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第62話:天才勇者の決死の居候(?)と、黄金の要塞都市における庭仕事修行

勘違い過保護ラブコメ、第62話をお届けします!

天才勇者レオポルトがパーティに加わった(?)前回のダンジョン行脚から数日。平穏を求めて自宅へ帰ってきたライルを待ち受けていたのは――なんと、自宅の庭にそびえ立つ最高級魔導テントと、そこで真剣すぎる眼差しで皿洗いや薪割りに勤しむ天才勇者の姿だった!

日常のすべてが「神域の修行」にすり替わる、黄金の要塞都市のドタバタ同居生活の幕が今、上がります――!

それでは、第62話の幕開けです!

朝の柔らかな日差しが、黄金の要塞都市(=辺境の街)を優しく包み込んでいたはずの朝。

ライル・フォン・ヴェルナーは、自宅のリビングの窓から外をぼんやりと眺め、そして――その視界に飛び込んできた「ありえない光景」に、思わず持っていたコーヒーカップを取り落としそうになった。

「……おい、嘘だろ……?」

ライルの自宅の庭。そこに広がっていたのは、緑豊かな芝生……ではなく、王都の貴族が使うような最高級の魔法耐性を持つ特製の「魔導テント」であった。さらにそのテントの前では、白銀の上質なマントを脱ぎ捨て、なぜか簡素なシャツとズボンに身を包んだ天才勇者――レオポルトが、ものすごい気合を入れて「庭の草むしり」を行っていた。

ザッ、ザッ、ザァァァッ!!

レオポルトの手の動きは、音速を超えていた。ただの雑草を抜いているだけなのに、周囲の空間がまるで真空の刃で切り裂かれるかのように綺麗に整えられていく。

「ふっ……ふっ……! なんという奥の深い作業だ……!」

レオポルトは額の汗を拭いながら、一人で熱っぽくぶつぶつと呟いていた。

(――草一本を引き抜くその指先の角度、わずかな体重移動のバランス……! すべてが無駄なく、宇宙の真理と完全に調和している……! これぞ我が師・ライル殿が私に与えてくださった、無言の精神修養――『動中の静』を極める究極の草むしり修行に違いない……ッ!!)

窓の内側からその光景を眺めていたライルは、あまりの斜め上すぎる解釈に、持っていたコーヒーを盛大に吹き出しそうになった。

「ただの庭の雑草だろおい!! なんでそんな世界救済の決戦前夜みたいな顔して草むしりしてんだよ! ていうか、いつの間に俺の家の庭にテント張って居候してやがるんだあいつは……っ!」

ライルが青ざめながらリビングのドアを開けて庭に出ようとした、その時だった。

ガシャアァァン!! と、金属の重厚な足音が響き渡り、いつもの神銀ミスリル製フルプレートアーマーを完璧に装着したシルヴィアが、ものすごいスピードで庭へと滑り込んできた。

彼女の紫紺の瞳は、庭で草むしりに勤しむ実の兄・レオポルトを鋭く射抜いている。

「お兄様……! 一体、我が君の御自宅の庭で何をしていらっしゃるのですか!」

シルヴィアの声には、あからさまな敵意とライバル心が含まれていた。

対するレオポルトは、手を止めてピシッと背筋を伸ばし、清々しい笑顔で答えた。

「おや、シルヴィアか。見てわからないか? 私は今、ライル殿の下で『直弟子』としての修行を積んでいるのだ。この庭の草むしり一つをとっても、私の知らない神域の技術が詰まっている……! ああ、なんて充実した日々だ!」

「ふん……! お兄様、いくら血の繋がった兄とはいえ、我が君の側近、ましてや一番弟子の座をこの私が簡単に譲るなどと思わないでくださいませ! ……我が君、私も今すぐお手伝いいたします!」

シルヴィアはガシリと重い鎧を鳴らし、なぜか気合を入れて隣の区画の草むしりを始めようとした。

(待て待て待て待て!!! なんだこの兄妹揃って勝手に弟子入りして勝手に庭を綺麗にし始めるシュールな地獄絵図は!! ここは俺の家だぞ! 誰も二人に庭仕事なんて頼んでねぇよ!!)

ライルが頭を抱えて絶叫しながら庭へ飛び出していくと、ちょうどその時、街のパトロール中だった王国騎士団副団長・アルベルトと、中央財務局の特命監査官・ルキウス(お馴染みの胃痛同盟の二人)が、青白い顔をしながらライルの家の前を通りかかった。

「……おい、ルキウス君。私の目が腐っていなければ……あの庭にいるのは、王国の最前線にいるはずの天才勇者レオポルトではないかね……?」

アルベルトが震える声で尋ねると、ルキウスは持っていた特製胃薬のボトルを落としそうになりながら頷いた。

「ま、間違いありません……! なぜ王国の天才勇者が、あの『裏社会の絶対君主(※一般人)』の自宅の庭で、ガチのトーンで草むしりを……!? いったいどんな恐ろしい洗脳教育が行われているんですか……!」

二人が青ざめながら門の前に立ち尽くしていると、作業をしていたレオポルトがそれに気づき、爽やかな笑顔で手を振って近づいてきた。

「おお、アルベルト殿、ルキウス殿! 君たちも我が師(ライル殿)の『無言の極意伝授』を受けに来たのかい?」

「き、極意伝授だと……?」

「そうだ! 見たまえ、この庭の美しさを! 師は何も語らずとも、ただそこに存在し、私たちに最高の修行の場を与えてくださっている……! さあ、君たちも一緒に草むしりをどうだ?」

レオポルトのあまりの眩しすぎる勘違いの熱量に、アルベルトとルキウスは圧倒され、その場で同時に胃薬を二粒ずつ口に放り込んだ。

「……ダメだ、私の知る騎士道の常識では、この状況を脳内処理しきれない……」

「帰ろう、アルベルト副団長。ここに長居したら私のエリート人生のプライドが完全に蒸発してしまう……」

二人がガタガタと震えながらそっと後ずさりして逃げ出そうとした、その時、ついに限界を迎えたライルが大きな声を張り上げた。

「おい、お前ら全員ちょっと待てぇぇぇっ!!!」

ライルは庭の真ん中に立ち、全身の力を振り絞って叫んだ。

「レオポルト! お前は今日すぐそのテントを畳んで王都に帰れ! シルヴィアもお前は自分の騎士団の仕事に戻れ! あとアルベルトたちも勝手に納得して胃薬を飲むな!! ここは俺の普通の自宅だ! 誰一人として弟子にした覚えもなければ、暗黒帝国の宮殿にした覚えもないんだよ――っ!!」

ライル絶叫のツッコミが、黄金の要塞都市の青空へパーンと高く響き渡る。

しかし、その不憫な絶叫を聞いたレオポルトとシルヴィアは、顔を見合わせると、どこか誇らしげに深く頷き合った。

「……さすがは我が師。言葉の端々にまで、私たち未熟者を戒めるための深い哲学が込められている……!」

「お兄様、その通りですわ。我が君の厳しくも温かいお言葉、しかと胸に刻みましょう!」

(――もうダメだ……この兄妹の脳内変換フィルターは、宇宙の物理法則すらねじ曲げる特級のブラックホールだ……!)

ライルがその場で力なく崩れ落ち、盛大に白目を剥く中、天才勇者の居候ライフ(?)と黄金の要塞都市の過剰防衛は、今日も今日とて盛大な斜め上の空を爆走していくのだった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

第62話、「天才勇者の決死の居候(?)と、黄金の要塞都市における庭仕事修行」いかがでしたでしょうか!

天才勇者レオポルトがライルの自宅の庭に最高級テントを張り、日常の雑務(草むしり)をすべて「神域の精神修養・極意伝授」と勘違いして居候を始めるというカオスな日常回をお届けしました! それに対抗心を燃やすシルヴィアや、通りすがりに巻き込まれて胃薬をあおるアルベルト&ルキウスの不憫さも全開でしたね。

ライルの平穏なスローライフ(?)の行方はどこへ向かうのか……!?

「草むしりを究極の修行に勘違いしてて腹筋が崩壊した」「天才勇者が加わってライルの胃痛がさらにマッハになってて最高」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や作品への評価(★)、感想などをよろしくお願いいたします! 皆様の応援が執筆の大きな力になります!

それでは、また次回の第63話でお会いしましょう!

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