Act.2 無名さんからの招待状
彼女が持っていた銃からは煙があがっている。銃を下ろした後も煙が出ていた。おそらく、相当な火力で撃ったのだろう。とりあえず、この人はさっき英語も話していたし、美少女だしでおそらく外国人だろう。
「し、シーユー…」
私は気まずくなって踵を返して去ろうとした。が、肩を掴まれた。見た目に反してすごく力が強く、動くことができなかった。
「待って、お礼は?」
「に、日本語喋ったぁ!あなた外国人じゃなかったの!?と、とりあえず助けていただきありがとうございます」
彼女は明らかに呆れた顔で答えた。
「外国人って…まああながち間違いじゃないけど。私の名前はLIAI。ただの女の子よ」
「いやいや、ただの女の子が銃持ってるわけないでしょ」
「チッ…」
いや、舌打ちした?今絶対舌打ちしたよね?たぶん反応的にバレてはいけなかったのだろう。それに彼女はあの存在について知ってそうだった。
「まあとりあえず、私の名前は三琴。ところでLIAIちゃん、もしかしてさっき私が襲われたあの化け物について知ってるの?」
「子供扱いしないで。こう見えても成人してるんだから。それに、あの化け物は君には関係ない」
こんなにも可愛らしい外見をしているのに対して、性格は冷たいし成人なことに驚いた。それに、彼女は私にあまりあの化け物については関わってほしくは無いようだ。
「とりあえず、事は片付いたから早く帰った方が見のためだよ。次は無いから」
乱雑に言い放って、彼女は後ろを向いた。
「ねえ、なんでさっき私を止めたの?」
「私は感謝の言葉を言わない人が嫌いなだけ」
LIAIという少女はそのまま歩いていってしまった。変な人だとも思いつつ、私も家に向かって歩いていくのであった。早く限定特濃ストロベリーパフェを食べなければ。
もう暗い夜道、路地裏を抜けて閑静なタワーマンション付近の道を歩く。ここら辺は車通りも多いから、化け物とかは現れないだろう。まさか、自分が信じていなかったあんな存在が現れるなんて。明日、ギルにでも話しておくとするか。
そんな感じのことを考えて歩いていると、マンションの入口の前に、白く長い髪をしていて、儚げで美しい少女がいた。その服装は異端で、この時代には中世とかで見るような、そぐわない大きな布切れのようなすごく軽そうな服を着ている。
絶対ロクなことにならないと思い、一旦家の周りを一周した。一周すると消えていたので、鍵を使ってドアを開けてエレベーターへ向かう。しかしその時、後ろから声がした。
「ねえ、さっき避けたでしょ。僕、地味に傷ついたんだけど」
後ろへ振り返ると、先程の銀髪の長い髪をした少女がいた。やばい、捕まった。私は戦闘体制をとったが、目の前の少女は一切攻撃しようとはしてこなかった。
「まあまあ、そう焦らないでほしい。僕は君が路地裏で出くわした怪物とは違うから。ただ、ちょっとある紙を私に来ただけだよ」
「ある紙?」
彼女は私に古臭い封筒を渡してきた。しかも、封筒の口に貼られていたのは、今では製造終了している超レア物の、シーリングスタンプというものであった。
「こっ、これ、シーリングスタンプっ!」
「あ、それシーリングスタンプって言うんだ。大事な手紙とか渡すのにいつも使うんだけど、それってそんな貴重なものだったんだ」
おそらく彼女、常識がかなり欠けている。私がドアを開けるところを見計らって声をかけるというストーカー顔負けの高等テクニックをやってきたし、何よりシーリングスタンプの貴重さを理解していない。
「なんで知らなかったの?」
「百均かどこかに行けば買えると思っていたからね。最近売ってないなーと思ったらそういうことだったのか」
「ところで、あなたは何が目的なの?」
私はここで本題を切り出した。おそらく、この人もあの化け物について絶対何か知っている。であれば、知る価値が私にはある。
「それは、今は言えないかな。でも、それに関連することならその手紙に書いてあるよ。家でぜひ読んでみてね。それじゃあ次の用があるから僕はここで、またね、229 157 130 228 186 149 32 228 184 137 231 144 180」
「待って、まだ名前聞いてないし、何その数字!」
止めようとしたが気がついたら彼女はもういなかった。一体最後に彼女が言い放った数字は何だったんだろうか。たぶん数字を3つか2つ区切りで言っていたから、なんちゃら進法というものなのだろう。
自宅のドアを開ける。いつもの暖かい光が私を包む。実家のような安心感とはまさにこの事だろう。初めてこんな安心感を感じた。今日は非日常な出来事がばっかりだったためか、ひどく疲れが出た。
「ただいまー」
「あら、おかえり。遅かったじゃないの。誰かと遊んできたの?」
「少し道端でパフェを食べてきちゃって」
「まあ。私も食べたかったわぁ」
普通に言えるわけがない。今日の帰り道に謎の化け物に襲われたが、助けられてそのまま家に帰ろうとしたら謎の不審者に手紙を渡されたことなど。言ったとしても、逆に私が不審者として扱われてしまうだろう。
お母さんの作った肉じゃがを食べて、お風呂も速攻で終わらせて、部屋着に着替えて、速攻で自室に駆け込んだ。部屋のドアを開けると、海のような水色の髪をした女の子が掃除をしていた。
「おかえりなさい!今日はいつもの約1時間30分45秒遅い帰りだね。誰かとデートでもしていたのですか?」
「デートなんてそんな。ちょっと寄り道してただけだよ」
「パフェの日に珍しい、いやー、早くパフェを食べてとろける三琴ちゃんの顔見たかったんだけどなー」
「リファ、からかわないでって何度言ったらわかるの?」
「今回で記念すべき100回目ですね。私は嬉しいです。それに私は基本家事をやっている時以外は暇ですけど、AIにも疲労はあるんですからね!」
「嬉しがるな!」
彼女は私、いや、この家族のアシスタントAIのリファ。水色の髪をした女の子だ。ただ、からかうことといたずらをすることが好きなだけのAIである。だが、誰かが操作してるのかを疑うぐらいには人間味が強い。AIは2025年か6年ぐらいに流行りだしたみたいで、それ以来ずっと経済競走の中心を担っていた。
まあ今はそんなことどうでもいい。私はパフェを頬張りながら、封を開ける。リファがシーリングスタンプについて驚き、シーリングスタンプの歴史について話してくれたが、とりあえず無視で手紙を読む。なんと手紙には羊皮紙が使われていた。なんであの人はあの服装とかしているのに、ここまで高級品と貴重品を持っているのだろうか。
そして手紙を見ると、表面にはまたしても謎の数字の羅列、裏面には地図が描かれていた。
「ねえ、リファ。これ読める?」
「この数字の羅列ですか?お任せ下さい!えーっと、これはどうやら十進法で書かれたメッセージのようです!ローマ字で書かれているため、日本語訳でお伝えしますね!」
「うん、ありがとう」
「それでは、読み上げます!」
『その日 僕と君は 出会うだろう。 それこそが 全ての始まりであり 全ての終点である。 向かう先は 終焉であり、 始祖である。 問題文の 頭 を 見逃さないように』
「何この痛々しいポエムは」
私が中学二年生の頃なら書いていたであろう内容があった。とりあえず、あの頭がおかしい不審者には後で問い詰めてやろう。意味が全くわからないので、裏面もリファに解読させた。
「おや、こちらは今私たちがいる電脳区域 AA-AOの隣区域である、電脳区域 AA-BOの地図ですね。こちらの地図が指し示す場所は…この辺ですかね。三琴ちゃんのスマホに送信しましたので確認してください。ですが、どんな場所かの詳細はわかりませんでしたので、行くのなら止めはしませんが注意してください」
「もしかして何も分からない?」
「はい。詳細が不明ですが、建物の名前なら分かります。『怪異調査事務所』という建物みたいですね」
「わかった、ありがとうリファ。そこに行ってみることにするよ」
「お役に立てたようで何よりです!今のありがとう、私の脳内メモリーに最高音質と最高画質で保存しておきますね♪」
リファの口からとんでもないことが聞こえた気がしたが、幻聴だと思って聴き逃しておくことにする。怪異調査事務所、明日私はそこに行くと覚悟を決めた。今日のあの異変や銀髪の少女の謎を解明するために。
次回から本格的に物語が動き出すのかも




