第5話:【24時間耐久】魔導エレベーター禁止!「天空の塔」階段で登り切るまで終われませんwww
「……ハァ、ハァ……。皆さん、生きてますか? 異世界唯一の限界ストリーマー、ツヨシです。現在、耐久開始から12時間。登った階段は……えーっと、3万段を超えました。膝が、膝が笑ってやがる……!」
ツヨシは今、呪われた古代遺産「天空の塔」の薄暗い螺旋階段にいた。本来なら魔導エレベーターで一瞬の頂上だが、今日の企画は【24時間耐久・自力登頂】。魔法による浮遊も移動支援も一切禁止。ただひたすらに、自分の足で一歩ずつ高みを目指すという、異世界住人からすれば「狂気の沙汰」としか思えないストイックな配信だ。
視界の端には、世界樹アンテナのおかげで過去最高密度のコメントが爆速で流れている。
《聖女:ツヨシ様、もう十分です! お顔が土色ですよ!》
《辺境のドワーフ:ガハハ! 足が止まってるぞ! ほら、追いスパチャだ、もっと苦しめ!》
《王都の大富豪が【煽りのマナ(青スパ500G)】を投げました!》
《大富豪:はい、ここからさらに1000段追加なwww》
「お、おい大富豪……! 青スパで追加注文すんじゃねぇ! 膝がガクガクなんだよ! ……ありがとうございます、追加1000段、喜んでぇ!!」
ツヨシは悲鳴を上げる筋肉にムチを打ち、一段、また一段と足を上げる。異世界の住人たちは、この「意味のない苦行」に、かつてないエンターテインメント性を見出していた。彼らにとって、強者は魔法で優雅に空を飛ぶもの。泥臭く階段を這い上がる姿は、新鮮を通り越して「未知の修行」に映っていた。
その時、塔の踊り場に不気味な音が響いた。
ガシャン、ガシャン……と音を立てて現れたのは、塔の秘宝を守る古代兵器「ガーディアン・ゴーレム」。鋼鉄の巨体に魔導レーザーを装備した、Aランク冒険者のパーティが全滅するレベルの怪物だ。
「……グオォォォ、侵入者……排除……」
「……あ? 誰だお前。……ちょっと、カメラの画角に入ってくんなよ! 今、俺は15万人の視聴者と『自分自身の限界』と戦ってる最中なんだよ!!」
ツヨシの怒りが爆発した。疲労による脳内物質の異常分泌に加え、タイミングの悪い「お邪魔キャラ」の登場に、配信者としてのプロ意識がキレたのだ。
《魔法学園の女子生徒:きゃああ! ガーディアンよ! ツヨシ様、逃げて!》
《世間知らずの聖女が【救済のマナ(赤スパ200,000G)】を投げました!》
《聖女:その鉄の塊をどかしてください! ツヨシ様の勇姿を邪魔させないで!》
「キタアアアア! 20万G!! 聖女様、ナイス防衛費!! スパチャ・ブースト……筋肉に直接ブチ込め(ドーピング)!!」
ドクンッ!! という鼓動と共に、ツヨシの全身に青白い稲妻が走った。疲労で沈んでいた細胞が一気に活性化し、ツヨシの身体能力が神の領域へとブーストされる。
「邪魔なんだよ、粗大ゴミがッ!! 必殺……『不適切コンテンツ・削除』!!」
ツヨシは【自撮り棒型魔導杖】を力任せに横一閃。
本来、物理攻撃が効きにくい鋼鉄のゴーレムが、バットで打たれたアルミ缶のようにひしゃげ、壁を突き破って塔の外へと吹き飛んでいった。その間、わずか0.5秒。カメラはツヨシの「必死すぎる形相」を完璧なアングルで捉えていた。
《王都の騎士A:……は? 今、ガーディアンを一撃で……?》
《隠居した賢者:魔法を一切使わず、純粋な身体能力だけで古代兵器を粉砕したのか。なんという不屈の求道者だ……》
《視聴者数が25万人を突破しました!》
ツヨシはゴーレムの残骸など見向きもせず、再び階段を登り始めた。
「……フゥ……フゥ……。はい、今のは演出じゃありません。ガチの事故です。皆さん、今のでまた心拍数上がっちゃったよ。スパチャでプロテイン代、よろしくね……」
その後も、現れるガーディアンたちを「撮影の邪魔」「ライティングが暗くなる」という理由で、ハエ叩きのように次々と自撮り棒で粉砕していくツヨシ。
そして開始から23時間55分。
ツヨシはついに、雲を突き抜けた塔の頂上、天空の祭壇へと辿り着いた。
「……着いた。……見て、みんな。……これが、世界一高い場所からの、日の出だ」
カメラが朝日に染まる世界を映し出す。ツヨシはその場に大の字になって倒れ込んだ。達成感と疲労、そして爆発的なスパチャの通知音に包まれながら、彼は静かに意識を飛ばした。
翌朝。ツヨシが目を覚ますと、そこは塔の麓にある神殿のベッドの上だった。
「……あれ? 俺、生きてる?」
「おお、目覚められましたか! 偉大なる求道者ツヨシ殿!」
神殿の司祭たちが、涙を流しながらツヨシの周りに集まってきた。
「魔法という『甘え』を捨て、自らの肉体だけで試練の塔を制覇し、邪魔する守護者たちをゴミのように扱いながら頂上へ至るその姿……! 我ら神殿は、貴殿を『不屈の聖者』として認定いたしました!」
「……え、いや、ただのエレベーター代ケチった企画なんだけど」
「謙遜を! 既に塔の入り口には、貴殿が自撮り棒を掲げて階段を登る姿の銅像が建立されております!」
「銅像!? 勘弁してくれよ、あの時の俺、顔が死んでたろ……」
さらに、王国の冒険者ギルドからは「歩くだけでガーディアンを破壊する移動災害」として特別警戒(と最大級の尊敬)が通達され、ツヨシの人気は宗教的な域にまで達してしまった。
「……よし、視聴者も増えたし、次の配信のネタ、決まったな。……『魔王城の結界、ハンマー一本で叩き割れるかやってみた』。これで行こう」
「さすがはツヨシ様! 次の『試練』も楽しみにしておりますぞ!」
ツヨシの自撮り棒は、今や「不可能を可能にする奇跡の杖」として世界中に知れ渡っていた。
異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。
次なる舞台は……いよいよ魔王のプライベートに突撃!?




