想定外の訪問者
次の日、俺は家でひかりに絵本を読んでいた。もう何回目か分からないほど読んだというのに毎回楽しそうに聞いている。飽きないのだろうか。そして昼飯を食べた後もひかりとの遊びは続いた。絵本はいったんいいらしい。俺はひかりとスマホで動画を見る。ひかりのお気に入りで、動画でいろんな動物を紹介しているチャンネルだ。
ピンポーン
ペンギンの動画を見ていると珍しく家のチャイムが鳴った。宗教かなんかの勧誘だろうか。モニターの方へ行き、見るとそこにいたのは彗だった。
なぜ彗がここにいるんだ。家の住所も知らないはずだ。なんで……。母さんか。
「なんでいる?」
『さよさんに呼ばれた』
「やっぱり母さんか」
『いれて』
「えー」
正直入れたくないのだが、母さんが来いと言ったのなら無下にもできない。
「にいにどうしたの?」
俺が悩んでいるとひかりが俺の服の裾をクイッと引っ張ってくる。
「あ! すいだ! どうしたのー?」
「なんか母さんが呼んだらしい」
「いれてあげないのー?」
だよなあ。家にあげたくないのだけれど、ここまできたらあげるしかないだろう。
「ちょっと待っててくれ」
『ん』
俺はとりあえず人をあげてもいいようにリビングを片付ける。普段来客なんてないのでリビングは完全に人様に見せられる有様ではない。
そこから三十分ほど片づけを行い(本当はもっと片付けたかった)、最低限見せられる部屋になった。
「ごめん。待たせた」
「ん。大丈夫。突然来たわたしがわるい」
玄関のドアを開けて彗を家に招く。
「なんもないけどゆっくりしてくれ」
「ありがと。これみんなで食べて」
彗はそう言って手で持っていた紙袋から菓子折りを取り出してきた。
「なんか彗には貰ってばっかだな。ありがとう」
「気にしないで。大したことじゃない」
「すい! えほんよんで!」
「ん。いいよ」
なんだか最近彗が俺のプライベートに食い込んできている。これが恋人の距離感なのだろうか。別に好き合っている恋人ではないけれど。
「にいにもきて!」
「はいはい。彗、今度別でお礼するから」
「ん」
ひかりがぐいぐいと彗の手を掴んでリビングのソファへ連れて行く。そんな彗は俺の手を掴んでいるので三人でそのままソファへ行くことになった。
「これ!」
座り直して俺と彗の間にピッタリ収まった。そして貰ったお気に入りの絵本を彗に渡す。
「まかせて」
彗は慣れた様子で絵本を開き、いつもの平坦な声ではなく、小さい子に読み聞かすナレーションのように読み始めた。
こんな感じで話せるのか。俺はさっきも自分で読んでいたというのに、その声についつい聞き入ってしまった。




