第15話:【組織化】異世界を株式会社にしてみたw 魔王CEOと最高神会長がブラック労働!? ダンジョンのモンスターがストライキしたので「やりがい」で論破してみたwww
「……はい、皆さんこんにちはー! ツヨシです! いやー、前回の『異世界2.0』アップデートで世界がWi-Fi化してからというもの、仕事が増えすぎてパンクしちゃいました! というわけで、今日は重大なプレスリリースがあります。本日、私ツヨシは……『株式会社ツヨシ・エンターテインメント』を設立しましたーー!! 拍手!!」
ツヨシが掲げる【魔導ライブ・カメラ】の前には、バブル期の地上げ屋も真っ青な成金趣味の超高層ビル(魔法建築)がそびえ立っていた。看板には、自撮り棒をクロスさせた社章が黄金に輝いている。
「これからは組織の時代です。見てください、うちの豪華役員陣! CEOには、現場指揮に定評のある魔王様! 会長職には、天下り……じゃなくて、権威担当の最高神様! 広報部長には、顔面偏差値100の聖女様! そして物流担当には、六枚羽で速達可能な大天使ミカエルさんです!」
カメラが横にスライドすると、オーダーメイドの高級スーツを着せられた魔王が、胃を押さえながらデスクに座っていた。その隣では、最高神が「名誉会長」と書かれたタスキをかけ、虚空を見つめている。
《魔法学園の女子:えええええ!? 異世界のトップたちが全員ツヨシ様の社員に!?》
《王都の騎士:魔王様が『進捗どうですか?』って部下に詰め寄ってるの見たくなかったwww》
《日本の社畜:聖女様が広報……。その会社、ブラックの香りがするけど入社したいです……》
「さて、我が社の主力事業はこれ! 『ダンジョンのテーマパーク化』です! 今まで冒険者が命をかけて潜っていた危険なダンジョンを、安全・安心なアトラクションとしてリニューアルしました! 入場料を取って、モンスターには『接客』を徹底させてます!」
ツヨシが視察に訪れたのは、かつて「死の迷宮」と呼ばれた最難関ダンジョン。しかし、今の入り口には電飾が並び、「待ち時間:120分」の看板が掲げられていた。
「おい、スケルトン! 骨をカタカタ鳴らすのはいいけど、もっと『お客様を歓迎するリズム』で鳴らせって言っただろ! 笑顔(?)が足りないぞ!」
ツヨシが説教していると、奥からプラカードを持ったモンスターの一団がやってきた。リーダー格のレッドドラゴンが、不満げに鼻から煙を吹く。
「……ツヨシ社長! もう限界だ! 俺たちモンスターにも人権……いや、魔権を認めろ! 24時間365日、冒険者の相手をさせられて、残業代(魔石)も出ないなんてあんまりだ! ストライキを決行するぞ!」
《日本のネット民:モンスターがストライキwww 完全に労働問題で草》
《隠居した賢者:ツヨシよ、やりすぎだ。モンスターにも休息は必要……》
「あー、ストライキね。皆さん、見てください。これが今の若手モンスターの現状です。すぐ『権利』とか言っちゃう。レッドドラゴン君、ちょっとこっちおいで」
ツヨシはカメラを自分に向け、ドラゴンの肩(?)を組んだ。
「君さ、何のために生まれてきたの? 冒険者に剣で刺されて、人知れず消えていく……そんな虚しい人生が良かった? 今の君を見てよ。1日何万人のリスナーが君のブレス(演出用)を見て、『かっこいい!』『迫力ある!』ってスパチャを投げてくれてる。君は今、この世界で一番輝いている『スター』なんだよ?」
「……えっ? ス、スター……?」
「そうだよ! 配信で輝いて、みんなに夢を与えてる。その瞬間の快感、残業代なんかよりずっと価値があると思わない? 自分の魂を安売りしちゃダメだよ。君のやりがいは、数字じゃ測れないんだ!」
「……そ、そうか。俺は、輝いているのか……。パケット制限とか気にしてる場合じゃなかったのか……!」
「そうそう! ほら、リスナーのみんなからも『ドラゴンさん、今日も出勤助かる』ってコメント来てるよ! これが君の報酬だ! さあ、持ち場に戻って、最高のブレスをお客様にプレゼントしてこい!」
「うおおおおお! 燃えてきたぜ! 俺は、俺のやりがいのために焼くぞーー!!」
ドラゴンの咆哮と共に、モンスターたちがやる気(と勘違い)を爆発させて職場へ戻っていく。それを見送るツヨシの顔は、完全なる「ブラック企業のカリスマ経営者」そのものだった。
《日本の社畜:……うわああ、見覚えのある論法だ……! 魂が削られる……!》
《聖女:……ツヨシ様、今の言葉、私にも刺さりました。私、昨日から一睡もせずに広報活動してますけど、やりがい、あります……(目が虚ろ)》
「よし、労働問題も『やりがい』で解決! 経費削減成功です! 役員の皆さーん、次の案件いきますよ! 『天界の雲の上にショッピングモール建設』と『魔界の溶岩風呂を温泉リゾート化』の承認、ハンコ押してくださいね!」
「……ツヨシよ。我は魔王として、一応はこの世界の再興を願っていたのだが……。今やっているのは、ただの『搾取』ではないか?」
「魔王CEO、何言ってるんですか。これは『共創』ですよ! ほら、株価(再生数)上がってるから、最高神会長も喜んでるでしょ?」
「……うむ。我はもう、ハンコを押すだけの機械(神)になったのだ……。考えるのをやめた……」
「いいですねー、最高神会長! 隠居感出てますよ! はい、今日の同接、ついに2億人を突破! 株式会社ツヨシ・エンターテインメント、時価総額はもはや無限大です!」
ツヨシはビルの屋上から、テーマパーク化した世界を見下ろし、黄金の自撮り棒を空に掲げた。
「全次元の住人の皆さん、そして現代日本の皆さん! この世界は、俺の会社が管理する『最高のエンタメ空間』になりました! 明日からは、全モンスターに『推し活推奨キャンペーン』を導入します! 働け、踊れ、そしてバズれ! 株式会社ツヨシ・エンターテインメント、社員大募集中(※やりがい搾取につき返品不可)です!!」
ツヨシの支配は、もはや武力や魔法ではなく、「経営」と「やりがい」という名の、逃れられない社会システムへと進化を遂げていた。
異世界転生しちゃったので、ネット配信者になってみた。
――ツヨシの「物理削除」は、ついに世界の「自由」さえも、雇用契約書一枚で削除してしまった。




