月の一位奪取作戦
「という訳で勉強をします!」
月がやけに気合を入れて教室の俺の席まで来た。
「一応まだ時間はあると思うけど……」
「今回は鈴さんと赤堀さんに勉強を教えることはもちろんのことですけど、もう一つ目的があるんです」
いつにもなくハイテンションだ。仲良くなれたとポジティブにとらえた方がよいのだろうか。
「目的って」
「打倒、彗さんです」
そう言いながら月は教室で鈴と話している彗の方をチラチラと見ている。
「前回の彗は圧倒的だったからな」
「ですです。なので今回はどうにか勝ちたいんです」
「勝算はあるのか?」
「……」
「ないのか?」
「作戦はあるにはあります。けれどこの作戦はあまりにも性格が悪いというか……」
両の指をつんつんとしながら俯いている。本当にする人いるんだ。というか性格が悪い作戦ってなんだ? カンニングペーパーを彗に仕込んで零点にするとかか? 流石に性格が悪すぎるというかもはや軽犯罪に近いのではないのだろうか。何罪かは全く分からないが。
「その作戦というのは?」
「聞いても嫌いになりません?」
「ならないならない」
「なんかすごく軽いです……」
「大丈夫だよ。嫌いにならないって」
「ほんとうですか?」
「本当ほんとう」
「分かりました。私の考える作戦はこうです。まず、勉強するところはこの前の打ち上げしたファミレスあたりが良いでしょう」
「うん」
「そこで、勉強を開始します。必ずすぐに鈴さんがギブアップをすることでしょう」
「目に浮かぶように分かるな」
「そこで私は糖分を摂取しようと誘うわけです」
「?」
「その言い分は糖分を取った方が勉強の効率が上がると言えばいいでしょう。きっと鈴さんはのってくれるはずです」
「なるほど」
「ここからが重要で、そこで彗さんも誘うんです」
「なるほど?」
「彗さんもノリがいいので私の提案にのってくれるでしょう。それを繰り返すんです。あぁなんて恐ろしいことでしょう。これで彗さんに勉強の時間を与えず、家に帰ってからは摂取したカロリーに震えて勉強は手につかないことでしょう。朝日さん、どうでしょうこの作戦は」
「……」
月は普段の言動からは考えられないぐらい饒舌にそう述べた。なんか性格変わってませんか? まあでもこれぐらいの方がとっつきやすいか。
「それは……、恐ろしいな」
「ですよね……。だからこれを実行するのはまずいかなと」
「たしかに、でも俺は一位になるために手を尽くすのは当然のことだと思うよ」
「なるほど、確かにそういう考え方もできますね」
「むしろ一位を狙う人間の礼儀じゃないかな」
「確かにっ」
本当か? とりあえず面白いからこのまま月がどうなるか見守っておこう。
「じゃあ朝日さんも付き合ってくれますか?」
「勉強は付き合うよ。パフェは甘いものが少し苦手だから少量で勘弁してほしいな」
「それは、しかたないですね」
「なにがしかたない?」
突然鈴が俺の肩に手を置き現れた。予期しないことに俺の肩が上がった。
「びっっくりしたー」
「ん。ごめん。でも気になったから」
「そんな大したことは話してないよ。食の好みについて話してただけ」
「そ、そうなの」
「ふーん」
そう言って彗は自分の席に帰っていった。
「びっくりしました……」
「ね」
「でも私は負けずに今回は一位を取ります!」
「うん。頑張ってね」
「はい!」




