夏祭りの始まりとアクシデント
空は赤らみ、あたりには浴衣を着た人や小さい子が多く、楽しそうに神社の方向へ向かっているのが見える。
俺はそんな人たちを横目に待ち合わせ場所に向かって歩いていた。もちろん浴衣じゃない。需要すらないだろう。すれ違う人たちの恰好を見ながら歩くと、待ち合わせの時計台が見えてきた。
そこにはすでに俺を除いたいつもの四人がいた。俺は少し走ってそこに合流した。
「すまん待たせたか?」
「いや、俺もさっき来たところだ」
「ん。わたしも」
「こんばんわ」
「おっす!」
健吾はいつものジャージじゃなく、白Tシャツにデニムとシンプルな服装だった。女子三人は浴衣姿だった。彗は紫陽花の青が主体の浴衣で、いつもはおろしている髪は後ろで団子にしていた。鈴の浴衣はひまわりが描かれているもので、明るい鈴によく似合っている。髪は編み込んでいて簪をさしている。月は鈴とは対照的で、とても落ち着いた色合いの浴衣を着ていた。菫の花がちりばめられた柄で、三人で花をモチーフにするのを決めたのだろうか。月もいつもとは髪型が異なり、髪の毛を後ろに束ねている。所謂ポニーテールという髪型だ。
「三人とも浴衣よく似合ってるよ」
「ん。とうぜん」
「ありがと!」
「ありがとうございます」
「じゃあ行こうか! 腹減ったんだよなー」
「健吾はもう少し趣を感じた方がいいと思うよー」
そう言って歩き出す健吾に鈴がツッコミながら追いかけていった。俺はそんな二人を見ながらその後ろ姿を追った。
土保神社の参道は人で溢れかえっていて、その脇には提灯が等間隔に吊るされていてその明かりが屋台を照らしている。王道のチョコバナナをはじめとして、焼きそばやポテトなどの屋台が出店している。健吾はすぐに食べ物の屋台に飛びついてしまって、鈴もそれについて行って完全にはぐれてしまった。
「あさひ、わたあめ食べたい」
「わたあめ良いですね」
そんなことまったくお構いなしな様子で彗がそう言って、月が同調する。しかも彗にいたってはもう俺のすぐ隣で袖をつかんでいる。月と健吾はまだ何も知らないというのに。俺は月の反応が気になって横目でチラと見るが、この人混みが幸いして特に気にしている様子はなかった。
「あさひ、次はポテト食べたい」
「はいよ」
そうして、わたあめ、ポテト、フランクフルトと食べ物の屋台を回りながら、時々その間にある金魚すくと射的をやった。けれど三人とも特に何も取れずに敗北に終わってしまった……。ぽいはすぐに破れるし、コルクでできた球を当ててもいっこうに倒れる気配はなかった。
「ねえ」
つぎにカステラを食べようとしたとき、彗の袖を引っ張る力が強くなった。
「どうした?」
「つきがいない?」
え? 彗のその言葉にあたりを見渡してみると、確かに月の姿がなかった。




