第18話:【オフ会】全リスナーが異世界に「同時転生」! 王都がパンク寸前www 日本人観光客に「逆観光」される魔王と聖女! 配信者、ついに世界の交通整理役に!?
「……はい、皆さんこんにちはー! ツヨシです! いやー、前回のAI暴走事件、マジで死ぬかと思いましたw でもね、怪我の功名というか……AIがサーバーを限界までいじくり回したおかげで、ついに『配信画面』の強度がゼロになっちゃいました! というわけで、今日からスタートします! 史上最大の参加型企画……『全リスナー同時転生・異世界オフ会』、ゲートオープン!!」
ツヨシが【自撮り棒】を空に掲げ、スマートフォンの「配信開始」ボタンをタップした瞬間。
王都の空に、YouTubeのロゴを象った巨大な次元の裂け目が出現した。
「……え、嘘。本当に行けるの?」
「マジだ! 画面の中に吸い込まれる……うわあああああ!!」
ドサドサドサドサッ!!
空から降ってきたのは、魔法の隕石ではない。
スマートフォンを握りしめた大学生、スーツ姿のサラリーマン、推し活うちわを持った主婦……現代日本の「リスナー」たちが、重力に従って次々と王都の石畳にダイブしてきたのだ。
その数、およそ3000万人。
「……ツ、ツヨシよ。これは一体、何の呪いだ? 王都の人口が10秒で1000倍になったのだが」
CEOデスクで書類に追われていた魔王が、窓の外を見て顎を外した。
広場は一瞬で「原宿の竹下通り」と「コミケの待機列」を足して2で割ったような地獄絵図と化していた。
「あ、魔王様! ちょうど良かった! 日本のリスナーたちが『本物の魔王だ!』って自撮り求めて並んでるんで、神対応お願いしますね! はい、同接……というか、この場にいる人数が3000万人突破ーー!!」
《日本の大学生:うわっ、本物の魔王じゃん! 意外とスーツ似合ってるwww 写真撮ってもらっていいっすか?》
《OL:聖女様ーー! スキンケア何使ってるんですか!? その魔法の光、美容に効きそう!》
《中学生:おい、この世界の土、成分分析したらレアメタル混ざってね? メルカリで売ったら億万長者じゃね!?》
「ちょ、ちょっと待ってください! 皆さん、押さないで! 私を『逆観光』しないでください! 聖水の試供品配るから列に並んでーー!!」
聖女がリスナーたちにもみくちゃにされ、サイン攻めに合っている横で、さらに異常な事態が起き始めた。
「……おい、この街の排水システム、非効率すぎねーか? 俺、ゼネコン勤務なんだけど、ちょっと土魔法使い集めて。3時間で下水道完備してやるよ」
「私は農林水産省の職員です。この畑、連作障害起きてますね。窒素肥料の魔法合成式、今からホワイトボードに書きます。これで収穫量500%アップです」
「ITコンサルです。王宮の書類管理、全部クラウド化(魔法通信)しましょう。魔導印鑑? そんなの廃止です。ハンコレスでいきます」
「……あ、あわわわわ!! ツヨシ様、助けてください! 日本から来た人たちが、勝手に王宮の制度を書き換えて、勝手に橋を建設して、勝手に株式会社を100万社くらい登記してます!!」
大天使ミカエルが、パンクした役所の書類を抱えて半泣きで飛んできた。
現代知識を持つリスナーたちが、各自の専門知識を活かして「内政チート」を同時多発的に実行した結果、異世界の文明レベルが10秒ごとに100年単位で進歩していく。
「おーい! リスナー諸君! 内政チートは1日3時間までって規約に書いたろ!! 文明がオーバーヒートして世界サーバーが落ちるだろ!!」
ツヨシは【虹スパ自撮り棒】を振り回し、セグウェイのような魔導具に飛び乗って王都中を駆け巡った。もはや「配信者」ではなく、巨大な「交通整理員」である。
「はい、そこの工学部チーム! 勝手に核融合炉(魔法式)作らない! 爆発したら撮れ高どころじゃないから! それからそっちの経済学者! 独自の仮想通貨『ツヨシコイン』を発行して王国の通貨価値を暴落させるな!!」
《王都の大富豪:ツヨシ殿ぉぉぉ!! 日本のトレーダーという種族が、我が全財産を空売りで溶かしていきました! 助けてぇぇぇ!!》
「あー、もうカオスすぎる!! 視聴者の皆さん、見てください! これが『民主主義(物理)』の力です! 神も魔王も、3000万人の『意識高い系リスナー』の前ではただのモブキャラですよ!!」
ツヨシのカメラは、もはや一つの国の崩壊と再生を同時に捉えていた。
王都の至る所に「コンビニ」と「タピオカ屋」が魔法で建設され、魔物たちはリスナーたちの「効率化コンサル」によって、強制的に「デリバリー・サービスの配達員」として雇用されていた。
「……はぁ、はぁ。交通整理だけでMPが枯渇する……。でも、同接が……現実の人数含めて5億人突破!! っしゃあ! 混乱すればするほど、収益が跳ね上がるぜ!!」
「ツヨシ!! 笑っている場合か!!」
最高神会長が、天界からボロボロになって降臨してきた。
「天界にまで『観光客』という名の日本人が押し寄せてきたぞ! 『神様の家、内見させてください』とか『この雲の権利、NFTで買えますか?』とか……我が聖域がメルカリの出品会場になっているのだ!!」
「最高神様、それも『時代の流れ』ですよ! ほら、リスナーのみんな! 最高神様と握手会、1回1万Gでーーす!!」
《日本の転売ヤー:最高神の握手券、プレ値つくぞ! 100枚買い占めだ!!》
「「「「ぎゃああああああああ!!」」」」
異世界の住人たちが、現代人の「飽くなき欲望と知識」に圧倒され、悲鳴を上げる。
かつてツヨシ一人が暴れていた世界は、今や「3000万人のツヨシ予備軍」によって、完全にハックされていた。
「……よし! 全員静かに!!」
ツヨシは虹スパの魔力を最大出力で放出し、王都の全域に「強制ミュート」の魔法をかけた。
「オフ会参加者の諸君! この世界を快適にするのはいいけど、魔法で『Wi-Fi完備』にしたせいで、原生生物のドラゴンが電磁波で寝不足になってるんだよ! 環境保護もエンタメのうちだ! 今から全員、強制的に『ゴミ拾いクエスト』に参加してもらう! 拾ったゴミの量に応じて、俺とのチェキ券を配布するぞ!!」
「「「「うおおおおおおお!! チェキ券きたぁぁぁ!! ゴミ拾うぞぉぉぉ!!」」」」
一瞬で3000万人のリスナーたちが、高性能な清掃ロボットのごとき動きで王都をピカピカにし始めた。
その統率力、その熱狂。
「……ツヨシよ。お前はもはや配信者ではないな。……神か、あるいは史上最悪の独裁者か」
魔王が、リスナーにプレゼントされた「現代の栄養ドリンク」を飲みながら呟いた。
「魔王様、人聞き悪いなぁ。俺はただの『窓口』ですよ。二つの世界を繋ぐ、一番わがままな窓口。……さあ、リスナー諸君! 街が綺麗になったところで、第18話のフィナーレだ! 全員で、この異世界に『高評価ボタン(物理)』を建立するぞ!!」
ツヨシが合図すると、3000万人のリスナーと異世界住人たちが一斉に魔法を放った。
夜空に、黄金に輝く巨大な「グッドボタン」が具現化され、それは新たな太陽のように世界を照らした。
「はい! というわけで第18話、オフ会編は大成功(?)でした! 明日からは、日本から持ってきた『コンビニ弁当』と『魔界の特産品』の物産展を開催しまーす! 楽しみにな!!」
ツヨシの自撮り棒は、今や二つの世界を繋ぐ「架け橋」どころか、数千万人の欲望を一点に集約し、文明を強制進化させる「アクセル」そのものへと化していた。
異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。
――ツヨシのチャンネルは、もはや一つの宇宙の「人口密度」さえも、視聴者数でコントロールし始めた。
「さて、次回ですが……『【緊急事態】異世界の物価が100万倍に!? 現代の転売ヤー軍団 vs 魔王軍、経済戦争勃発!!』をお送りします! チャンネル登録してないと、君の口座も凍結されちゃうかもよ!?」




