勉強会の終わりと少しだけ縮まる距離
「なあそろそろ勉強しないか?」
「えー、まだケーキ食べたいんだけど」
「勉強会なんだろ? そんな余裕あるのか?」
「むむっ」
「鈴さん、私もできる限り教えるので一緒に頑張りましょ?」
「月ちゃーん!」
「うぷっ。鈴さん、苦しいです」
鈴が月夜野さんに勢いよく抱き着いた。楽しそうで何よりだ。健吾と彗はもくもくとご飯を食べ続けている。そして机の上には勉強道具なんて一つも置いてない。こうなると思った。
「ほら健吾も彗も筆記用具出して」
「えー」
「えー、じゃない。やるんだよ」
俺はカバンから教科書とノートを取り出した。鈴たちもそれに続いてカバンへ手を伸ばした。
それから勉強会はなんだかんだあの雰囲気から一変、一時間ほどもすることができた。さきにマスターに行っておいてよかった。でもここまで勉強できるとは思ってはいなかった。なんだかんだ進まずにだらだら過ごす羽目になると思っていた。それも月夜野さんの存在が大きかった。飽き性な鈴や健吾をいい感じに励ましながら進めてくれた。おかげで二人の勉強も捗ってそうに見えた。その間、彗はマイぺースに教科書をペラペラと捲っていた。
「月夜野さん今日は本当に助かったよ」
「そんな私は何もしてないですよ。それに人に教えるのは自分の勉強にもなりますし」
「それだけじゃないよ。二人が勉強しやすいように色々工夫してくれていたでしょ?」
「気づいてました?」
「うん。二人があんなに勉強してるの初めて見たよ。よく人に教えてるの?」
「実は今年小学生になったばっかりの妹がいまして、家でよく教えているんです。それに勉強であっても楽しい方がいいですから」
妹のことを話す月夜野さんはとても優しい表情をしていた。にしても月夜野さん、妹がいるのか。どうりで教え方が上手なわけだ。俺と月夜野さんは帰り道、前を行く三人の後ろで会話する。
「そういえば東さんはなんでバイトを始めたんですか?」
「なんでか?」
「いやこんなに早くから始めてるの珍しいなって、思って」
「ああ、そんな大した理由じゃないよ」
「そうなんですか?」
「そう。ただ自分が自由に使えるお金が欲しくてね」
俺は用意していた答えを滞りなく述べた。
「すごいですね」
「え?」
想像していなかった返答に俺は固まってしまった。
「しっかり自立していてすごいと思います。お小遣い貰ってる私がなんだか情けない気持ちになってきます」
「そんなことないよ。それが普通だと思うし」
「ならよっぽど東さんはすごいですね」
「大したことじゃないって」
この人いつも自信なさげなのに全然譲らないな。
「二人とも何してるの? ほら行くよー」
鈴がこっちを見て腕を広げて言う。
「そうだぞ。はやくこい」
次いで健吾が言う。彗もこちらに来いと手招きしている。
「ちょっと待てって」
俺はそう三人に言った後、
「月夜野さん、行こっか」
「あ、はい!」
月夜野さんと三人のところへ早足で向かった。




