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嘘告から始まるホンモノ ~罰ゲームで告白してきた一軍ギャルと文化祭までの偽恋人になったら、どうやらお互い本気になってしまったらしい~  作者: GARUD


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4/10

第4話 彼氏って何すればいいんだ?


 四限終了のチャイムが鳴った瞬間、横から机を引きずる音がした


「よし」


「何がよしなんだよ」


 猛が勝手に俺の前へ椅子を持ってくる


「朝の続きだ」


「まだあんの?」


「あるに決まってんだろ!」


「もうクラス中に聞かれただろ」


「俺が聞きたいのはそこじゃない」


「じゃあどこだよ」


「昨日の告白!」


「言わねえよ」


「なんで!?」


「本人同じ教室にいるだろ」


「じゃあ小声で」


「そういう問題じゃねえって」


「親友だろ!」


「告白の内容まで共有する友情いらねえよ」


「くっ……」


 何で本気で悔しそうなんだ


 猛がまだ何か言おうとしたところで、机の横からスマホが差し出された


「斎藤」


「お」


 更科だった


「今いい?」


「いいけど」


「連絡先」


「ああ、それな」


 朝の騒ぎで散々言われたやつだ


 更科もスマホを軽く振る


「忘れる前に交換しとこ」


「さすがに今日は忘れねえよ」


「斎藤、昨日忘れたじゃん」


「お互いだろ」


「私は告白でいっぱいいっぱいだったから」


 言ってから、更科が止まった


 後ろで弁当を広げていた折笠が吹き出す


「また自分で言ってるし」


「愛海は黙ってて!」


「はいはい」


「六花ちゃん今日ずっとそれ言われそうだねぇ」


「由香まで乗らないで!」


 榊原は箸を持ったまま、


「自分で言わなきゃいいのに」


「それはそうなんだけど!」


 朝からずっとこんな調子らしい


 猛が俺の前から身を乗り出した


「で、どうやって交換すんの?」


「なんでお前が参加すんだよ」


「見届ける」


「いらねえよ」


「いいじゃん別に」


「しつこいぞ」


 押し返して、更科のスマホを見る


「コード出す?」


「私出す」


「じゃ読み取るわ」


 更科がメッセージアプリを開いて画面を操作する


「これ」


「おう」


 表示されたコードを読み取る


 すぐ画面に名前が出た


『更科六花』


 当たり前だけど、こうしてスマホの中に名前が入るとちょっと妙だ


 昨日まで連絡先どころかまともに話したこともなかった相手なのに


「追加できた?」


「できた」


「見せて」


「信用ないな」


「一応」


「ほら」


 画面を向ける


「ほんとだ」


「疑ってたのかよ」


「違うって。確認」


「同じだろ」


「細かいなぁ」


 更科も俺を追加する


「斎藤陽斗……はい、できた」


「じゃ終わりだな」


「待って」


「まだ何かあんの?」


「なんか送らなくていいの?」


「今?」


「普通、一回送るっしょ」


「何送るんだよ」


「え……」


 更科が止まる


「ほら」


「いや、なんかあるじゃん!」


「例えば?」


「よろしく、とか」


「目の前で?」


「……確かにちょっと変か」


「だろ?」


「じゃあ後ででいいや」


「それでいいんじゃね」


「うん」


 意外とあっさり終わった


「待て待て待て!」


 猛が割り込んでくる


「今ので終わり!?」


「何が」


「初めて彼女の連絡先入ったんだぞ!?」


「入ったな」


「もっとこう、ないのかよ!」


「何があんだよ」


「感動とか!」


「連絡先で?」


「陽斗ぉ……」


「そんな悲しそうな目で見るなって」


「お前、彼女できた自覚あんの?」


「あるよ」


「ほんとか?」


「朝からあんだけ騒がれたら嫌でもあるわ」


「そういうことじゃねえ!」


「うるさいな」


 更科が横で笑っている


「加藤、めっちゃ熱いね」


「こいつが薄すぎるんだよ!」


「俺をカルピスみたいに言うな」


「その返しはするんだ」


「いや、今のは言うだろ」


 更科がまた笑った


 そこへ折笠が遠くから声を飛ばす


「六花ー、交換終わったなら飯食おー」


「あ、うん」


 更科がスマホをポケットへしまう


「じゃ、また後で」


「おう」


 二歩進んでから振り返る


「あ」


「何?」


「メッセージ、ちゃんと返してよ?」


「来たら返すって」


「遅かったら?」


「その時はその時だろ」


「雑!」


「まだ何も送ってねえじゃん」


「まあそうだけど」


「ほら、飯行けって」


「はいはい」


 更科が戻っていく


 その背中を見ていたら、


「陽斗」


「何だよ」


「今の」


「何」


「ちょっと彼氏っぽかったぞ」


「どこが?」


「『来たら返す』」


「普通だろ」


「それだよ!」


「分かんねえって」


 猛は何を言っても満足しない


「で、お前飯どうすんの」


「あっ」


「持ってないの?」


「購買!」


「もう結構経ってるぞ」


「うわっ!」


 猛が立ち上がる


「陽斗、席取っとけ!」


「知らねえよ」


「親友だろ!」


「またそれかよ!」


 猛は返事も聞かず教室を飛び出した


 ほんと忙しいやつだ


 午後の授業は特に何もなかった


 休み時間に何度か更科と目が合ったくらい


 一度だけ、スマホを取り出した更科がこっちを見たので、


「何?」


 と口だけ動かしたら、


「別に」


 と返された


 いや、絶対何かあっただろ


 でも向こうが言わないなら、まあいいか


 放課後になると、更科はいつもの三人と一緒に帰っていった


「また明日ー」


「おう」


 それだけ


 俺も猛と駅まで歩いて、途中で別れた


 付き合って二日目


 連絡先は交換した


 でも、そこから何をするのかは相変わらず分からない


 家に帰ってからも、何度かスマホを見た


 通知は来ていない


「……」


 別に待ってるわけじゃない


 ただ、昼に更科が「メッセージちゃんと返してよ」と言っていたから、来るのかと思っただけだ


 机にスマホを置き、文庫本を開く


 数ページ読む


 またスマホを見る


「来ねえな」


 口に出してから、自分でちょっと引っかかった


 来ないなら来ないで、別に困らない


 そもそも俺から送ってもいいわけだし


「……あ」


 そこでようやく気づく


 付き合ってるんだから、何でも向こう任せにする必要はない


 昨日、罰ゲームだと分かった上で付き合うことにした


 文化祭までの恋人


 やるなら、それっぽいことくらいはしてみたい


 連絡先を交換しただけで終わったら、さすがに何のために付き合ったのか分からない


 ゲームならイベント待ちしてれば勝手に何か起きるけど、現実はそうもいかないらしい


「いや、何送んだよ」


 そこが分からない


 スマホを取って、更科との画面を開く


 まだ何もない


 真っ白


『今何してる?』


 打つ


 止まる


 これ送って、もし「風呂」とか返ってきたらどうすればいいんだ


 消す


『今日は疲れた』


 知らんがな、で終わる


 消す


『明日何時に来る?』


 同じクラスなんだから聞く意味がない


「……むず」


 恋人って毎日こんなの考えてんのか?


 いや、たぶん考えてないんだろうな


 普通はもっと自然に送るんだろう


 考えれば考えるほど分からなくなる


 結局、変に話題を作るのはやめた


『今日はありがとう。明日もよろしく』


 これならおかしくないだろ


 送信


「あ」


 送ったあとで少し恥ずかしくなった


 何の「ありがとう」だよ


 連絡先交換?


 朝から学校で付き合ってるって認めてくれたこと?


 自分でもよく分からない


 でももう送った


「まあいいか……」


 スマホを机へ置く


 十秒もしないうちに震えた


「早っ」


 見る


『うん! こちらこそ!』


 続けて、


『明日もよろしくー』


 その下に、ウサギが手を振っているスタンプ


「……普通だな」


 もっと何かあるのかと思ったけど、向こうも似たようなものらしい


『おう。また明日』


 送る


 すぐ既読がついた


 今度は返信なし


 そこで終わり


「こんなもんか」


 昨日まで更科と学校の外で話すことなんてなかった


 今日はスマホの中に名前が増えて、数行だけ会話が増えた


 恋人らしいかと言われると、まだ全然分からない


 ただ、何もしないよりは一歩進んだ気がする


 次は何だ


 昼に猛が騒いでいたことを思い出す


 一緒に帰る


 休みの日に出かける


 手を繋ぐ


「最後はまだ無理だろ」


 自分で言って、ちょっと笑う


 一緒に帰るくらいならできそうだ


 学校から駅まで歩くだけ


 それならそんな難しくもない


「明日、誘ってみるか」


 スマホを伏せる


 彼氏が何をすればいいのかは、まだ全然分からない


 分からないなら、とりあえず簡単なところからでいい


 ◇


 同じ頃


 六花は自分のベッドにうつ伏せになったまま、スマホを睨んでいた


 陽斗とのメッセージ画面


 まだ何もない


「……いや、普通に送ればいいじゃん」


 自分に言い聞かせて入力欄を押す


『今何してる?』


 打つ


「重くない?」


 消す


『今日はありがと!』


「何が?」


 消す


『ちゃんと連絡先交換できてよかった笑』


「いや意味わかんないし」


 また消す


 スマホを枕へ放り投げる


「めんどくさ……」


 恋人ならメッセージくらいする


 愛海もそう言っていた


 六花自身も、そういうものだと思っていた


 でもいざ自分から送ろうとすると、何を書けばいいのか全然分からない


 罰ゲームなんだから、もっと軽くやればいい


 そう思うのに


 変な文章を送って、斎藤に「何こいつ」と思われるのはなんか嫌だった


「……もう『おつかれ』でよくない?」


 スマホを拾う


 入力欄を開いた、その時


 画面上に通知が出た


『斎藤陽斗』


「え」


 反射的に開く


『今日はありがとう。明日もよろしく』


「……」


 一度読む


 もう一度読む


「普通」


 すごく普通


 なのに、さっきまで一人で文章を消したり書いたりしていたのが急にアホらしくなった


「……なんかちゃんとしてんな、こいつ」


 少しだけ笑って、


『うん! こちらこそ!』


『明日もよろしくー』


 送る


 ついでにウサギのスタンプも一つ


 すぐ返信が来た


『おう。また明日』


「……また明日、ね」


 六花は画面を見たまま、少しだけ口元を緩めた


 それからすぐ、


「いや、普通だから」


 誰に言うでもなく呟いて、スマホを枕元へ置いた


 十秒ほどして、また手に取った

カクヨムで先行連載しております

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