デートとこれからの関係
「あさひ、つぎここ行きたい」
「りょうかい」
そう言って彗が指差したのはキラキラとしている服屋だった。あれから俺は彗に連れられて近くのショッピングモールに来ていた。
「んー、あさひはどっちがいい?」
彗は白いブラウスを右手に、ネイビーのニットポロを左手に俺の眼前に掲げてそう言った。
「どっちも似合ってるけど、あえていうなら右手の方かな」
「こっち?」
「うん。そっちの方が今の彗に似合ってる気がする」
少し唇をもごもご動かしてから、
「わかった」
と目を伏して言った。
彗はパタパタと店の奥まで行った。俺は店を出てすぐのベンチに座って彗を待つ。
「お待たせ。買ってきた」
そう言って買い物袋を掲げてくる。心なしか表情が自信げな気がする。
「ご飯いこ。お腹へった」
また俺の腕に自分の腕を絡ませてそう言った。そのまま連れていかれるように行ったのは二階にあるフードコートだ。夏休みだからか人が多く、こうしていないとはすぐはぐれてしまいそうだ。彗はそれを見越していたのかと一瞬思ったが、そんなわけはないなと頭を振った。
「何食べようか」
「ん。バーガーの気分」
「じゃあそっち行こうか」
レジの前にはすでにかなりの人が並んでいて、俺たちはその最後尾に並んだ。
「ハンバーガーなんて久しぶりだな」
「そうなの?」
「うん。外食なんて基本的にしないからさ」
「確かに。ファミレスいったときも全然頼んでない」
「まあそうだね」
「何かりゆうはあるの?」
「すこしね」
「……そっか」
俺はそれ以上その話題を追及されたくなかったので、正面を向いた。彗は少し絡める腕に力を入れた。
「ねえ」
「次にお待ちの方どうぞ」
「彗行こうか」
「……ん」
それぞれ注文を済ましてから、出来上がったセットをトレイをもって奇跡的に空いていた席に座った。
「それでなんで彗は俺と付き合うなんて言ったんだ? しかも無理に」
「ん。今回みたいなすれ違いをなくすには、人と関わるのが良いってあさひが言ってたから」
「まあ、言ったけど」
「より関わるにはだんじょ交際がこうかてき」
「分からなくもないけど」
彗はハンバーガーをかじる。おれもかじった。久しぶりに食べるジャンクな味はとても美味しい。
「それで、だめ?」
いつも通りのトーンで彗が言う。
「ダメって言いたいけど、そう言ったら彗はどうするんだ?」
「どうしよう」
「なんも決めてないのか」
「ん。別の人も考えたけど、びみょう」
「そっか……」
どうしよう。このまま放置することも可能だけど。
「分かった。いいよ」
「ほんと?」
「うん。けど条件がある」
「なに?」
「俺はひかりと遊んだり、バイトとかで時間を多く取れない」
「ん」
「あと、あんまり言い触らさないこと」
彗はポテトを手に掴んだまま頷く。
「最後に、お互い好きな人が出来たらいつでも解消できるようにしよう」
「分かった。それだけでいいの?」
「そうだな。うん。今はいったんそれだけ」
「ん。じゃあこれからよろしく」
そう言って彗はポテトを持っていない方の手を伸ばす。俺もそれに応じた。
「これ、あげる」
握手した手を彗は強めに握って、俺を手繰り寄せると、突然のことに開いていた俺の口にポテトを入れた。
「んふ」
彗はその俺の顔を見て少し口角を上げていた。ポテトは美味かった。




