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嘘告から始まるホンモノ ~罰ゲームで告白してきた一軍ギャルと文化祭までの偽恋人になったら、どうやらお互い本気になってしまったらしい~  作者: GARUD


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第6話 おにぃに彼女?


 家に着いてリビングへ入ると、佳奈がソファの真ん中を占領していた


 制服のまま寝転がって、テレビを見ながらスマホをいじっている


「ただいま」


「おかえりー」


「そこどいて」


「やだ」


「座れねえだろ」


「向こう空いてるじゃん」


「なんで俺が自分の家で端に追いやられるんだよ」


「早い者勝ち」


「うるさいな」


 鞄を床へ置き、結局ソファの端に座る


「おにぃ今日バイトないんだ」


「ないよ」


「じゃ暇?」


「帰ってきたばっかで暇判定すんなって」


「だって暇じゃん」


「お前は受験勉強しろよ」


「今それ言う?」


「中三だろ」


「まだ九月だし」


「もう九月だろ」


「お母さーん、おにぃがうざい」


 台所から「佳奈、勉強しなさい」と即座に返ってきた


「ほら」


「おにぃ嫌い」


「俺なんもしてねえだろ」


 佳奈がクッションを蹴って寄越す


 受け取ったところで、ポケットのスマホが震えた


 取り出す


 更科だ


『明日、数学のノート忘れないでよー』


 さっき電車で話していたやつか


『忘れねえよ』


 送る


 すぐに返ってくる


『ほんとに?』


『なんでそんな信用ないんだよ』


『なんとなく笑』


「……なんとなくってなんだよ」


「何?」


「いや、別に」


 佳奈へ返しながら、


『しつこいぞ』


 と送る


『はーい笑』


 頬を膨らませたウサギのスタンプまで付いてきた


 またこいつか


 画面を閉じようとしたところで、


「おにぃ」


「ん?」


「さっきから何ニヤついてんの?」


「は?」


「スマホ」


「ニヤついてねえよ」


「いや、ちょっと笑ってた」


「笑ってねえって」


「笑ってたって」


「しつこいな」


 スマホをポケットへ戻す


 佳奈はまだこっちを見ている


「誰?」


「クラスのやつ」


「へー」


「なんだよ」


「別に」


「その言い方で別には無理あるだろ」


「女?」


「……」


「あ」


「その『あ』やめろ」


「女なんだ?」


「クラスメイトって言っただろ」


「男か女か聞いてんの」


「なんでお前に報告しなきゃなんねえんだよ」


「おにぃが隠すから気になるんじゃん」


「隠してねえって」


「じゃ女?」


「……女」


「ほら!」


「何が『ほら』だよ」


 勝ち誇る意味が分からない


 佳奈は一度テレビへ目を戻した


 終わったかと思ったら、


「彼女?」


「なんでそうなる」


「え、違うの?」


「飛びすぎだろ」


「だっておにぃ、女の子とそんなメッセージしないじゃん」


「する時はするわ」


「誰と?」


「……」


「ほらいない」


「うるさいな」


「あ」


「だからその顔やめろって」


「マジ?」


「何が」


「彼女できた?」


 佳奈が体ごとこっちを向く


 ここで変に隠しても、たぶん面倒になるだけだ


 学校ではもうクラス中に知られているし、家族にだけ秘密にするような話でもない


「……まあ」


「え」


「できたよ」


「マジで!?」


「声デカいって」


「いつ!?」


「最近」


「最近っていつ?」


「今週」


「今週!?」


「いちいち復唱すんなよ」


「だって聞いてないし!」


「言ってねえからな」


「なんで言わないの!」


「彼女できましたって妹に報告すんのも変だろ」


「変じゃないし!」


「いや、変だろ」


「お母さーん!」


「呼ぶなって!」


 遅かった


「何ー?」


 台所から母さんが顔だけ出す


「おにぃ彼女できたって!」


「佳奈!」


「あら」


 母さんがこっちを見る


「そうなの?」


「……まあ」


「へえ、よかったじゃない」


 それだけ言って、また台所へ戻った


「え、それだけ?」


「何を期待してんだよ」


「もっと驚くと思った」


「高校生なんだから彼女くらいできるでしょー」


 台所から声が飛んでくる


「だっておにぃだよ?」


「お前ちょいちょい俺に失礼だよな」


「そういう意味じゃないって!」


「じゃどういう意味だよ」


「なんか……急じゃん!」


「それは俺もそう思う」


「え?」


「いや、こっちの話」


 危ない


 そこを掘られると面倒だ


「同じ学校?」


「うん」


「同じ学年?」


「同じクラス」


「近っ」


「学校の話だからな」


「どんな子?」


「出たよ」


「いいじゃん、教えてよ」


「なんでそんな食いつくんだよ」


「気になるでしょ普通」


「俺はお前に彼氏できてもそこまで聞かねえぞ」


「まだいないし」


「知ってる」


「なんで知ってんの!?」


「いたらお前の方から言いそうだから」


「……確かに」


「納得すんなよ」


 佳奈が一人で笑っている


「で、どんな子?」


「戻るのかよ」


「早く」


「明るい」


「うん」


「よく喋る」


「うん」


「……以上」


「少なっ」


「付き合ってまだ何日だと思ってんだよ」


「可愛い?」


「そこ聞く?」


「聞くでしょ」


「まあ……」


 更科の顔を思い浮かべる


 学校でも目立つし、告白されることが多いって話も昨日聞いている


「可愛い方なんじゃねえの」


「おー」


「何だよ」


「おにぃが女子のこと可愛いって言った」


「聞いたのお前だろ」


「なんか新鮮」


「うるさいな」


「写真ないの?」


「ない」


「えー!」


「付き合って数日でなんで写真撮ってんだよ」


「連絡先は?」


「それはある」


「それはそうか」


「交換したの昨日だけど」


「遅くない?」


「……」


「え、付き合ってから交換したの?」


「悪いかよ」


「初心者すぎる」


「お前に言われたくねえよ」


「私はまだ彼氏いないもーん」


「だから偉そうに言うなって」


 佳奈がまた笑う


 完全に遊ばれている


「そのうち連れてきてよ」


「なんで」


「見たいな?」


「見せ物じゃねえぞ」


「ちょっとくらいいいじゃん」


「機会あったらな」


「絶対ね!」


「勝手に決めんなって」


 スマホがもう一度震えた


 佳奈が即座に俺のポケットを見る


「彼女?」


「見るなよ」


「当たり?」


「しつこいぞ」


「絶対そうじゃん」


「うるさいな。もう部屋行くわ」


「あ、逃げた!」


「逃げてねえよ」


 鞄を持って立ち上がる


「おにぃー」


「今度は何だよ」


「彼女できてよかったね!」


「……なんだよ急に」


「べっつに〜」


「その顔やめろ」


「あははっ」


 笑う佳奈を置いて二階へ上がる


 部屋へ入ってからスマホを見ると、更科からだった


『しつこいぞって彼女に言う?普通』


「……彼女って自分で言うのかよ」


『更科になら言う』


 送信


 少しして、


『ひど笑』


 だけ返ってきた


 別に大した会話じゃない


 数学のノートを忘れるなとか、しつこいとか


 その程度


 それでも佳奈が気づくくらいには、ここ数日スマホを触る回数が増えていたらしい


「……そんな見てたか?」


 自分じゃよく分からない


 まあ、メッセージする相手が一人増えたんだから、その分増えるのは当然だろ


 そういうことにして、スマホを机へ置いた


 ◇


「おねぇちゃん、それさっきも見てなかった?」


「……何が?」


 風呂上がりの六花は、リビングのソファでスマホを持ったまま顔を上げた


 向かいでは牡丹がアイスを食べている


「スマホ」


「見てないけど」


「見てたじゃん」


「普通に触ってただけ」


「さっきから何回も同じとこ開いてるし」


「牡丹、人のスマホ見すぎじゃない?」


「画面は見てないよ」


「じゃあほっといて」


「誰かから来るの待ってんの?」


「待ってないし」


 即答したら、牡丹が「あー」と変な声を出した


「何」


「なんでもない」


「絶対なんかあるじゃん」


「おねぇちゃん分かりやすいなーって」


「は?」


「愛海ちゃん?」


「違う」


「由香ちゃん?」


「違うって」


「凛ちゃん?」


「違う」


「じゃ男?」


「なんでそうなんの!」


「三人とも違うなら」


「他にも友達いるから!」


「へえー」


「何その顔」


「別にぃ」


「うざ」


 牡丹がアイスを一口食べる


 六花もテレビへ視線を戻した


 番組の内容はほとんど入ってこない


 手元のスマホを一度伏せる


 三十秒くらいして、また取った


「ほら」


「……何」


「また見た」


「通知来てるか確認しただけ!」


「来てた?」


「来てない……」


「じゃ待ってんじゃん」


「待ってないって!」


 自分でもちょっと苦しい


 牡丹が笑っている


「男なんだ?」


「……まあ、男だけど」


「クラスの人?」


「うん」


「へー」


「だから何」


「別に?」


「その『別に』絶対別にじゃないし」


 六花はスマホをクッションの横へ突っ込んだ


 これなら見られない


 牡丹が少し黙る


 テレビから笑い声が流れたあと、


「おねぇちゃん」


「何?」


「カレシできた?」


「……」


 六花の手が止まった


「なんで」


「え、違う?」


「いや……」


 学校では隠していない


 今日だって一緒に帰った


 牡丹にだけ隠す意味もない


「……まあ、一応」


「えっ、マジ!?」


「声大きいって!」


「いつ!?」


「最近」


「おねぇちゃんにカレシ!?」


「何その言い方!」


「だって今まで全部断ってたじゃん」


「ぜ、全部ってほどじゃないし!?」


「はいはい。でもいたことないでしょ?」


「……ないけど」


「じゃ初カレじゃん!」


「そうだけど、静かにしてよ!」


 牡丹がソファの上で一気に近づいてくる


「誰? どんな人?」


「近い近い!」


「同じクラス?」


「そう」


「さっきのメッセージの人?」


「……そう」


「やっぱり!」


「何がやっぱりなの」


「おねぇちゃん、明らかにいつもと違ったし」


「そんなことないから」


「あるって」


「ない」


「ある」


「しつこ!」


 二人で睨み合って、牡丹の方が先に笑った


「で、どんな人?」


「普通」


「それ一番分かんないやつ」


「じゃあ……学校だと結構静か」


「暗い人?」


「いや、そういうんじゃなくて」


 今日の帰りを思い出す


 最初こそ気まずかった


 でも漫画の話が始まったら普通に続いたし、数学の話でも変に気を遣わなかった


「喋ったら普通に喋る」


「ふーん」


「あと背ぇ高い」


「カッコいい?」


「……まあ、別に悪くはないんじゃない?」


「何その言い方」


「いいじゃん!」


「照れてんの?」


「照れてない!」


「はいはい」


「その返事ムカつく!」


 六花がクッションを投げる


 牡丹は笑いながら受け取った


「今度見たい」


「やだ」


「なんでー」


「恥ずいじゃん」


「カレシでしょ?」


「……」


 カレシ


 さっき自分でも「一応」と答えた


 斎藤陽斗は今、六花の彼氏


 学校でもそういう扱いだし、今日も二人で帰った


 何も間違っていない


 なのに、家で牡丹にそう呼ばれると少しだけ変な感じがした


「おねぇちゃん?」


「……何でもない」


「見せてよー」


「嫌だって」


「ケチ」


「うっさい」


 クッションを取り返す


 文化祭まで


 最初からそういう約束


 彼氏と呼ぶのも、その間だけ


 ただそれだけなのに――


 ブッ


 クッションの横でスマホが震えた


 六花の手が反射的に伸びる


「速っ」


「うるさい!」


 開く


『更科に なら言う』


 さっきの『彼女にしつこいぞって言う?』への返信


「……何それ」


 ちょっとムカつく


 でも、六花はそのまま、


『ひど笑』


 と返した


「おねぇちゃん」


「何!」


「それ、カレシ?」


「……そうだけど」


 また口にした


 今度もやっぱり少しだけ変だった


「ふーん」


「何」


「別にー」


「ほんとムカつく」


 牡丹は楽しそうにアイスへ戻る


 六花もスマホを伏せた


 十秒もしないうちに、また画面を確認した



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