体育祭の幕間
「彗、どういうこと? 何が起きた?」
「ん? そのままのいみ」
「特別ってそういう?」
「どういう?」
「いや……」
「いま仲良くなりたい友達ひっとうはあさひ」
「なんで」
「あさひが一番壁があるから」
俺はその彗の言葉に答えられなかった。彗は別に答えを求めていなかったようでスタスタと順位フラッグの立っているところへ向かっていった。
俺と月はそこに取り残されたが、月はすぐに彗を追いかける形で順位フラッグのある場所へ向かっていった。俺はその場に居続けるわけにはいかないので応援席に向かった。
「彗とどんな関係になったんだ?」
すぐに健吾にいじられる。後ろにはその話に耳をそばだてているクラスメイト達の姿もあった。
「そうだよ。あさひ! ま、まさか付き合ってるとか!?」
「違うよ」
「じゃあどういうことなのさ」
「……彗が一番仲良くないと思ってるからじゃないか?」
「そうなの? 二人はグループでも結構仲のいいコンビだと思ってたんだけど」
「俺もそう思ってたけど。あんまなのか?」
「そうでもないけど」
「まあ彗はどこか別の次元でものを考えてる時があるからな」
「だねー」
健吾と鈴を含めて俺たちがそういう関係じゃないと知るとバラバラに戻っていった。そろそろお昼ご飯の時間だ。
昼休憩。俺たちは教室に戻って五人で弁当を広げていた。
「月ちゃんのお弁当めっちゃ美味しそうー!」
「少し食べますか?」
「え! いいの!?」
「はい。何が欲しいですか?」
「んー、どうしよー。迷うなー」
「なんでもいいですよ?」
「じゃあその卵焼き!」
「いいですよ」
そう言って月が卵焼きを一切れ鈴の弁当箱に置いた。
「じゃあ代わりにタコさんウインナーあげる!」
「ありがとうございます。とても可愛いですね」
「でしょー。これ私が作ったんだー」
「すず、ずるい。わたしも卵焼きほしい」
「まあ彗さん。彗さんにもあげますよ」
「いいの?」
「はい」
「じゃあ代わりに唐揚げあげる」
「そんな、良いんですか?」
「うむ。じゅよーときょうきゅう。もう卵焼きはきしょー」
「ありがとうございます」
そう言って二人はおかずを交換しあう。俺と健吾はもそもそと学食で買った弁当を食べながらその光景を眺める。
「んまっ!」
「うまうま」
「あはは、ありがとうございます」
「これ月ちゃんが作ったの?」
「はい。お恥ずかしながら」
「すっごいね! 今度私にも教えて! あんまり料理しないけどさ、やっぱり女の子としては作れるようになっておきたいじゃん?」
「いいですよ」
「ほんとに?」
「はい。といっても私自身そんな上手いわけじゃないですけど」
「そんなことないよ!」
「ん。これは誇っても良い美味さ」
「あの、その……ありがとうございます」
月は照れたことを誤魔化すように箸でおかずを口に運んだ。なんとも和やかな光景だ。
俺はその光景を見ながらずっとさっきの彗の発言が気になっていた。俺は彗と仲いいと思ってる。あの時、壁があると言われてすぐに反論できなかったのは少しだけ心あたりがあったからだ。榛名さんにあんまり自分のこと話さないと言われてしまってるし、遊びにもあんまり参加できていない。きっとそんなんでそういうような印象を受けたのだろう。
これから気を遣わせないように注意しないと。




