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月が太陽を絆すまで  作者: ウパ戌


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月との合流

 あれから探しても月は見つからない。

 隣にいるひっつく彗の足取りはさっきよりも遅くなっている。疲れとか慣れない下駄でつらいのだろう。


「彗、ここのベンチで座ってろ」

「だいじょうぶ。まだよゆう」

「いや、明らかに足が遅くなってるでしょ。指の間とか擦れて痛くなってたりしていないか?」

「……してない」

「ダウトだ」

「む」


 彗は不服そうな顔をしている。俺はそれをスルーして近くのベンチに座らせる。すぐに俺は膝をついて下駄を脱がせた。


「ほら、めっちゃ赤くなってる」

「ちがう」

「ちがくはないだろ」

「……ちがうもん」

「はいはい」


 俺はバックから絆創膏を取り出して赤くなったところを覆うように貼る。彗は観念したのか俺がやりやすいように足を少し浮かせてくれている。


「よし、これで多少は痛みが和らぐと思う」

「ん。ありがと。じゃあ再開しよ」

「ダメだって。あくまで応急処置なんだから休んでて」

「む……」

「大丈夫。すぐに見つけて戻ってくるから」

「……分かった」


 終始不服そうだったけれど、なんとか説得して俺は立ち上がった。



 

 果たして月は何処にいるのだろうか。彗の言う通りあんまり遠くに行っていないとは思うのだけれど。

 俺は小走りで参道の脇を探す。暑さもあいまって汗が滴る。スマホで時間を確認すると花火の時間まであと三十分だ。そろそろ見つけないと間に合わない。俺はもっと足を速める。見つからない。一体どこにいるんだ。いちゃつくカップル、仲良さそうな親子、大学生ぐらいの集団。月はいない。月なりに考えて花火が見える位置に移動したのだろうか。そしたら探す場所を変える必要がある。

 高校生ぐらいの女の子の集団、肩車している親子、まだ見つからない。屋台、ベンチ、ごみ箱、月の手がかりはない。はじめに買った焼きそばの屋台の近くのベンチに見覚えのある浴衣姿が見えた。俺は人波をかき分けて急いでそこに向かう。ある程度近づいてもその人は俯いていて顔が見えない。けれど、その浴衣とポニーテールからそれが月であることが分かった。


「ここにいたっ!」


 なんとか人混みを抜けて月の前にポンッと出てそう言った。見つかって良かった。俺の声に反応して顔を上げた月の目からは涙がこぼれていた。


「えぇっ! 大丈夫か?」


 えっと、なんで泣いてるんだ? どうしたらいい? 俺はとりあえずハンカチを渡そうとするが、月は受け取らずにそれどころかよりいっそうポロポロと涙を流し始めた。


「えっと……」


 やばい。本当にどうしよう。どうやったら泣き止んでくれるんだ? 変顔? 抱っこ? いや、これはひかりにやっていることだ。高校生には適応できない。


「あれ? す、すみませんっ。すぐに泣き止むのでっ!」


 月はそう言って止めようと手で目をこするが、まったく泣き止む気配はない。俺はどうしたらいいか分からず、持て余しているハンカチを使って月の涙を拭う。


「んむっ」


 月は手を止めてなされるがままにまるで子どもの様になっている。


「すみません。お恥ずかしいところを……」


 そこからしばらく拭って、やっと月の涙は止まった。


「それで、どうしたんだ?」


 俺は月の隣に座る。


「いや、そんな大したことじゃないです……」


 再び月が俯く。


「大したことはあるでしょ」

「本当に大したことなくてっ! そ、それよりも早く合流しましょう!」

 慌てた様子で月は言う。すぐに立つもんだから月は躓いて、転びそうになっていた。俺はとっさに月の手を掴んで転ばないようにした。

「す、すみません……」


 月は掴んだ手を見て、焦った様子で一度振り払おうとしたのか一度手を振り上げたが振り降ろすことはなく、おずおずと手を降ろした。


「とりあえず落ち着こ?」

「でも花火が……」

「じゃあゆっくり向かいながら話を聞いてもいいかな」

「……」


 月と黙って待ち合わせの場所に向かって歩き出した。

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