昼休みの攻防戦
「やっぱりまだ私は諦められないよ」
「いや諦めろよ」
昼休み、いつもの面子プラス月夜野さんで飯を食べている時に鈴がまだそんなことを言ってくる。
「なにがそんなに嫌なのさ!」
「別になにがっていうのもないけど……」
「ならいーじゃん!」
「ああもう、分かったよ! いいよ」
「ほんとに?」
「おう」
これ以上は断る方が面倒くさそうだ。それに金を落としてくれるならマスターも喜ぶだろう。
「……あの」
ため息をついている時、不意に袖をくいくいと引っ張られる。月夜野さんだ。
「ほんとうに嫌だったら、あの……言ってください。私も協力するので」
月夜野さんは小声で耳にささやくようにそう告げた。
「いや大丈夫だよ。本当に嫌だったらしっかり言うし。あいつらも本気で嫌がったら分かってくれるよ」
「ほんとうに?」
「ほんとうに」
「……わかりました」
そう言うとしゃんと座り直して自分で作ってきたのだろう弁当を食べ始めた。こう話すと初対面の印象が嘘かのように思う。ますます分からなくなった。一緒に校外学習した時も嫌な態度はなかったし、彼女はいったい何を考えているのだろう。今は嫌というより分からなくて少し気味が悪いという印象だ。
「ねね。パフェある?」
「小さいのならあるぞ。うちはパフェというよりケーキが主だな」
「ふむふむ。いーね、たのもう」
「ハンバーガーセットとかはないのか?」
「ねーよ。サンドイッチならあるけど」
「もう健吾、そもそも喫茶店は腹いっぱい食べるところじゃないよ!」
「そうなのか!」
「そうだよ」
「東さん、今日はバイトに入ってるんですか?」
「んや、入ってないよ」
「じゃあ安心して勉強できますね」
「そうだね」
「東さんは勉強は得意なんですか?」
「んー可もなく不可もなくって感じ。月夜野さんは?」
「私もそんなに勉強できる方じゃないけど、実は学年一位を目指しているんです」
月夜野さんは何かを思うように青い空を眺めている。
「なんで?」
「大した理由なじゃないんですけど。ずっと私、自分に自信がなくて。何かで一位を取れたらもっと自信がつくかなって」
そんなに容姿が良いのに自分に自信がないのか。どうしてだろう。
「えー! そんなにかわいいのに!?」
鈴がそんな俺の心を代弁するようにそう言う。
「かっ! か、かわいいだなんて……そんな。かわいくないです」
「もー! 前にも言ったけど月ちゃんみたいに可愛い子はそんなこと言っちゃいけないの! そしたら私はどうすればいいのさ」
「えぇ……。でも……鈴さんや彗さんの方が可愛いと思います」
「ありがと! でも月ちゃんは可愛いの!」
「でも……」
「でもじゃありません! まったく、これは長い間言い続けるしかないなー」
「わたしも協力する。まかせろ。一日にじゅっかいはいうね」
「そ、それはやめてください」
「えー」
「なあ朝日、これは俺らも言った方がいい流れか?」
「いや、やめとこう」
いちゃつく女子三人を横目に俺たちは飯を食い進めた。こんな調子で勉強は進むのだろうか。




