第9話:【炎上】パクリ配信者が俺の名を騙って魔族を煽ってる件。凸って物理で垢バンしてみたwww
「……はい、皆さんこんにちはー! ツヨシです。今日はね、ちょっと真面目な……というか、配信者として許せないことが起きたので緊急生放送を回しています。今、俺は魔界と人間界の国境付近にある『嘆きの峡谷』に来ています。ここ、本来は不可侵条約で平和なはずなんですけど……見てください、あの騒ぎ」
ツヨシが【魔導ライブ・カメラ】をズームさせると、峡谷の広場で派手な魔法を乱射し、非武装の下級魔族たちを追い回している集団が映し出された。
その中心にいるのは、ツヨシそっくりの金髪のウィッグを被り、安物の鉄パイプを「自撮り棒」と言い張って振り回している男。
男の名は『偽ツヨシ(自称:本物のツヨシ)』。
彼は「魔族をボコるのが一番バズる」という安易な考えで、過激なヘイト配信を垂れ流していた。
《魔法学園の女子:えっ、何あれ!? ツヨシ様、あんな酷いことする人じゃないのに!》
《聖女:ひどいです……。あれじゃただのいじめじゃないですか!》
《暗黒騎士バラン:……ツヨシ殿、我が同胞たちが侮辱されている。これは黙視できぬぞ》
「バランさん、落ち着いて。あんなの、配信者の風上にも置けない『パクリ野郎』です。画質も360pくらいでガビガビだし、何より……センスが古すぎる」
ツヨシのコメント欄は、偽物の暴挙に対する怒りと、本物の登場を待ち望む声で埋め尽くされていた。現在の同接数は、放送開始10分で800万人。対する偽ツヨシの配信は、炎上商法でようやく50万といったところだ。
「さあ、皆さん! 本物の『企画』ってやつを見せてやりましょう。今日のタイトルは……『【検証】パクリ配信者のカメラを物理で粉砕したら、どんな顔をするのか?』です! スパチャで足が速くなるバフ、ください!」
《王都の大富豪が【著作権保護のマナ(虹スパ 2,000,000G)】を投げました!》
《大富豪:パクリは万死に値する! 本物の力を見せてやれ!》
「虹スパ200万Gキター!! 脚の筋肉が……光速を超えたがってる! いくぜ、必殺……『ストライク・著作権侵害』!!」
シュンッ!!
ツヨシの姿が現場から消えた。次の瞬間、偽ツヨシの鼻先に、本物のツヨシが満面の笑みで立っていた。
「……あ、どうもー。生配信お疲れ様です。本物のツヨシです。コラボのお誘い、受けてないんですけど?」
「は、はあ!? 貴様、誰だ! 俺が本物のツヨシだぞ! ほら見ろ、この自撮り棒(ただの鉄パイプ)と、この最強の魔法――」
「魔法? ああ、それのこと?」
ツヨシは偽物が放とうとした火球を、素手で「パシッ」と掴み、そのまま握りつぶした。物理。圧倒的な物理。
「なっ……魔法を、握りつぶした……!? お、おのれ、これでも食らえ!」
偽ツヨシが鉄パイプを振り回して襲いかかるが、ツヨシは片手でカメラを回したまま、一切視線を逸らさずに鉄パイプを指一本で受け止めた。
「あのさ、偽物さん。配信者にとって一番大事なのは『画質』と『コンプラ』、そして『オリジナリティ』なんですよ。君の配信、画質悪いし、やってることがただの犯罪(器物損壊・暴行)だよね。運営(俺)から見たら、もう垢バン対象なんですよ」
「うるさい! 俺の方がバズれば勝ちだ! 視聴者もこういう過激なのを求めて――」
「求めてないですよ。みんなが求めてるのは……これだッ!」
ツヨシは【自撮り棒型魔導杖】を短く持ち直し、偽ツヨシが持っていた魔導カメラ(配信機材)に向けて一閃。
バキィィィィィィィィィィン!!
「あががががが!? 俺の……俺の高級魔導カメラ(中古)がぁぁぁ!!」
「はい、撮影終了。これが『著作権侵害の末路』です。皆さん、スクショの準備はいいですか? パクリ配信者が機材を壊されて半泣きになってる図、4K画質でお届けします!」
ツヨシは無慈悲にも、地面に這いつくばって泣き叫ぶ偽ツヨシの顔面にカメラを数センチまで近づけた。
《魔法学園の女子:スカッとしたー! さすが本物!》
《辺境のドワーフ:機材を物理でBANするとか、ツヨシらしくて最高www》
《視聴者数がついに1500万人を突破しました!!》
「さて、偽物さん。君にはこれから、この被害を受けた魔族の方々に謝罪動画を撮ってもらいます。あ、もちろんうちのチャンネルでね。再生数は全部俺の収益になるけど、文句ないよね?」
「……ううっ、はい……。逆らえません……」
偽ツヨシは完全に戦意を喪失し、ツヨシの指示通りに土下座謝罪を開始。その様子は、瞬時に世界中のトレンド1位にランクインした。
「はい! というわけで今日の凸配信、大成功でした! パクリはダメ、絶対! みんなも創作活動は正々堂々とやろうな! 次回は……『魔王と天使と最高神を並べて、1000ピースのパズルを完成させるまで帰れません配信』を予定しています! お楽しみに!」
「「「……(また俺たちが駆り出されるのか……)」」」
配信終了後、国境付近には平和が戻った。
ツヨシの自撮り棒は、今や悪徳配信者を裁く「正義の鉄槌」としても認識され始めていた。
異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。
ツヨシのチャンネルは、ついに世界の「倫理」と「秩序」さえも、コンテンツとしてコントロールし始めていた。




