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嘘告から始まるホンモノ ~罰ゲームで告白してきた一軍ギャルと文化祭までの偽恋人になったら、どうやらお互い本気になってしまったらしい~  作者: GARUD


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第3話 一軍ギャルの彼氏になった


 翌朝、教室へ入った瞬間、後ろの方から折笠の声が聞こえた


「で? どうだった?」


「愛海、朝イチでそれ聞く?」


「だって気になるじゃん。昨日あれから何も来ないし」


「寝る前に聞こうとしてたの愛海だけでしょぉ」


「由香も気になってたくせに」


「私は今日聞けばいいかなってぇ」


「同じじゃん」


 鞄を机へ置きながら、なんとなくそっちを見る


 更科は自分の席に座っていた


 俺に気づいたのか、一瞬だけ目が合う


 すぐ折笠に肩を揺すられた


「ほら、早く!」


「分かったって!」


 声を落としたつもりなんだろうけど、この距離なら普通に聞こえる


 俺は知らないふりで文庫本を出した


「……オッケーされた」


「マジで!?」


「声!」


「いや、だってマジで!?」


「二回言わなくていいから!」


「あははっ、ほんとに付き合うんだぁ」


 白鳥の声が重なる


「そういうことになった」


「え、待って。斎藤なんて?」


「それは別にいいでしょ」


「なんでよ!」


「いいじゃん、そこは」


「告白した側が秘密にすんの?」


「愛海うるさい!」


 くすくす笑う白鳥の横で、榊原だけは騒いでいなかった


 何気なく顔を上げた時、榊原と目が合う


 ほんの一秒くらい


 向こうは何も言わず、そのまま視線を戻した


 何なんだ


「でも六花、よかったねぇ」


「何が?」


「断られなくて」


「……まあ、それはね」


「あれで断られてたら地獄だったな」


「愛海、ほんとそういうこと言うのやめて」


「いやでも――」


「その先は今言わないで」


 更科の声が急に小さくなる


 折笠も「あ」と口を閉じた


 さすがに罰ゲームの話まで教室でベラベラ喋るほどバカではないらしい


 俺は本へ目を戻した


 昨日までは、あの四人の会話を外から聞いていただけ


 今日からは俺もその中に入っている


 まだちょっと変な感じがする


「斎藤」


「ん?」


 顔を上げると、更科がもう机の横まで来ていた


「おはよ」


「おう、おはよ」


「……」


「……何?」


「いや」


 更科が後ろをちらっと見る


 折笠が両手で何かを押すような動きをしていた


 もっと行け、みたいなやつ


「愛海見んなって」


「見てないし!」


「いや見てるでしょ!」


 後ろから笑い声が上がる


「何なんだよ」


「ごめん。なんか朝からあいつらうざくて」


「いつもじゃね?」


「今日は倍くらいうざい」


「それは災難だな」


「他人事じゃん」


「俺にどうしろってんだよ」


「別にどうもしなくていいけど」


 言ってから、更科が少し笑う


「……ちゃんと話しかけたからね」


「何の報告だよ」


「昨日言ったじゃん。学校でも話すって」


「覚えてるって」


「ならよろしい」


 それだけ言って、更科は自分の席へ戻っていく


 たった今のやり取りを、近くの席のやつらが妙に見ていた


 まあ、そうなるか


 昨日までほとんど話していなかった俺と更科が、朝から普通に喋っている


 俺が逆の立場でもちょっと見る


「おはよー」


「おっす」


 登校してくるやつが増え、教室が一段騒がしくなる


 その中でも特にでかい声が入口から飛んできた


「陽斗!」


「朝からうるさいな」


 猛だった


 スポーツバッグを肩から下ろしながら、真っすぐこっちへ来る


「昨日!」


「あ?」


「更科だよ!」


 来たか


「昨日の呼び出し! 結局なんだったんだよ」


「それ朝イチで聞く?」


「当たり前だろ! 昨日から気になってんだよ!」


「メッセージで聞けばよかったじゃん」


「こういうのは直接聞くもんだろ!」


「知らねえよ」


「で!」


「近い近い」


 猛の顔を手で押し返す


「なんだった!?」


「……付き合うことになった」


「…………」


 止まった


 教室の音がじゃない


 猛だけが


「猛?」


「……誰と?」


「流れで分かるだろ」


「更科?」


「そう」


「更科六花?」


「だからこのクラスに更科一人しかいねえって」


「お前――」


 嫌な予感がした


「待て、声――」


「昨日の呼び出し告白だったのかよぉぉぉ!?」


「うるせえ!」


 一発で終わった


「え?」


「今、更科って言った?」


「斎藤と?」


 近くのやつらが一斉にこっちを見る


 前の方で喋っていた男子まで振り返った


「マジ?」


「え、付き合ったの?」


「昨日?」


「待って、斎藤と更科?」


 なんで最後だけ確認が入るんだよ


「加藤! 声デカすぎ!」


 後ろから更科が飛んでくる


「いや、だって!」


「だってじゃない!」


「お前ら付き合ったってマジ!?」


「……マジだけど」


「六花、自分で言っちゃうんだ」


 折笠が笑いながらついてくる


「もう隠す意味ないでしょ!」


「それはそう」


 それを聞いた周りがまた騒ぎ出す


「え、いつから?」


「昨日」


「昨日!?」


「急じゃん!」


「てか接点あった?」


「俺もそれ聞きたい!」


「猛まで混ざんなよ」


「陽斗、俺には何も言ってなかっただろ!」


「俺も昨日まで何もなかったんだよ」


「じゃあマジで急じゃん!」


「だからそう言ってんだろ」


 横から男子がひょいと顔を出す


「斎藤、お前すげえな」


「何が」


「何がって更科だぞ?」


「本人いるからな」


「え、あ、ごめん」


「なんで謝んの?」


 更科が笑う


「いや、その……」


「何?」


「何でもないっす」


「なんで敬語?」


 また笑いが起きる


 別の女子が折笠に小声で何か聞いていた


「六花から?」


「それは本人に聞いて」


「ちょ、愛海!」


「言ってないじゃん」


「言い方でもう分かるでしょ!」


「あ」


「遅い!」


 更科が折笠の腕を叩く


「痛っ。いや六花、マジで軽くだから!」


「軽くとかじゃないし!」


「え、更科から告ったの!?」


「ほら!」


 近くにいた女子が食いついた


「え、意外!」


「その話もう終わり!」


「なんて告ったの?」


「言わない!」


「斎藤、教えて」


「なんで俺に来るんだよ」


「言われた本人じゃん」


「そうだけど言わねえよ」


「お」


「斎藤、意外とちゃんとしてる」


「何その評価」


「いい彼氏じゃん」


「やめろって」


 反射的に返したら、今度は俺が笑われた


 更科まで口元を押さえている


「お前も笑うなよ」


「だって斎藤、今ちょっと照れたっしょ」


「照れてねえよ」


「いや今のは照れた!」


 猛が即座に乗ってくる


「お前は黙ってろ」


「陽斗が女絡みで照れてる!」


「しつこいぞ」


「記念日だ!」


「何のだよ!」


 また周りが笑う


 もう収拾がつかない


 昨日、更科が「学校では隠さなくていいよね」と言った時は、まあ多少騒がれるだろうとは思っていた


 多少じゃなかったな


「みんな朝から元気だねぇ」


 白鳥まで後ろで笑っている


 榊原は自分の席に座ったまま


 その隣で折笠だけが妙に楽しそうだ


 いや、一番楽しんでるのお前だろ


「てかさ」


 近くにいた女子がふと思い出したように言う


「昨日付き合ったなら、昨日の夜とかずっとメッセージしてた?」


「……」


 更科が止まる


「……」


 俺も止まる


「え?」


 女子が俺たちを交互に見る


「何その間」


「いや」


 更科が俺を見る


 俺も見る


「……斎藤」


「うん」


「そういや」


「言うな」


「でも」


「分かってる」


「え、何?」


 猛まで首を突っ込んでくる


「お前ら昨日なんもしてないの?」


「別にそういう話じゃねえよ」


「じゃ何だよ」


 更科が少し気まずそうにスマホを持ち上げた


「……連絡先、交換してない」


「は?」


 猛


「え?」


 女子


「マジ?」


 折笠


 三方向からほぼ同時に来た


「付き合ってんのに!?」


「うるさいな!」


「いやそこは交換するでしょ!」


「昨日そこまで頭回らなかったんだよ」


「六花も!?」


「私だって告白でいっぱいいっぱいだったの!」


 言ってから、更科が固まる


「あ」


「六花ちゃん」


 白鳥が笑いをこらえている


「今の自分で言っちゃったねぇ」


「……忘れて」


「それは無理でしょ」


 折笠が即答する


「ほんっと最悪!」


「でも待って」


 猛が急に真顔になった


「陽斗」


「何だよ」


「彼女できたのに連絡先知らないって、どういう状態?」


「俺が聞きてえよ」


「電話もできない?」


「できねえな」


「メッセージも?」


「だからできねえって」


「じゃあ昨日、更科帰ったあと何してた?」


「普通に帰ったけど」


「それだけ?」


「それだけって……本読んで、飯食って、風呂入って寝た」


「彼女できた日の夜が平常運転すぎるだろ!」


「連絡先知らねえんだから、どうしろってんだよ」


「そこだよ! なんで交換してねえんだよ!」


「昨日そこまで頭回らなかったんだって」


「陽斗、お前さぁ……」


「うるさいな」


 呆れた顔を向けられても困る


 こっちだって昨日初めて彼女ができたばかりなんだから、そんなもん知らねえよ


「ていうか六花も六花じゃん」


 折笠が今度は更科を見る


「何で連絡先聞かなかったの?」


「だから余裕なかったって言ってんじゃん!」


「告白するだけで?」


「するだけって言うな!」


「昨日の六花、出てく前からめっちゃ緊張してたもんねぇ」


「由香!」


「ほんとのことだし」


 榊原の一言まで飛んでくる


「凛までそっち行く!?」


「事実でしょ」


「もうやだ……」


 更科が片手で額を押さえる


 朝から完全におもちゃにされていた


 チャイムが鳴る


 ほぼ同時に教室の前のドアが開き、担任が入ってきた


「ほら、席つけー。朝から廊下まで聞こえてるぞ」


「やべ」


「戻ろ」


 さっきまで俺の周りにいた連中が一斉に散っていく


 更科も後ろへ戻りかけて、一度だけこっちを振り返った


 スマホを軽く振る


 たぶん言いたいことは同じだ


 連絡先


 俺もポケットの上からスマホを軽く叩く


 更科が小さく頷いた


「陽斗」


「何だよ、まだあんのか」


 席へ戻りながら猛が声を落とす


「昼休み、詳しく」


「もう十分喋っただろ」


「全然足りねえ!」


「しつこいぞ」


「逃げんなよ!」


「逃げねえから前向けって」


 担任が出席簿を机へ置く


 ようやく教室が静かになった


 昨日、彼女ができた


 今朝、クラス中にバレた


 そのうえ付き合っているくせに、連絡先すら知らないことまでバレた


 机から教科書を出しながら、少しだけ後ろを見る


 更科もちょうどスマホを鞄へしまったところだった


 目が合う


 向こうが口だけ動かす


『あとで』


 たぶん、そう言った


 俺も小さく頷く


 彼氏になって二日目


 まずは連絡先交換かららしい

カクヨムで先行連載しております

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