第10話:【カオス】異世界初のオフ会開催!暗殺者の不意打ちが神演出すぎてスパチャが止まらないwww
「……はい、皆さんこんにちはー! ツヨシです! ついに来ましたよ、この日が! 今日は告知通り、魔王城前広場にて『第1回・異世界リスナー感謝祭&公式オフ会』を開催していまーす! 見てください、この絶景! 右を見れば重武装の暗黒騎士、左を見れば純白の翼を持つ天使、そして中央には王都から馬車で駆けつけた人間のリスナーたち! 異世界史上、これほどカオスで平和な光景があったでしょうか!?」
ツヨシが【魔導ライブ・カメラ】をぐるりと回すと、そこには本来なら殺し合っているはずの種族たちが、仲良く「ツヨシ公式うちわ」を振っている異常な光景が広がっていた。
ステージ上には、エプロン姿で焼きそばを焼く魔王と、慣れない手つきで綿菓子を作る大天使ミカエル、そして「くじ引きコーナー」の景品として展示されている(させられている)最高神の姿がある。
《魔法学園の女子:ツヨシ様ーー! 今、会場に着きました! 魔王様の焼きそば、意外と美味しいです!》
《辺境のドワーフ:天使が作った綿菓子が雲みたいにふわふわで草。これぞ神の業かwww》
《王都の門番A:最高神様が景品の『神の雫』、一回500Gは安すぎだろ! 並んでくるわ!》
「皆さん、楽しんでますかー!? 同接は現在、開始30分で驚異の2500万人を突破! 全世界の人口の半分くらいが見てる計算になりますね! はい、スパチャもありがとうございます! 今日の収益は全部、この後の『超大型・特効演出』につぎ込みますからね!」
ツヨシがハイテンションにマイクを握りしめているその裏で、会場の影には不穏な動きがあった。
異世界の秩序を壊し続けるツヨシを危険視した、裏社会の頂点『終焉の暗殺ギルド』の精鋭たちが、一般リスナーに紛れて潜入していたのである。
「……ターゲット、確認。あの配信者さえ消せば、世界は元の静寂に戻る。いくぞ、禁忌の暗殺術……『無音の断頭台』」
暗殺者のリーダーが合図を送ると、十数人の暗殺者が影から飛び出した。彼らの動きは魔法的なステルスに守られ、熟練の騎士ですら気づかないはずの「完全なる死の刃」が、ツヨシの死角から迫る。
ヒュンッ!!
鋭い刃がツヨシの首筋に届こうとしたその瞬間、ツヨシはカメラのレンズを調整しながら、ひょいっと首を傾げた。
「おっと! 始まりましたね、皆さん! 見てくださいこのキレのある動き! これですよ、俺が言ってた『公式・サプライズ演出』の暗殺者軍団です! 動きがマジでガチすぎて、一瞬本当に首が飛ぶかと思いましたよー!」
「なっ……!? 避けた……だと!? 偶然か……いや、これほどの至近距離を……!」
驚愕する暗殺者の腹部に、ツヨシは「あ、ちょっと失礼」と言わんばかりに【自撮り棒】を軽く突き出した。
「はい、ここで暗殺者さんが派手に吹っ飛ぶ演出! どんっ!!」
ドゴォォォォォォォン!!
「あがはっ……!?」
ただの自撮り棒による突き。しかし、虹スパで極限まで強化されたツヨシのフィジカルは、暗殺者を音速で吹き飛ばし、魔王城の城壁に巨大なクレーターを作らせた。
《王都の大富豪が【演出代(虹スパ 3,000,000G)】を投げました!》
《大富豪:今のワイヤーアクション、凄すぎるだろ! 300万Gだ、もっと派手なの見せてくれ!》
「虹スパ300万Gキター!! よーし、演出代追加だ! 暗殺者の皆さん、もっと気合入れてかかってきてください! 視聴者はもっと『命のやり取り』っぽいスリルを求めてますよ!」
「……くっ、ふざけるな! 演出だと!? 我らは本気で貴様の命を――」
次々と襲いかかる暗殺者たちの剣を、ツヨシはダンスを踊るかのような軽やかなステップで回避し、その都度、空いた手でリスナーからのスパチャを読み上げる。
「はい、『暗殺者の仮面が割れる演出助かる』ってコメント! 了解です、割りますね! どんっ!!」
バキィィィィン!!
「ぎゃああああ! 俺の伝説の防具がぁぁぁ!!」
「続いて、『空中に放り投げられた暗殺者が花火になる演出見たい』! オッケー、任せてください! いくぜ、必殺……『通報・強制打ち上げ(レポート・スターマイン)』!!」
ツヨシが暗殺者たちの襟元を掴んで空高く放り投げると、彼らは高度1000メートルまで急上昇。そこでスパチャのエネルギーが炸裂し、夜空に「ツヨシの顔」を象った巨大な魔法花火が打ち上がった。
ドドドドォォォォォン!!
《魔法学園の女子:きゃああああ! 綺麗ーーー!!》
《隠居した賢者:……あの中に本物の人間が混じっているとは、誰も思うまい……。ツヨシ、恐ろしい男だ……》
「はい、オフ会フィナーレ! 暗殺者の皆さんも、素晴らしいパフォーマンスありがとうございました! ギャラ(治療費)は後で魔王城の裏に置いとくんで、勝手に持っていってくださいねー!」
ボロボロになって空から降ってきた暗殺者たちは、もはやツヨシに対して殺意を抱く気力すら失っていた。彼らの目には、ツヨシが「魔力を隠した化け物」ではなく、「物理法則そのものを自分のチャンネル規約で支配する超越種」として映っていた。
「……勝てるわけがない。あいつは……あいつだけは、戦う対象じゃない。ただ『視聴』するしかないんだ……」
暗殺ギルドのリーダーが涙ながらにツヨシのチャンネル登録ボタンを押したその時、オフ会は最高潮の盛り上がりを見せていた。
「いやー、今日のオフ会、マジで神回でしたね! 同接は最終的に3000万人を突破! 皆さん、本当にありがとうございました! 最後に、魔王様と天使様と神様、ステージに上がってください! みんなで『配信者の誓い』、斉唱しましょう!」
「……なぜ我が、このような恥ずかしい歌を……(小声)」
「……神の名において……いや、ツヨシの名において……(絶望)」
「……明日から天界に帰れるだろうか……(虚無)」
世界の頂点たちが一列に並び、ツヨシの指揮でダンスを踊る姿は、異世界中の全種族に「もうこの男には逆らわないほうがいい」という教訓を刻み込んだ。
「はい! というわけで第10話、オフ会編完結です! 次回は……『【潜入】お隣の異世界(別ワールド)に勝手に凸して、勇者パーティーを実況解説してみた』をお送りします! チャンネル登録と高評価、よろしくな!」
ツヨシの自撮り棒は、今や一つの世界の理を完全に掌握し、次なる「コンテンツ」を求めて次元の壁さえも見据え始めていた。
異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。
ツヨシのチャンネルが、全次元を「おすすめ」で埋め尽くす日は近い。




