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怪異都市 AA-BO  作者: 月夜 三日
first code.
4/6

Act.3 ようこそ怪異調査事務所へ

 急に鋭い衝撃が私の肌を突いた。ただ、布団で寝ていただけなのに、幸せなパフェの夢を見ていただけなのに…。

 目を覚ますとリファがエプロンを付けて怒り顔で私を叱っていた。


「起きてください!三琴ちゃん!もう朝の10時ですよ!」

「ん…もう朝?ってリファ、もっと早く起こしてよ!」

「早く起こすも何も、初めから起こそうとしましたが、あなたずっと夢の中でパフェにうなされてましたよ!」


 しまった、寝坊した。今日は例の怪異調査事務所に向かう日であった。私が予定していた時間より事務所への到着は遅れるかもしれないが、待っている人とかはいないだろうから遅くなっても大丈夫だろう。

 即刻朝食を済ませて、電脳区AA-AOγ(ガンマ) 駅へと急いで向かった。この駅に行くのは久しぶりだ。なにせ学校は徒歩片道30分ほどと電車を使わなくていいぐらいには近いためである。

 念の為、駅でお土産用に伝統的なお菓子とされている、電脳パインというお菓子を買っておくことにした。改札を抜けて駅のホームに辿り着き、ちょうど来ていた電車に乗る。

 しばらくした後に私は、電脳区AA-BOΔ(デルタ)駅で降りる。この駅を降りて、地図の場所に向かって歩いていく。この街には昔の特産品とされるものが多く売られている、電脳横丁というものがある。一応、そこも通るため、観光がてら見て周ることにした。


「いらっしゃい、嬢ちゃん。このモチョモチョ焼き食べるかい?」

「もちょもちょ焼き?なんですかそれ?」

「ここらじゃ有名な料理みたいなもんさ。昔は地域差あれど、大判焼きとか今川焼きとか色んな名前で呼ばれてたみたいでなぁ…。俺らはこれをモチョモチョ焼きと呼んでるんだ」

「そうなんですね。とりあえず一つください」

「お、毎度あり!200円になるぜ!」


 手に入れたモチョモチョ焼きを食べてみる。ちょうどお昼頃でお腹も空いていた頃だ。小腹くらいなら満たせるだろう。

 写真を撮ってモチョモチョ焼きを食べると、柔らかい生地の中にはこれでもかというぐらいあんこが入っていて、甘すぎてうっかり持っていたスマホを落としかけた。


「甘い…」


 モチョモチョ焼きは名前に反してものすごくおいしく、すぐに食べ切ってしまった。帰りもモチョモチョ焼きを買いたいと思ったので店の名前を見る。『今川堂』と書かれていた。


「…店名それなのに今川焼きって呼ばないんかい」


 電脳横丁を抜けて、通りに出る。少し離れたところにビルが見えるが、この周辺は2010か20年代に見られるようなレトロな通りである。そして、コンパクトマンションらしき建物にたどり着いた。この建物の4階に、怪異調査事務所というものがあるみたいだ。一体どんな人が運営しているのだろうか。

 4階に着くと、マンション自体の入り口には無いのに、部屋の扉には怪異調査事務所と堂々と書かれていた。一つ深呼吸を吸ってチャイムを押してみる。


____ピンポーン


 すると扉の鍵がガチャリと音を立てて、扉が開いた。この中から少しかがみ込んだお姉さんが出てきた。が、このお姉さん、何かおかしい。異様なのが身長である。この扉の高さはおおよそ2m近くはあるはずだ。でも、目の前の彼女は少しかがんで顔を出している。つまり彼女の身長は最低でも2m越えである。すると彼女は優しい声で話しかけてきた。


「お客様ですか?何かの用で?」

「えっと、この手紙を見てもらえればわかると思います…」


 手紙をお姉さんに渡した。パッと見て、しばらく読んでいると、少し険しい顔を一瞬見せたがすぐに優しい微笑みに戻った。


「わかりました。ですが、少しこれは特(・)例(・)案(・)件(・)ですので、しばらく所長が来るまで、中でお待ちください」


 言われるがままにお姉さんに案内されて、私は事務所のソファに座った。特例案件とはどういうことなのだろうか。

 事務所の中はまるで別世界だった。漫画やドラマとかでしか見たことがないような、探偵風の木造の家だった。たくさんの本とファイルが本棚にぎっしりと詰め込まれている。さらには机の上には恐らくgapple社が存在していた頃に作られた古いパソコンがあった。今では数百万円の価値があるパソコンだ。

 さらに、キャットタワーもあり、そこには黒と白の色をした猫がいた。しかし、この猫も異様な点があって、尻尾が二つに分かれている。その猫は興味ありげにこちらを見ていた。ソファに座りながらお姉さんと話した。


「はじめまして、電脳区AA-AOから来ました坂井 三琴と申します。あ、お土産どうぞ。」

「わざわざそんなところから…。はじめまして、私はここの事務所で働いている、八雲 尺(やくもせき)と言います。お土産ありがとうございます。まあ、電脳パインじゃないですか。さて、所長との連絡が取れましたが、ただいま所長は大事な会議で出かけていたところです。ですが、あと、5分か10分ぐらいで戻ってくるでしょう」

「そうなんですね。あの、ところで怪異調査事務所と聞いたんですけど、怪異とかってなんですか?」


 すると、目の前のお姉さんは驚愕の瞳を見せた。あれ、何かまずいこと言った?


「怪異を知らずにここに来たんですか?あなた、よっぽどチャレンジャーですね。ところであなた、AA-BOの住民ではないのですよね?だったら知らないのも無理はないでしょう」

「もしかして、AA-AOでは見られない存在なんですか?」

「はい、そうなんです。怪異というものはAA-BOでしか出ません。が、最近は理由こそ分かりませんが、AA-AOやAA-COなど様々な区域でも見られるようになってしまったんですよね」


 ということは私が昨日出会したあれは、AA-BOからやって来た怪異の一種なのだろう。


「怪異についての話は長くなりますので所長が来てからって感じになりますね…」


 八雲さんがそんなことを言っているうちにドアノブがガチャリと回り扉が開いた。中から出てきたのは男の黒髪のイケメンだった。服装や腕時計から高級感が溢れ出ている。そして顔が整っていて、美しいまであった。


「八尺さん、その子が例の特例案件のお客さんかい?」

「はい。って所長!真名で呼ばないでくださいよ!」


 え?真名?八尺、は、八尺様!よりもよってなんでそんな恐ろしいとされている怪異がこんなところにいるのだろうか。でも、不思議と彼女からは敵意や恨みなどは感じられない。


「ほら、所長!三琴さんも怖がっちゃってますから!」

「おや、すまないね、三琴さん。それじゃあ、少し準備するから待っててくれ」


 しばらくしたあと、所長は向かい側のソファに座り、羊皮紙の手紙を見ながら質問をした。


「この手紙は銀髪の長い髪をしていて大きな布切れ一枚を羽織った女性の人からもらったものかい?」

「はい。でも、なんでわかるんですか?」

「実は僕たちもたびたび彼女と接触していてね。僕もたまに彼女から手紙をもらうよ。でも、その手紙はどうやら十進法で書かれているらしくてね。解析にはいつも苦戦しているよ」


 どうやら、あの不審者は事務所の方々にも迷惑をかけているらしい。一体あの不審者はなんなんなのだろうか。


「彼女が、一般人に手紙をよこすなんて普通に珍しいな。やっぱり、怪異が別の街に現れる現象と関係しているのか…?」


 すると、またドアノブがガチャリと回り、中から金髪ツインテールの眼帯をつけた美少女、LIAIが入ってきた。


「おや、おかえり、LIAI。買い出しお疲れ様」

「ただいま…ってなんであんたがここにいんのよ!」


 私も驚いた。まさかこんなところで再会するなんて思ってもいなかったからだ。LIAIさんってここの事務所で働いてたんだ…。


「この子、三琴さんって言うんだ」

「…ねえ、三琴。あんたどうやってここに来たの?」

「どうやって?実はある銀髪少女から手紙をもらって、手紙に書かれてた地図をもとに歩いていたらここに着いて…」

「あのinitial X(イニシャルテン)め、面倒なことしやがって…」


 どうやらあの銀髪少女は十進法をよく使うことから、initial Xと呼ばれているようだ。


「ふふ、実はそのあだ名、僕が付けたんだよね。かっこいいでしょ」

「なんであんたが誇ってんのよ!」


 ここで八尺様が話を割って入ってきた。さすがの彼女も少し苛立ちを隠せないようだ。


「お二人とも、お客様の前です。本題に戻ってもらっても?」

「おや、すまないね。じゃあ、本題に戻そう」

「ひぃ…ごめんなさい」


 所長は悪気なく謝っていたが、LIAIの場合は本気で謝っていた。たぶん、怒らせたら相当やばいのだろう。怒らせないようにしておこ。


「恐らくだけど、彼女が君をここに呼んだのは絶対理由があると思うんだ。みんなにも聞いてほしいんだけどね、坂井 三琴さん、君を怪異調査事務所の一員として認めようと思うんだ」

「え?私を…ですか…?」


 現場にはしばらく沈黙が流れた。ただの普通の女子高校生の私がこんな事務所の一員に?


「ちょっと、所長!あんた正気!?」

「所長、いくらなんでも一般人をここになんて無理がありますよ!」

「そんなこと言ったって決定権は僕にはないよ。決定権を持ってるのは君さ」


 もし、この事務所の一員になるのなら、私を襲ったあの怪異についてだけじゃなく、あの銀髪少女について何かわかるかもしれない。すると、私の中にあるノイズ混じりの記憶が流れる。


 セピア色の光景。私は瓦礫の上に立ち、何かと遊んでいた。人間ではない何か。私はそれと仲がとても良かった。でも、ある日それは崩れた。私はその記憶を封じ込めることにした。


 その記憶が流れた時、私はある決意ができた。あまりに突然かもしれない、認められないかもしれない。思えば私には空白の記憶があった気がした。そして気がつけば言葉を発していた。


「なります。この怪異調査事務所の一員に」


 所長はにっこりと笑って、優しく言ってくれた。


「君ならそう言ってくれると信じていたよ」

ついに主人公が怪異調査事務所への介入を決意します。これからの展開が気になる方は感想等記入してもらえると励みになりますので、よろしくお願いします

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