身上の都合です。じゃあ失礼しますね」


 また俺は教室に行こうと足を滑らせる。


「いや、待ちなさいよ」


 けれど手を掴まれて阻まれてしまう。


「いいわ。話を聞かせてあげる」

「なんで上から目線なんですか」

「あんた一年でしょ? 私が二年だからよ」


 声をかけないのが正解だったのかもしれない。とても、とても面倒くさそうだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ