第16話:【課金】異世界の通貨価値が崩壊! スパチャで「重力」を買ってみたwww 敵を2頭身にして完封! 物理法則は買う時代です!
「……はい、皆さんこんにちはー! ツヨシです! いやー、前回の『株式会社ツヨシ・エンターテインメント』設立から、うちの株価(再生数)がエライことになってます! というわけで、今日は株主の皆さんに還元すべく、とんでもない新機能を実装しました。名付けて……『リアルタイム・ワールド・エディット(課金制)』です!!」
ツヨシが【魔導ライブ・カメラ】を構える先には、かつて世界を恐怖させた「魔王軍」の生き残りたちが、最後の意地を見せようと集結していた。数万のオーガやガーゴイルが、ツヨシの建設した超高層ビルを包囲している。
「ツヨシぃぃぃ! 貴様のせいで我らの給料は『やりがい』という名のデジタルデータに変換され、魔界の通貨は紙クズになった! 今日こそ、その自撮り棒を叩き折ってくれるわ!」
敵の将軍が剣を掲げ、全軍に突撃の合図を送る。だが、ツヨシは一歩も動かない。
「はい、皆さん見ましたか? 今の将軍さんのセリフ、ちょっと威圧的すぎますよね。というわけで、視聴者の皆さん! 画面右下の『物理法則ショップ』を開いてください。皆さんのスパチャの総額に応じて、今この場のルールを書き換えます!」
《魔法学園の女子:えええ!? スパチャで世界が変わるの!? とりあえず1万Gで『重力増加』ポチッ!!》
《王都の大富豪:ほう、面白い。100万Gで『敵の防御力低下』だ。いや、もっと劇的なのがいいな……》
《日本の社畜:給料日だから奮発しちゃうぞ! 5万Gで『敵の等身変更』!!》
「おっと! 投げ銭、一気に1000万G突破! ありがとうございます! 物理法則の書き換え、承認されました! 処理開始!!」
ドォォォォォォォォン!!
次の瞬間、突撃していた魔王軍の先頭集団が、地面にめり込んだ。
「ぐわぁぁ!? な、なんだ……体が重い! 重力が……通常の10倍、いや、100倍になっているのか!?」
「はい、100万G達成特典『局所的100倍重力』です! 悪いことする奴には、地球の裏側まで土下座してもらいましょうねー!」
ツヨシがカメラを向けると、数千のオーガたちがカエルのように地面に這いつくばり、一歩も動けなくなっていた。しかし、さらにスパチャの勢いは加速する。
「お、1000万Gの大台キター!! 項目は……『敵の2頭身化』! 皆さん、趣味悪いですねー! でも、撮れ高のために採用です! どんっ!!」
パフッ。
間抜けな効果音と共に、殺気立っていた魔王軍の将軍や兵士たちが、一瞬にして頭でっかちの、可愛らしい「2頭身キャラ」へと変貌した。
「な、ななな、なんだこの姿は!? 腕が届かん! 剣が重すぎて振れん! しかも声まで高くなっているぞ!!」
「てちてち……てちてち……(歩く音)」
《聖女:……プッ、あははは! あの凶悪な将軍様が、マスコットキャラクターみたいに! 可愛いかも……!》
《隠居した賢者:物理法則の根幹である『質量』と『造形』が、一人の配信者の投げ銭によって上書きされた……。神よ、これはもう世界の末期ですぞ……》
「はい、さらに追加スパチャ5000万G!! 特典は……『敵の武器を全部ピコピコハンマーに変更』! 了解です!!」
バコッ、バコッ。
魔王軍が必死に振り下ろす伝説の魔剣や暗黒の斧が、一斉にカラフルなプラスチック製のピコピコハンマーに変わった。2頭身の化け物たちが、地面に這いつくばりながらピコピコと音を鳴らしてツヨシを叩く図。
「あー、痛いなー(棒読み)。皆さん、見てください。これがかつての脅威、魔王軍の成れの果てです。もはや殺傷能力ゼロ。ただのゆるキャラ軍団ですね!」
ツヨシはポップコーンを食べながら、もはや戦いとも呼べない「レクリエーション」を実況している。
「……ツヨシ殿、もうやめてくれ。我らはプライドを……魔族としての誇りを、これ以上汚されたくない……(ピコッ)」
「プライド? ああ、それもショップで売ってますよ。1億Gで『誇りを取り戻す(ただし30秒だけ)』。でも、今の人気投票1位は『敵全員にアイドルダンスを踊らせる』ですから! 残念!!」
《王都の騎士:……正直、ツヨシ様が戦わなくても、俺たちのスパチャだけで世界が救えることが判明したな》
《日本の社畜:課金するだけで魔王軍を無力化できるなんて、最高のソシャゲより楽しいわwww》
現在の同接数は3億人を突破。異世界の通貨価値は、もはや「ツヨシの配信でのレート」でしか決まらなくなっていた。金貨の山よりも、ツヨシの画面に流れる「虹色のエフェクト」の方が、よほど強大な力を持つのだ。
「よし、本日のメインイベント! 累計スパチャ10億G突破特典……『全軍、強制ログアウト(強制送還)』!!」
ツヨシがカメラに向かって指を鳴らす。
すると、地上の魔王軍だけでなく、空を飛んでいたガーゴイルまでもが、青いデジタル粒子となって分解され、どこか遠くの(おそらく再教育用の)ダンジョンへと転送されていった。
「はい、魔王軍の残党、課金パワーで完封です! お疲れ様でしたー!!」
静まり返った戦場。ツヨシはビルの屋上で、自撮り棒をマイクのように回した。
「皆さん、これが『株式会社ツヨシ・エンターテインメント』が提案する新しい世界の守り方です。剣で戦うのは古い。これからは、推しを応援して、嫌いな奴には『課金デバフ』をかける。これが真の民主主義、そして真の平和ですよ!」
背後では、最高神会長が「……世界の理(物理法則)が……投げ銭で売買されている……。我が作った世界が、ただの有料オプションに……」と、膝をついて泣いていた。
「最高神会長、泣かないでくださいよ! 今日の収益で、会長の玉座に『自動マッサージ機能(課金限定)』追加しときますから! あ、聖女広報部長! 明日のプレスリリースの準備お願いします! 内容は『【重大発表】空の色を視聴者の投票で毎日変える機能実装』です!」
「……かしこまりました。……もう、何色になっても驚きません(虚無)」
ツヨシの支配は、もはや組織すら超え、世界の「物理学」そのものを資本主義の奴隷へと変えてしまった。
異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。
――ツヨシの「物理削除」は、ついに「重力」や「空間」さえも、残高不足で削除できるレベルに達していた。
「さて、次回の配信ですが……『【検証】もしも世界をAIに丸投げして、俺が寝てる間に勝手に実況させたらどうなるのか?』をお送りします! 楽しみにな!!」




