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月が太陽を絆すまで  作者: ウパ戌


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34/54

夏休み初日、デートの始まり

 夏休みが始まったというのに俺の気分は晴れてはいなかった。原因は明白で、先日の彗との電話だ。結局あれから弁明はできず、かといって彗から連絡があるわけでもなく、そのまま夏休みに突入した。


「にいちゃどうしたの?」

「いや。なんでもないよ」

「えー、ほんとー?」

「ほんとほんと」


 膝の上のひかりが俺のスマホでゲームをするのを一度止めて俺の方を振り返って言う。俺はひかりの頭をわしゃわしゃと撫でて誤魔化す。


「ひゃー!」


 ひかりは楽しそうに声を上げた。


「あ、にいちゃなんかきたよ?」

「ん?」


 ひかりがそういって見せてきた画面には『水上彗』と表示されていて、応答と拒否の二つのマークが表示されていた。


「電話だ。ごめんね。ちょっとスマホ貸してね」

「うん」


『もしもし?』

『あさひ、おはよう』

『おはよう』

『きょうデートいこ』

『デート?』

『ん。調べたらこうさいしている男女はするって』

『そのことだけど……』

『うん。それも含めて』

『分かった』

『じゃあこの後、十時に駅前しゅうごう』

『了解』


 俺はスマホを閉じた。


「ごめん。母さん少し出掛けてくる」

「んー。分かった。楽しんできてね」

「うん。ありがと」

「にいちゃどっかいくの?」


 目じりを下げたひかりが俺の服を軽くつまみながらそう言った。


「ごめんね。少しにいちゃ出掛けてくるよ」

「やだ」

「ごめん」

「つれてって」

「ほら、ひかり。にいちゃに我儘言わないの」

「んー!」


 母さんが来てひかりを抱っこする。


「いや!」

「はいはい」


 そしてそのまま連れて行ってしまう。俺は再び心の中でひかりに謝ると、準備するために自分の部屋に行った。


 背の高い時計のオブジェのところに、俺が行く時にはもうすでに彗がいた。彗は前にみた格好とは全く異なっていた。いつものショートボブの髪は編み込まれていて、夏によく似合う白いワンピースで、とてもおしとやかな可愛い恰好をしていた。最初に目に入った時に彗だと思わなかったほどだ。正直言うと二度したし、見とれてしまった。

 俺がその場で突っ立ち、話しかけられないでいると、彗が俺に気が付いてこちらへ来た。


「おはよう」


 声を聴くと、いつもの彗のテンションで少し安心する。


「おはよう。今日はいつもと雰囲気が違くてびっくりしたよ」

「ん。頑張った。デートだから」

「……そっか。似合ってるよ」

「ありがと。あさひも良い感じ」

「ありがと」

「じゃあ行こ」


 彗はそういうと、俺の腕に自分の腕を絡ませた。少し汗ばんだ俺の肌に彗のさらさらの肌が触れる。突然のその行動に俺は固まってしまう。


「どうしたの?」


 彗のそのいつもの問いかけもいつもより柔らかいように思える。


「いや……」

「ん。話し合いの場はもうける。だからそれまではいったん」

「わかった」

「いこ」


 俺の腕をぐいっと引っ張る。その分、腕同士が密着する。俺はこれ以上は耐えられないと判断して、彗に歩幅を合わせて歩き出した。


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